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第1章・14 作戦開始

「随分必死だね〜。一体クビにした俺に何をして欲しいんだ?」


「だから機械が治るまでの間もう1度働いて欲しいんだ!この通りだ!」


俺のポケットの中には何でも願い事が叶うマッチがある。

このマッチさえあれば金だって何だって思いのままになるかもしれない。

何度も無様な思いをさせられたうえに俺は死を選ぼうとしたんだ。

あのまま飛び降りて今頃は死んでいたかもしれないというのに今更カーターを許せと言う方がおかしい。



このまま工場が潰れて行くザマを見るのもイイ気味だが、もし過去に戻れるのなら俺はアノ頃の最高に楽しかった時間に戻りたい。


俺の発明で工場が栄え街も活気に満ちたあの頃に戻りたい。

でも、結果カーターの為になる事だけが無性に許せない。


「頼む。頼む。助けてくれ・・・・」


エドはゆっくり目を開けた。


俺の後ろには僅かな金でもイイから家族の為、自分の為に生きる為に本当は欲しくて堪らない仲間が着いて来ている。


もう俺だけの問題ではなくなった。もう後戻りはできないんだ!そう決心した。


「カーター?手伝ってやっても良いけど」


「本当か!?エド!」


「ただし条件がある」


「何だその条件って言うのは!」


「さあ。何でしょうね〜。」


条件と言った所で正直カーターを納得させ誰もが幸せになれる方法を思いつかなかった。


賃金を上げろ!と言ったって1日・2日程度では意味がない。

機械が治るまでの間だけ働くというのを永久にみんなが働けるようしたいというのが本音。

どうしたら、そう確約が取れるのかまではエドにも良案が浮かばなかった。


「賃金を上げれば良いのか?ちょっと待てよ計算してみるから!」


そう言って何やら紙に書き出した。


「なあカーター?」


「まず引くだろ・・・何だエド?」


「この数字は何だい?」


「あ〜これがだな。今ある工場の借金だ。で、これが今ある全財産。で、修理代が・・・・修理代金がいくらになるか・・・」


「判らない?」


「そうなんだ。あれだけの機械が全部動かなくなったんだ。」


停止してしまったシナリオの続きがエドの頭の中で完成した。


紙に書かれた金額をカーターが全て書き終える前に素早く計算してエドの条件は全員を永久に働かせる事に決った。


「修理してもダメなら買い替えになるんじゃないのか?って事はそれを予想して修理代金ではなく購入代金に考えてみたら?」


カーターの耳元で不安の種を開花させるように言葉を撒いた。


「そんな訳ないだろ。まだ2年しか経っていないんだぞ?修理した方が安いに決っとる。」


「この街には機械を修理できるようなヤツはいないはずだけど一体どこの街から来るんだ?」


機械は外国からやって来た代物。

隣の町だってその隣の町だってどこにもそんな知識をもつ者はいなかったはず。

外国から船に乗ってやってくるにしろ一体いつ何人どれだけの費用がかかるやら。


ペンが止まってしまったカーターの不安を一層煽るようにエドは続けた。



「来たけど治らなかったら、さらに新しい機械の購入代金が上乗せか・・・・。」


その言葉にカタカタ震えだしたカーターからペンと紙を取り上げてエドは次の作戦に出た。


「いいかい?カーター。

君の言う通りに計算するとだなマイナスだ。


このマイナスを埋める為にアンテナを作り続けたとしても、また機械が壊れてしまったら今よりさらに借金が増える。


ついでに書き足すと、カーターの計算の中には機械を動かす燃料費も入ってないな〜」


その数字を見て頭を抱え込んだカーターをよそに、シナリオ通りの計算で出た答えをエドは優しい声で提案した。


「機械を修理せず今ココにいるみんながアンテナを作れば、給料を少し上げたって工場の借金は消えていくんだけどな・・・。」


「本当か!」その言葉に物凄い勢いでカーターが飛びついた。



新しい機械を購入しなくたって、町中のみんなが。いや隣の街からだって働き手が来るだろう。

エドはカーターだけに聞こえるように小声でささやいた。


「いいかいカーター?

機械は壊れたら修理代金や購入代金がかかるけど、従業員が病気になったからってアンタが病院の代金を払う必要があるかい?


それに、みんなが裕福になれば街は活気を取り戻すだろ?みんなカーター君に感謝するんじゃないかな〜


恩人?英雄?ヒーロー?いや偉人だね」


回転が遅いカーターにでも、言葉の意味を理解するまでに時間はかからなかった。


「そうか・・・そうだったのか!


エド!君は本当に素晴らしい!!」


「じゃあ今日の人件費の総額はコレだ。

1人あたりこの金額にすると、ココにいる人間だけじゃ足りない事は判るよね?」


エドの計算どおりにウンウン頷くカーターはもう操り人形だった。


「お〜い!聞いておくれ!今日1日の賃金は全員この金額だ!


ココにいるみんな以外にも金が欲しい友達や兄弟は隣町にいないか〜?

庭で遊びほうけてる子供達はいないか!?子供にも平等に賃金を与えよう!

さあ、もたもたしてる場合じゃないぜ!今すぐ人を集めるんだ!」


全員勢い良く工場の敷地から仲間を集めに出て行った。


「ありがとうエド。本当に今まですまなかった!」


「いや。これからですよ。明日までに作りあげる準備を・・・」


「本当にスマナカッタ〜!!」


男に抱きつかれて喜ぶ趣味はなかったけど、あんなに憎らしいと思っていたカーターが泣きじゃくる姿を見て出来の悪い子を持った親の気が少しわかった。


良く見るとカーターのハゲ上がった頭まで可愛らしく思えてきた。


さあ!男色に走る前に成功させなくては!エドは1人工場の中に入って行った。

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