番外編SS集 ルーズヴェルト家の場合
「いつも、競うように作ってたでしょ?」
「うん」
「だから、今年はみんなでつくろうかな、って思うんだけど」
と言う事で、メリッサ、エディナ、リリィ、ティナが協力してお菓子を作っているところだ。
今年は、お菓子の家を作り、家族みんなで食べよう、と言う事になったのだ。
クッキーを組み立てているのはリリィ。クッキーもみんなで焼いた。
飴で窓ガラスを作っているのはメリッサ。
チョコレートで屋根を作っているのはエディナ。
細かい装飾品を作っているのはティナ。
魔法を駆使してバランスを取り、内装まで作って……。四人は顔を見合わせ、にやりと笑った。
「「「「ユーリ! ハッピーバレンタイン!」」」」
四人が笑顔でユリエルを迎える。それを見たユリエルは、困ったような顔をして笑う。
「なんだ? 随分テンション高いな、どうしたんだ?」
「今年はね、ボクと、エディと、リリィ、とティナ、みんなで作ったんだよ!」
「喜んでくれると嬉しいわね」
「ユーリ様、早く行きましょう!」
「子供達も、待っていますよ」
ユリエルは、部屋に入るなり驚いた顔をした。大きなお菓子の家が一つ、テーブルを占領していたのだ。
子供たちは目を輝かせてそれを見ている。
「えええっ?! これ、みんなで作ったのか? 凄いな……」
大きく目を見開くユリエルに、四人は笑みを交わす。
今まで、バレンタインは競争の様になってしまっていた。誰が一番、ユリエルを喜ばせてあげられるか、と。しかし、全員がユリエルの事を大切に思っている。それは、変わらない。
だからこそ、今年はみんなで、家族全員が喜ぶようなものを作ろう、と言う事になったのだ。
ユリエルだけじゃない、子供達も、そして自分達も楽しめる、夢のような、お菓子の家を。
「で、どうやって食べるんだ?」
「適当に好きなところから、かな。魔法使ったから、多分、崩れはしない筈だよ」
「みんなも、好きに食べていいのよ」
「壁は私、屋根はエディ、窓と扉はメリー、周りの飾りはティナだよ」
「家具はみんなで作りました。ユーリさん、どうぞ召し上がれ」
子供たちははしゃぎながら屋根や壁を壊し、口に入れる。それぞれ感想を言いながら、とても楽しそうだ。
ユリエルも屋根をそっと割り、口に入れる。その後、壁のクッキーを一つ口に入れると、にこりと微笑む。
「うん、美味しいじゃないか」
四人はパッと顔を明るくさせ、ユリエルに抱きつく。
お菓子の家はすぐに無くなった。リーサとルナはエドに自分の作ったお菓子を渡していた。エリーはユリエルに渡す。
「え、いいのか?」
「私は、お父さんが好き」
「ふふ、エリーは本当に、ユーリ様が好きなんですね」
楽しげな雰囲気が流れる。みんなで紅茶を飲み、何でもない事を話す。とても、幸せそうだ。
その日の夜。寝室には、ユーリの他に、メリー、エディ、リリィ、ティナが。
「えぇっと、俺は全員を相手にするのか?」
「駄目?」
「くっ……。駄目とは言わせない雰囲気! 仕方ないなぁ」
困ったように笑いながらも、全員を平等に扱い、受け入れる。だからこそ、四人はユリエルの事が好きなのだ。
「よし、俺が持つ限り、だが、みんなで楽しむか」
ユリエルの笑みに、四人もにこりと微笑んだ。