第1章・8 ダニーとの約束
「昔のように町中のみんなが幸せに戻れたらな・・・」
「そうだな」
「全てが機械化なんて。牛が可愛そうだよな!あんな機械で乳搾られてよ。牛って言うのは人間と同じで声かけてその牛に合わせて絞ってやんないとよ!」
「そうだな」
「機械じゃなくって人間が手で作れば、あの煙だってチリだってなくなるんだぜ?そうすれば、また星だってよ!」
「見えるのか?」
「そうよ!見えるとも!」
「本当か?」
「それだけじゃないぜ?あの煙とチリさえなくなればまた野菜だって作れるんだぜ?ゲホゲホ咳だって治るんだぜ?」
「どうしてだ?」
「ダニー。よく考えてみろ?全てあの煙とチリのせいでなくなったんだろ?あの煙とチリさえなくせば」
「昔に戻れるって事か?」
「そうよ!そうすれば人も必要。仕事がなくなる心配もない訳さ。」
「そうか・・・星が見えるのか」
「いや。ダニー?星なんてどうでもイイだろ。町中のみんなが幸せに暮せるんだぜ。」
「約束したんだ。ジョージに星を見せるって」
チリリリ〜ン・・・・。何処からともなく鈴の音が響いた。ふと気がつくとマスターの姿は消えていた。
「エド。頼みがある」
グラスを両手で抱えうつむき目を閉じたダニーが語り始めた。
「何だよ?金の事は無理だぜ?それ以外の事も事に寄っては・・・」
エドの言葉を最後まで聞かずに淡々とダニーは話し始めた。
「本当はジョージに渡そうと思ったんだ」
「何を?」
「でも、会えない。」
「何で?」
「今から言う事を約束して欲しい」
「会えないって何だよ?帰れば・・・」
声に出したはずの言葉が・・・消えた!?エドは不思議な感覚に一瞬驚いたがダニーの言葉に耳を傾けた。
「1つ。ジョージに星を見せてやってくれ
2つ。一生イザベラとジョージが生活に困らないだけの金を渡してくれ。
3つ。ジョージが大人になったらリサと結婚させてやってくれ。」
声も出ないエドはただ言われるままに頷いた。
「この3つの約束だけだ。後は好きに使うがイイ。」
そう言って、グラスを握っていたはずのダニーの両手からマッチ箱が現れた。