第1章・3 イザベラへの恋心
ダニーはエドよりも1つ年上。
1つしか年が変わらないのに「お兄〜ちゃんなんだから!」という理由で
ステラおばさんにダニーは怒られいつも我慢してきた。
ケンカをしても最初に謝りりんごが1つ残ればエドに。見ていた本をエドが欲しがればエドに。全て1つ年上だというだけで我慢した。でも1つだけダニーは譲らなかった。それは彼の妻イザベラ。
エドはイザベラの事が好きだった。決して美人じゃないけれど優しくって女の子らしくって。もしイザベラと・・・と色々な事を考えて何度甘い夢を見たことか。だがイザベラ本人を目の前にすると意地悪をしてしまう。
仲直りしようと「ゴメンネ」の言葉が口から出る前にいつもダニーがやって来て、泣いてしまったイザベラをなだめた。ダニーの手が彼女の髪を撫でる。それだけでもエドの心は七転八倒していたのに
ある日ダニーは彼女の肩を抱き寄せ頬と頬を寄せた。抵抗もせずに身を預けるイザベラ。確実に2人の距離が急接近している!止めなくては!!!今すぐ止めないと!!エドの存在を無視して抱き合う2人の間を強引に押し引き離した。
判りきっていた事だった。
「ダニーの事が好き・・・」
「僕もだよイザベラ」
プライドを捨て意を決して玉砕したうえに強制的に2人の愛の言葉を聞き届ける牧師役にされたエド。憎まれ口を叩かずにはいられなかった。が!何も思い浮かばない!ダニーがこっちを見た!何か言わなければ!と思わず口から出た言葉は、物マネしまくったステラおばさんの
「ダニーはお兄〜ちゃんでしょ!!」
こんな時に限って「に」の伸び具合など最高に似ていた。きっとこの状況じゃなかったら2人も
笑ってくれたであろう。茶化しになってしまったエドに威風堂々とダニーは答えた。
「エド?イザベラは譲らないよ。心から愛しているんだ」
もし俺が女だったら間違いなくダニーの胸に飛び込んだであろう。恋の勝ち負けはもう問題じゃない。とにかく幼稚な自分が恥ずかしい・・・早く立ち去りたい。でもこのまま立ち去ったんじゃ〜かっこ悪すぎる。
でも何も思いつかなかった。涙だけは見せたくない!逃げたい心がそうさせたのか?くるっとターンをしてポケットの中に手を突っ込み歩いた。
用事を思い出したフリをしよう!逃げたと思われるのがイヤで、そう自分に言い聞かせた。本気にしたの?冗談に決ってるだろ?って明日言えば・・・そうさ!冗談・・・。ウっ・・泣くな!エド!お前の未来は明るいぞ〜?そうだ!口笛でも吹いて〜楽しくなってきただろ!
足も軽く〜スキップでもしようじゃないか!か!?あ〜〜〜〜!!
シューシューと息の方が大きな音も出ない口笛を吹きながらツマズいた。慌てて出そうとした手はポケットだけを破り去りエドの体を助けてくれる事はなく鼻血を垂らすエドのハンカチとなった。2人以外には知られていない今でも思い出したくない最悪な失恋だった。