第1章・9 不思議なマッチ
「このマッチをお前に譲る。使い方は簡単だ。点火をして炎に向かってお前の望みを唱えるだけだ。ただし、点火している間に願い事は言うんだぞ?」
嘘か幻か?でもダニーの顔から冗談には聞こえなかった。
「望みと言っても叶わない物もある
まず1つ。死んだ人間は生き返らない。
2つ。過去に戻る事は出来ない。時間は操れないって事だ。
3つ。壊れた物は治らない。人の心も同じだ。気をつけろ。」
「どうしたんだ?こんな物?」
いつのまにか声が出ていた。
「本当はジョージに渡したかった」
「渡せばイイ。戻ろう」
「いや。もう俺は戻れないんだ」
「何故?」
「お前は今なら戻れる」
「お前はって何だよ?」
「俺はもう行かなきゃ行けない」
「何処にだよ?」
「いいか。お前は戻って俺の約束を聞いてくれ。元気でな・・・・愛する弟エド・・・・」
「何言ってるんだ!?さっぱり判らないよ?」と、ダニーの姿は消えていた。
「ダニー?冗談だろ?ダニー?ダニー!!!!」
ダニー?イ?イイ!?!?ゴエ!ゴホッ!オーエー!!ダニーと叫ぶエドの鼻の中にエドの上に積もったチリが一気に流れ込んだ。はあ・・・死ぬ所だった。って・・・ココは何処だ?辺りは1面薄くチリで覆われた銀の世界。モクモクと黒い煙を吐き続けるアンテナ工場の煙突が遠くに見えた。起き上がろうとした瞬間だった!
「うわ〜!!!!!ふう〜危ない」
エドが横たわっていた場所は崖の先端だった。どうしてこんな所に・・・?さっきまで俺はダニーと。夢・・・だったのか。工場をクビになり帰る事が恐ろしくなって当てもなく歩いていた事を思い出した。
「そうだった。俺は。」
きっと死のうと思ってココへやって来たんだ。そうだ。きっと・・・。