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真聖シガト王国?

「ケーナ達が行方不明になったのが8日前だよ。3人そろってギルドに薬草を納品し、その後に店に向かって歩いていくところは目撃されている。それからの足取りがつかめないのさ、子供3人で採取できる程度の薬草だからね、馬車を使っていなかったみたいだ。町中探し回ったんだが、どこのも居ない。街の門はくぐっていないんだが、もう街から出ているんだろうさ」

そう言うエメロードに。

「ちょっと、待ってくれ。たったの8日で? 町中? まさか。そんなこと不可能だ! まだ、探しきっていないはずだ」

「冒険者達に領主騎士団、そして、街の住人達。皆が町中を探しまくったんだ。空き家に倉庫、普段は人気の無い空き地。地面に柔らかい部分が有れば、そこすら探ったんだ。でも、見つけられなかった」

「はあ? 騎士団に住民達? 町中を探しまくったって? それに冒険者って、誰がクエスト出したんだ?」

「何言ってんだい。あんたは、この街の大恩人だ。その仲間が行方不明なんだ。それこそ町中の人間が探したのさ」

「そうか、みんなが。でも、見つからなかった・・・・・・」

そうか、ガーゼルの街にはいないか。だったら、誘拐、目的は・・・・・・。

「誘拐だろうね。しかも、街から連れ出されてるね。あの子達の事を知っててやったんなら。狙いはあんただね。人身売買って事も無いとは言い切れないが」

マニューバースを派手に動かしたタイミングだからな。

「まあ、俺だろうな。でも、何を・・・・・・」

「パペットバトラー、アイン達、ゴーレムホース。それに、あのアダマンタイトもお前さんだろ。その他にも変わった魔道具の数々。一つ一つもそうだが、タケル個人を欲しがる人間は数知れないと思うね。それこそ、大商人、貴族、王族、盗賊団なんて線もあるのかね」

「クソッ!」

ただじゃ済まさねえ。

「目的がタケルなら、3人は生きている」

「俺に言う事を聞かせるためか」

「ああ、あの子たちは無事さ。」

『バン!!』

ギルド長室のドアが勢いよく開き。

「タケル! 店にこんな物が!」

ラングが紙切れを片手に部屋に入ってきた。




「この辺りが良いな」

ドラグーンを抜き、ハンマーを数回動かしてから押し込む。トリガーを引き魔術を発動させる。

『キーーン』

目の前の地面が長さ20m幅5mに渡って、まるで舗装されたようになった。背負っていたバックを下ろしAMRを組み立て始める。僅かな時間でくみ上げ、バイポットを下ろし伏せ撃ちの体勢をとりボルトを引きスコープを覗く。トリガーを絞るように引く。

『ズガン!』

着弾を確認し、さらにトリガーを引く。

『ガシャ!』

次弾が装填される。スコープを調整し、トリガーを引く。

『ズガン!』

よし、調整はこんなもんだろ。

「衝撃波で砂煙が上がったりしねえな。さて、もう1、2カ所整地しておくか」

AMRはそのままにして、ドラグーンを抜いて辺りを歩く。


「しかし、おかしな要求だったよな。普通は1人で来いとかなんじゃねえのか? 傭兵団全員で来いってどういうつもりなんだ?」

ラングが持って来た紙には、あと2時間後にあそこの大きな木の下に来いとなっていた。ガーゼルの街から、おおよそ3km離れた街道沿いだ。ここからだと400mくらいか。俺の腕でも十分に狙える距離だが、攻撃魔術の射程からは大分はずれる。AMRを知らなきゃ無警戒になる距離って事だな。

「さて、しばらく待つか」


「お、来た来た」

ラングを先頭に皆が歩いて来る。最後尾はボイスだ。昨日あの後に光の剣の連中とあったんで、代役を頼んだ。ラングが俺の代役なんでラングの代役だ。危険なことはちゃんと伝えたが、ケーナを探すためには重要な役目だからケーナが感謝しまくるだろうって言ったら快く引き受けてくれた。チョロイ。5人は木の下に着くとガーゼルの街の方を向く。指定の時間は間もなくだ。

「あれか?」

何の変哲もない小さな箱馬車がガーゼルの街からやって来る。馬車の中には・・・・・・。

「やっぱり、3人は乗ってないな。プランBでいくぞ」

「了解」

インカムを通してラングから返事があった。プランAはケーナ達3人を連れて犯人が現れた場合を想定している。俺がAMRで狙撃し、慌てたところをラング達で襲い掛かる。で、プランBは3人が一緒でない場合で、犯人1人を残し全滅させる。残った1人から状況を聞き出し、誘拐した連中には、立場に応じた責任を取ってもらう。盗賊などの組織なら潰し、国なら頭を挿げ替えてもいい。でも、国民にはなるべく手を出さない方向でだ。馬車が5人に近づき御者を含めて3人の人間が降りてきた。商人風のちょっと良い身形をした小太りの男に、護衛だろう簡単な防具を付けた男女2人だ。俺は、AMRを構えスコープの倍率を調整する。3人の誘拐犯達が5人に近づくと、小太りの男が。

「ちゃんと全員で来たようだな」

ラングの付けているインカムはちょっと改造して相手との会話を拾えるようにしてある。

「約束は守ったんだ。三人は?」

「連れてくる訳がなかろう? お前たちは名うての傭兵団なのだろう? 万が一のこともあるからな。ちゃんと保護しているぞ」

「あんたらの処にいるって証拠は?」

「おい」

護衛の男に指示を出す。男は持っているカバンから棒状の物を差し出す。アシャさんが受け取り。

「ケーナちゃんの脇差、アプリコットちゃんのワンド、シグ君の剣ですね。あなたたちが誘拐犯で間違いないようですね」

「誘拐ではない。交渉を円滑に進めるために招待したのだよ」

「交渉? 誘拐犯と交渉なんかする余地は無いと思うが、とにかく、あの子達を返せ。話はそれからだ」

「いや。まずは、お前たちの持っているゴーレムとその技術を返せ。子供たちはそれまで預からせてもらう」

「返せ? あんた達から何か借りた覚えはないが?」

「何を言うか。あれは我が国の物だ」

「はあ? 我が国ってどの国だよ?」

ビンゴ! やっぱり国かよ。それにしても、パペットバトラーだけじゃなく、その技術が自分達の国の物? どう言う理屈だそりゃ?

「それはついて来れば分かる。全てのゴーレムと技術資料を持って着いて来い」

「あ? 食糧や水をあんた達が用意してくれるのか? 何処に行くか分からなきゃ用意できねえぞ」

「それを教える前に。全員にこれを付けてもらおう。おい」

また、護衛の男に指示を出す。今度は、帯状の物を束ねたようなものを小太りの男に手渡す。小太りの男は束から1本抜き取る。何だ? 首輪? 似たような首輪を2人の護衛も着けている。まあいいか。俺はトリガーを引く。

『ズガン!』

AMRの反動を抑え、スコープを覗きこむ。ラングに首輪を差し出した右腕の肘が吹き飛ぶ。トリガーを更に引き。

『ガシャ!』

次弾を装填。護衛の男に照準を定め。トリガーを引く。

『ズガン!』

今度は、護衛の男の左胸が大きくえぐれ後ろに倒れこむ。まあ、魔物用の弾丸だ。人に当たればああなるし、腕に当たった男も運が悪ければ心臓が破裂して死んでいるかもしれない。大きな口径の強力な弾丸が太い血管に当たった場合は、衝撃で心臓が破裂する場合もあるそうだ。次いで、女に照準を合わせ・・・・・・? 

「いない? くっ!」

AMRから離れ、身体強化をし魔力を展開する。射撃に集中していたために辺りを探るのを止めていた。

「そっちか!」

刀に手を掛け右前を向き、抜刀する。

『ギン!』

俺の刀と、女の細身のショートソードがぶつかる。速い! こいつ、まるで飛んで・・・・・・。

『ギン! ギン! ギン!』

考えている間にも相手の剣戟は止まず、俺は受けに回らざるを得ない。こいつ、身体強化を使っていやがる。しかも、俺より速い! 

『ギン! ギン! ギン! ギン!』

こいつも、魔闘流? ・・・・・・いや、だったら最初に展開していた俺の魔力に気が付いたはずだな。そいつに気が付くことができないのに、身体強化が使える。それに、何だか違和感もある。

『ギン! ギン! ギン! ザッ!』

「チッ」

まもーるくんの物理障壁を破り脇腹を薄く切られた。さすが身体強化による斬撃だ。反射的に蹴りを放つと。

『ザッ!』

女は飛びのく。

「あんたも、転移者ね」

俺と向かいあって、女が言う。なに? あんたも? でも、転移者? エトランジェでも来訪者でもなく?

「あんたも、『アルトガイストへようこそ~』の口か。身体強化と剣術に極振りしたのか?」

「そうよ。RPGの勇者はやっぱり剣でしょ。SSポイントが限られているんだから極振りするしか無いもの」

「だったら、なんで用心棒なんかしてるんだ」

「いろいろと事情があるのよ!」

『ギン! ギン!  ザッ! ギン! ザッ! ・・・・・』

刃を受け止めているが、徐々に追いつけなくなってきている。魔力の展開で先読みできるにも関わらずだ。やむを得ず、深手を負いそうにない攻撃は完全によけずに貰っている状態だ。浅いので当面は問題ないが・・・・・・。何のための当面だ? 打開策も無いのに当面とは変な話だ。しかし、打開策なんかそうそう思いつくもんじゃない。だいたい、相手の剣を避けるので精いっぱいなんだ。正直余裕はない。

『ギン! ザッ! ギン! ザッ! ・・・・・』

「クッ」

支えきれずに1歩下がる。まずい、このままじゃ押し込まれる。

『ダン!』

強く地面を蹴り、低く飛び下がる。

『ダン! ダン! ダン!』

短距離を素早く4回跳んでとりあえず大きく間合いを外し左手で刀を抜き、2刀になって女を待つ。女の持つショートソードは両手で持つ刀よりもより柔軟に動かせる。両手で持つ刀で、そいつに追従するのは難しかった。片手を離せば良かったのだが、刀を片手で持つと、バランスが悪くなるし、ショートソードよりも重いのでこれでも追従は難しい。2刀にすれば、手数で何とかなるんじゃないかって事だ。

「あの状況でもう1本の刀を抜くのは難しかったからな」

「せい!」

『ギン!』

「何? 苦し紛れに2刀流?」

『ギン! ギン! ギン! ・・・・・・』

なんとか、抑えられるか? しかし、剣戟を与えるまでにはいかない。刀の魔石に魔力を流し高周波ブレードにする。

『キン! キン! キン!』

しかし、やっぱり女のショートソードを切ることができない。接触時間が短すぎるせいなのか?

「何かした? まあ、無駄みたいだけど」

音が変ったから気が付いたのか。くそ! 打つ手なしか。

「今度は全力で、行くわ」

『ギン! ギン!  ザッ! ・・・・・ザッン! ・・・・・』

クソ! いいのを貰った。少しよろめいた俺に、止めを刺そうと剣が迫る。

『ヒュ! ゴス!』

女が吹き飛ぶ。

「ますたー。タダイマ、タダイマ、タダイマー。あいん三乗!」

「アイン!」

ただいま×ただいま×ただいま、で、ただいまの三乗って事ね。アインは女に殴りかかっていく。女の剣を躱しながら、パンチやキックを繰り出す。そこに俺も加わり、二人で連携して攻撃を始める。

『ギン! ギン! ギン! ・・・・・・』

今度は、向こうが防戦一方になる。俺が、上段から大きく刀を振り下ろす。

「ツッ」

そんな振りが当たるはずもなく、剣も使わずに避けられる。刀を振り下ろした姿勢をさらに屈めた俺の後ろからアインが飛び出しパンチを放つ。女は慌てた様子もなく後ろに下がるが、次の攻撃に備えるためか最小の動きだ。

『チーン!』

アインのガントレットから飛び出した爪が伸び、女の首輪をかすめる。惜しい、首輪が無きゃ切り裂けたかもしれない。

『ドーン!』

その時、首輪が爆発し女の頭がちぎれた。えっ?

「アレ? ますたー、あいんノ爪ニ何カシタノ?」

「いや、何も。首輪が勝手に爆発したんだ・・・・・・」

首輪が爆発? ラングに渡そうとした首輪と同じ・・・・・・。ファンタジー小説定番の隷属の首輪みたいな? 無理に外そうとすれば装着者を殺す? アインの爪が首輪の金具をかすめた事が無理やり外そうとしたと判断されたのか? 死体を眺めると首から流れた血で血溜まりができている。

「え?」

考え事をしながら眺めていると女の死体が・・・・・・消えた。

「ますたー。消チャッタネ。首輪ノセイ?」

「だろうな。首を吹き飛ばした後で証拠を消すために死体も消す魔術が掛かってたんだろ。でも、装備が残っているんじゃ片手落ちだな」

そうだ、確かにおかしい。でも、魔道具がどんな効果を発揮するかなんて調べなきゃ分からねえし、首輪は吹き飛んじまった。


「三人はどこにいるんだ!

俺が合流すると、ラングが詰問し始める。

「腕が、私の腕が、・・・・・・」

男は座り込んで自分の右腕を抑え同じことを呟いている。ラングが男の襟を両手でつかみ吊り上げるように立ち上がらせる。

「そんなものアシャが直しただろうが。傷口はふさがってんだから、これ以上血は無くならねえよ。死ぬことはねえから安心して話せ! 何処にいるんだ!」

「お前たちの持つ技術を引き出すための人質だ。それまで何かあれば不味いからな。我が国で大事に預かっている。もっとも、私にこんなことをしたのだ。1人だけ残っていれば構わない。2人は処分だ」

『ドカ!』

「グハッ!」

俺は、思わず腹を殴りつけた。ただ、内臓を破壊しないように配慮をするだけの冷静さは残っていたみたいだ。続けて尋ねる。

「で、お前さんが言う我が国ってどこだ? ゴーレムを返せってのはどういう意味だ?」

「真聖シガト王国だ。元々この大陸全土を支配していた聖シガト王国が持っていた技術は、全て正当な後継国である真聖シガト王国のものだ。貴様のゴーレムとて聖シガト王国が分裂した時に奪われ、我が国では失伝してしまった技術だ。我が国に返すのは当然だろう」

業火を作るための技術は、ゴーレム術にオートマトン、記述魔術だ。全て普通に知れ渡っている技術で作られている。技術を統合してパペットバトラーを完成させるのはちょっと大変だが、遺失技術なんかじゃねえ。つまり、こいつら勘違いと思い込みで、こんな事をやったってのか。いや。

「自分の国に無い技術を遺失技術と言い張ってこうやって無理やり集めてるのか? お前らはそう言った技術を集めて回っている組織か?」

「・・・・・・」

さっきまでの饒舌さとは打って変ってだんまりを決め込む。俺は、ハンカチを取り出し。

「ラング、ハンカチ持ってるか?」

「ん? ほら」

ハンカチを重ねてから丸め。

「ぐーぐーぐー!」

男の口にねじ込む。

「みんなは少し離れて、後ろを向いててくれ」

ラングを除いた三人が後ろを向く。俺はナイフを腰から抜き男の肩に刺し、手首を軽くひねる。

「グガーーーー!!」

今度は、右腿を突き同じく手首をひねる。

「ムッガーー!」

叫びながら腰を落とす。胸倉をつかんで立たせると。左腿を同じようにする。

「ガーーー!!」

俺は刺したナイフを抜き、ドラグーンでハイヒールを掛けてから。ハンカチを取ってやる。

「質問に答えろ」

「ハアハアハア・・・・。我々は、遺失物調査院の調査官だ。様々な遺失技術を大陸中から収集している」

「なるほど、思い込みと勘違いで俺のパペットバトラーをくすねようとした訳か」

「勘違いなどでは無い! あのゴーレムは現在の技術では作れないものだ! 聖シガト王国の技術で作られた物で間違いない! それが証拠に、お前たちがアースデリアに渡したゴーレムの技術は、お前が持っているゴーレムに比べ格段に性能が落ちるではないか。お前たちが持つゴーレムこそ、聖シガト王国において作られた物で、アースデリアのゴーレムは失われつつある技術による物だからだ」

「残念だな。アルハーンは使える魔結晶や材料の関係で妥協した性能になっているが、パペットバトラーはゴーレム術、オートマトン、記述魔法が使えれば出来上がる物だ。遺失技術なんて御大層な物じゃねえ。今ある技術を極めれば誰にでも作れるんだ」

「なんだと」

驚く男に質問する。

「お前の護衛の二人が首に着けてたのは、隷属の首輪だよな。アインの爪が金具を傷つけたら爆発したぞ。その後、死体が跡形も無く消えちまった。ひでえ物を使うんだな、あんたの国は」

「おい! 隷属の首輪なんてどうやって手に入れたんだ! 作る技術は無くなっているはずだし、国際法で使用が禁止され、残ったものは廃棄されているだろうが!」

ラングが小太りの男に詰め寄る。

「こいつらが、遺失技術とか言って資料を集めて作ったんだろうさ」

ノルンが。

「死体も残さないなんて、恐ろしい魔道具です」

そう言うと。

「何を言っているんだ? 隷属の首輪にそんな機能は無い。無理に外そうとすれば爆発して首を吹き飛ばすだけだ」

え? こいつの言う事が本当ならあれは、首輪のせいじゃなく・・・・・・。転移者のせいか? 同じ境遇の俺も死ねば死体は残らないってことか。俺達エトランジェは、この世界の人間とは根本的にちがうって事か。世界とのつながりが弱いのか。・・・・・・そうか、アシャさんたちと俺は違う人間ってことか。ちょっとショック・・・いや、分かってた事か。向こうに心と体を残したままこっちに作られた体にコピーした魂を入れたんだそうだからな。そのコピーした魂だからステータスがいじれたんだろうしな。

「あの子達にも隷属の首輪をつけたのか?」

ガーネットが言う。

「国で作れるとは言え、あれは貴重な魔道具だ。なんの脅威にもならない子供になど使う必要など無い」

俺が。

「で、俺達にあんなものを付けさせて、どんな命令をするつもりだったんだ?」

「陛下の命令に従う事。王家の方々に危害を加えないこと。陛下が指定した者の命令に従う事だ」

「あれ? 陛下とやらに会うまでは何の命令もできないって事か?」

「最後に手渡した者を害することは出来ず、命令を聞くのは当たり前だ」

「手渡し? つまり、自分の意志でないと装着できないって事か?」

「そうだ。だから、あのような回りくどい手段を取らねばならなかったのだ」

「なるほど。聞きたいことは聞けたか・・・? みんなは、何かあるか?」

首を振るみんなを見て。

「そう言えば、あんた名前は?」

「シャクナン。シャクナン・ドーソン」

「じゃあなシャクナン、向こうでさみしくないように。直ぐに陛下もそっちに送ってやるよ」

「何を?」

そう言う男に向けて、ドラグーンを引き抜き、アースボルトのカートリッジに合わせ、トリガーを引く。

『バンッ!』

男の頭が粉々に吹き飛んだ。



食糧を買い込みハーミットに積み込んだ俺達は、また、ガーゼルの街から旅立った。

「あたしも一緒でよかったんですか? お店お休みにしちゃいましたよ」

「ますたーガ、ぷらぷらシテイタセイデ、ドウセ売レルモノナンカ残ッテ無インダカライイサ。ソレニけーな達ダッテ、皆ニ会イタイニ決マッテルサ」

「まあ、フィーアにはやって欲しいこともあるし、不本意な処も有るがアインの言いたいことは分かる」

「全てが終わったら、お店再開しましょうね」

「ん? ・・ああ」

アシャさんの言葉に素直に、返事ができない。異世界から紛れ込んだ異物か。

「シガト王国だったか? どんな国なんだ?」

ラングが。

「真聖シガト王国ね、思い出したよ。大昔に大陸を支配していた大国の聖シガト王国の正当後継国だって言ってる大陸の東の端にある小さな国だ。産業も無く、特産品も無い。どの国も特に領土とする魅力も無いが、正当かどうかはともかく大国の後継国であることを否定する要素も無いんで、戦争の調停役なんかの時に便利で、毒にも薬にもならないから、『大陸中の土地は今は使わせてやっているだけだ。時が来たら全て返してもらう』なんて公式な場所で王族が発言しても周辺諸国は生暖かい目で見てるって国だな。遺失技術やパペットバトラーを使ってその時ってやつを起こした院じゃないのか?」

「1000年も前に滅んだ国なんだろ? それだけあれば、様々な技術は進歩するだろうに。そんな物を全部遺失技術だなんてな」

確か、サースベリアでそう聞いた。・・・・・・ような気が。

「いや、1000年では無いな。聖シガト王国が後継者問題を端に発した内乱によって、分裂してから500年は経っていないはずだ。1000年と言っているのは、その分裂の時にできた国が権威付けのために古くから続いていると言ってるだけだ。スガラトは建国450年くらいだったぞ。内乱が納まるには何年もかかったらしい。その時に失われた技術は数多いんじゃないのか。広い大陸全土を支配していたんだ、なにかねえと無理なんじゃねえのか?」

んー、長距離を結ぶ通信網とかあったのかもな。真聖シガト王国か、何か良い魔道具とか有るかな?




途中でスガラト王国に寄り、パペットバトラーを奪おうとした事や隷属の首輪の事を話し、シガト王国がやった事を周辺国家に知らせてもらう話を取り付ける。そのままシガト王国に向かった俺達は、国境付近まで来ていた。街道を逸れ、少し高い丘の上で止まった。国境から王都が見えるって事は、やっぱり国土はそうとう狭いんだな。大きな街は王都しか無いそうだが、王都そのものは結構大きいな。アースデリアの王都どころか、スガラトの王都より大きいかもしれない。

「さて、こいつを付けてくれ」

そう言って、テーブルの上に首輪を取り出す。

「「「「え?」」」」

驚く皆を後目に見ながら、俺は自分の首に1つ巻き付け金具を留める。

「ただの首輪だよ、隷属の首輪そっくりに作ってみた。こいつを付けてりゃ国王の前まで行けるんだぜ。便利だから作ってみた」

道中時間が有ったので、余計な事を考えなくても済むように隷属の首輪の記述魔術の解析をしてみたんだが、あの男の言った通り隷属の首輪には死体を消す機能は無かった。やはり、消えたのは俺達の様に異世界から来た人間だけのようだな。

「ナーンダ。首輪ヲあしゃ達ニ付ケサセテ、アーンナ事ヤコーーーンナ事ヲスルツモリナノカト思ッタヨ」

「するか! そんな事!」

「「しないのか?」」

「「「しないのですか?」」」

「お前ら、普段俺をどんな風に見てんだ?」

「「冗談だ」」

「「「冗談ですよ」」」

「ますたーハへたれダカラデキッコナイヨネ」

「アイン。ヘタレ言うな」

「じゃあ、付けましょうか」

みんなも首輪を着けた。さて、乗り込もうか。

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