第1章・12 何かが起こった
「やっぱり夢か・・・」エドは意気消沈した。待てども待てども煙は立ち上がりチリは降り積もる。
ギリギリ・ガッシャーン(本気で唱えたぞ?)
ギリギリ・ガッシャーン(バカじゃねえのか?)
アンテナ工場の機械音までもが馬鹿しているように聞こえた。機械音の勝利に満ちた音を背に敗北者エドはまた歩き出した。どれぐらい歩いたのだろうか。気がついたら街の入り口まで来ていた。
「はぁ・・・戻ってきたら意味がないじゃないか!!」
「何が意味がないのか?」
「いや・・・。い?どうしたんだ?こんな時間に」
「何言ってるんだよ!ほら!早くお前も乗れよ!」ルイスはエドを自転車に乗せて勢い良く工場に向かって走り出した。
「おう!着いたぜ?」
猛スピードで突っ走ると舗装されたレンガ道でも舌を噛む事をエドは知った。
「おい。待てよ!ルイスお前もクビに」
「おはよう諸君!素晴らしい朝だね〜」
「お〜う!ルイス最高の朝だよ」
エドは驚いた。今まで一緒に働いてきた仲間達が工場の敷地内に溢れかえっているではないか!?一体何が起こってるんだ!?
「驚いたよな〜。俺なんかこれは夢かと思ってよ〜」
「ワシは今の社長に恩はないけれど、元社長に恩があるんじゃ」
「何でも良いよ!仕事さえ。金さえ貰えれば何だってよ!」
「ちょっと待ってくれ!一体何がどうしたって言うんだ?」
エドは何が起こっているのかさっぱり判らなかった。聞こうにも誰もがクビになった同僚との再会に歓喜の声を上げ去っていってしまう。やっと1人の年寄りがエドの問いに答えてくれた。
「何言ってるんだ?お前の所に電話は来なかったのか?」
遅い・・・会話が人の10倍は遅く感じる。無駄な時間を巻き返すかのようにエドはまくし立てた。
「いや。家には帰ってないんだ!だから頼む何がどうしてこうなってるのか俺に教えてくれ!」
「実はな〜」肝心な部分に入ると同時に、けたたましくサイレンが鳴り響き人々は朝礼台に集まり始めた。
「じゃったんだ〜」
「聞こえなかった!もう1回頼む!」
「だからな〜?何を話しておったんじゃッけ?」もう言い。聞きたい事はすぐに判る。今まさに目の前に、昨日エドをクビにした憎き新社長カーターが朝礼台に姿を現した。