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やっぱりチュートリアルだったのか!

とりあえず第1章的な部分が終了しました。

「驚いたぞ!ムチャクチャ驚いたぞ!!」

「なんだ、.....タケルか.....」

おっさんは、落胆した様子で店の中に入ってしまった。

ちなみにおっさんの名前はバーナムと言う。週1回のポーション購入の他にも買いものに来てるからおっさんとも馴染みになってきた。

「おっさんどうしたんだい?驚いたぞ。アリシアちゃんがどうかしたんかい。とうとうおっちゃんに愛想つかして出てったまま帰らないんか?」

おっちゃんは、俺の冗談に対して。

「昼前に買い物に出かけたアリシアがまだ帰って来ない」

心配でたまらないと言った表情だ。

「昼前だって、もうそろそろ6の鐘が鳴るころじゃないか」

そろそろ4時になる。アリシアちゃんに何かあったってのか。

「もちろん、近所に友達はいるが買いものをほおって遊びに行くなんてことは今まで1度もなかったんだ」

「買いもの中に何かあったってことか。知り合いに何かあって手が離せないってこともあり得るか?」

俺の問いかけに対しおっさんは。

「それならいいんだが.....最近若い娘が行方知れずになっているって話があるだろ?」

「そう言えば冒険者ギルドでそんな話をしてるやつらがいたな....4人くらい行方知れずって言ってたな」

「誘拐にされたんじゃないかと心配しているんだが、心当りは探してきたんだ」

「誘拐って、真昼の街の中だろ?さすがにそれは.....」

俺は、何か力になれないかと考えたが、この街の中ですら行ったことが無い場所ばかりだし、知り合いもほとんどいない俺ではおっさんの力などとてもなれるものではない。

.....こともないか?

「おっさん、俺の魔法で探してみようか?」

「なに!アリシアを探すような魔法なんかあるのか?そんな魔法が使えるなら頼むアリシアを探してくれ」

拝むように頼まれた俺はアリシアちゃんを探す準備を始める。

「まずは、このくらいの木の板を2,3枚と銅貨くらいの大きさの魔石を1つ準備してくれないか」

俺は手で40cm四方くらいを示した。

「あとは50cmくらいの糸を1本用意してくれ、すまないが狩りの帰りでなんにも持ってないんだ」

おっさんは

「そんなものでいいならすぐに準備するが、アリシアをさがせるのか?」

「できる限りのことはやらせてもらうさ、アリシアちゃんは俺の癒しだからな!とりあえず魔石から頼むよ」

おっさんは、カウンターの後ろから魔石を1つ持って来てくれた。

「こんなのでいいのか?」

「ああ、それでいい、準備をするから、他の物も頼んだよ」

「おう」

おっちゃんは返事をすると店を出て行った。

魔石と言うのは魔物から取れる魔核を加工したもので、比較的小さな魔核から作られる。魔石ってのはちょっとした魔法陣や魔法紋を刻みこみ魔力を通すことで魔法を発動させる道具に加工できる。ちょっとだけ魔力を蓄積でき魔力を使いきるたびに補充する必要があるが、ゴブリンからも取れるので結構安価な魔道具の回路として使われる。ちなみに大きな魔核からは魔結晶ができるこちらは、自然にあふれているマナを魔力に変換し蓄積することで永続的に魔道具を作動させることができる......らしい、見たことは無い。俺のように記述魔法が使える者たちが魔道具職人として働いている。

「さて、今から刻む魔法紋は....と」

本当は特殊な道具が必要で記述する内容によってはかなり繊細な作業になる。俺はモデリングを使って頭に浮かんできた魔法紋を刻んでいく。

「これくらいの木の板でいいのか?」

おっさんが板を持って来てくれた。

「ああ、それでいい」

おっさんの手元をちらっと見て返事をする。

「それから糸だったな」

机の上に板を置いておっさんは糸を探しに行く。

「さて、魔石は完成したぞっと。次はこれだ」

木の板を1枚取る。そこにモデリングを使ってざっとした街の地図を描いた。

「タケル、器用なもんだな、ほらこの糸でいいか?」

糸を受け取り魔石をつるせるように縛り付ける。

「さーて魔力を流すぞ」

おっさんは俺を見て不思議に思っているのか聞いてきた。

「なにをしようってんだ」

「ダウジングで探せるんじゃないかってね」

地図を広げた上でダウジングを始めてしばらく....。


「あれ?反応しない」

街の中にいれば生きてる限りこれでわかるはずだぞ。(アセアセ)


「あ」

「何だ、アリシアはどこだ!!」

「あー、アリシアちゃんが普段使ってる物を貸してくれハンカチかなにかないか。探し物ならそれを強くイメージできるものとか、探し人ならその人が普段使ってる物があると探しやすいんだ」

俺はアリシアちゃんとは単なる知り合い程度ってことがこの魔法を使うこと判明したってことだ。

「おーあーるぜーっと」

「今持ってくる」


おっさんからハンカチを受け取ってもう一度ダウジングを開始する。

「ところで『お―あーるぜーっと』ってのは呪文かい」

「聞かないでくれ」(涙)


地図の手前一番隅の方で反応した。俺はもう一枚木の板を取りだして今度は街の南に向かって知っている限りの地図を描いた。あまり広範囲な地図は描けなかった。これでダメでももう1枚の板で何とかなるだろう。

「こんなことならもっとあちこちに出歩いていりゃよかった」

さらに続けると。街道を南に向かったようだ。

「おっさん、心配していたとおりかもしれんな、街から出てるみたいだ」

地図の範囲を出てしまったようだ。歩いて日帰りできる範囲でしかクエスト受けてなかったからな。これはいまさらしかたがない。

「アリシアーーーー!!!」

おっさんは頭を抱えて座り込んでしまった。

俺は、もう1枚の板を4分の1のサイズに切って4隅にそれぞれ、東西南北と描いた。これがあれば目標のいる方向が調べられる!......はずだ。


「バーナムさん」

俺は初めておっさんの名前を呼んだ。顔を上げ俺を見るおっさんに対し俺は。

「俺は冒険者だ、ギルド経由で依頼を受けて生活している」

おっさんは、いきなりなにを言い出すんだこいつは?って顔で俺を見ている。

「しているけど.....ギルドを通さず依頼人と直接契約を結ぶってことはギルドでは禁止していないはずだ。ギルド規約の細かい所は忘れたけど」

俺がニヤリと笑うと。

「忘れたってのはな、一度覚えた時に使うんだぞ」

おっさんもニヤリとした。

「あーそうだよ、覚えなかったよ!」

「さて、バーナムさんアリシアさんを捜索しつれ戻ることを俺に依頼しないか?」

俺は、めずらしくまじめな顔でおっさんに尋ねる。

「ああ、依頼する。報酬はいくらでも出す!タケルさん、頼むアリシアをアリシアを連れ戻してくれ!」

俺の右手を両手でつかんで依頼してくる。

「じゃー行ってくるぜおっさん」

「頼んだぞタケル!」

俺は走り出しながら。

「報酬はアリシアちゃんがほっぺにチューしてくれりゃいいぞーーー!」

おっさんは。

「ふざけんじゃねーーーーー!!!」

と温かい励ましをしてくれた。



南門に付いたところで、門を警備する兵士に尋ねる。ここも毎日のように通るからすでに、顔なじみだ。

「今日の昼ごろに商人の馬車が出ていなかったかい?」

誘拐された女の子達は、ここ1週間の間に5人だ。1人1人運び出すのは効率が悪いし、動かす回数が増えることで、ばれる確率も増えるだろう。アリシアちゃんをさらって直ぐに街を出たと言うことは5人の女の子は一緒に運ばれたんだろう。5人もの人を隠して街の外に連れ出すには商人の使う馬車に偽装するのが一番確実な手なんじゃないだろうか。でも、商人なんてのは、朝早くに出立して明るいうちに距離を稼ぐはずで、アリシアちゃんが誘拐されてからすぐに出発しても昼は過ぎていたはずだ、かなり珍しいからひょっとすると覚えてるかもしれないと思ったんだ。

「あーいたいた何でも隣の領都に酒を運ぶんだとか言って、15樽ほど運んで行ったな。一刻も早く届けないと儲けがふいになるって言ってあわてて出て行ったよ。商人ってのはたくましいもんだよな」

「馬車は何頭立てだい?人は何人いたかな?」

兵士は

「1頭立てで主人を入れて7人だったな、急ぐって割には馬1頭だったんでおかしいなとは思ったんだがね、何かあったのかい?」

「知り合いの女の子が誘拐されたかもしれないんだ。もう街にはいないみたいなんだ」

兵士は真剣な顔になって。

「なんだと、最近行方不明になっている女の子たちのことか!それは本当か!」

「俺が魔法で行方を捜してるんだ、証拠はないが俺はそいつが怪しいと思うし今から追いかけるつもりだ」

「証拠が無いんじゃ兵を出すわけにはいかんか.....。お前が嘘を言ってここから出かける意味が無いしな。すまんが今の時点では手助け出来ん」

「情報を貰えただけで十分だ、ありがとう」

兵士に礼を言うと俺は酒樽を積んだと言う馬車を追いかけて街道を走りだした。

「相手は7人か」

「どうする......、賊が7人もいて人質を取られてたら、相手を捕らえるってわけにはいかないよな」

「.....俺に人が殺せるのか」

ゴブリンやオークなんかの人型の魔物はためらいなく殺すことができた。しかし人を殺すこととはまた別の話だ。

「いくら人の命が軽い世界だからって言っても、俺までそれに染まる必要はないよな」

「アリシアたちは遠くの町で裏の奴隷商にでも売り払われるってことか、身代金を要求していないんだし」

「自分の意志と関係なく行動の自由を奪われ未来を奪われるってことは間違ってる」

頭の中で色々な考えが浮かんでは消える。殺るしかない、と言うよりアリシア達を無事に助けようと思ったら殺らないといけない。覚悟を決めないとな。今は俺にしかできないんだ。

そもそも、元の世界で平和な時代に剣術の修行をしてきたのはなんでだ?修行をしてなにになると思ってたんだ?所詮は人を殺すためだけの技術だ。

「そう言えば、森田師範にそんな質問をしたことがあったな。祖父ちゃんは怖くて聞けなかったからな。ふふふ」

あの時師範は。

「『誰かを殺すための技術なら、その誰かから大切な人を守れるんじゃないか、大切な想いを守れるんじゃないか』ってなことを言ってたんだよな、細かい所はちょいと違うかもしれないし、今の状況には当てはまらないかもしれないけど」

アリシアちゃんはもう大切な友人だもんなー、あの子がそんなことになるなんてことを見逃したら自分が許せない。つまり今からやらなきゃいけない殺人は誰のためでもなく自分のためってことだな。



辺りが暗くなっってきた頃に一台の馬車が見えてきた。スキルのせいかそれほど疲れてもいないし思ったより早く追いつけた。馬に無理をさせないためか暗くなってきたせいか馬車の速度はそれほど早くない。

俺は立ち止りダウジングをした。南に向かってあと少しのところに来ている。街道をはずれて気づかれないように馬車の前方にまわりこんだ。ここでもう一度ダウジングをする。反応は.....北だ。

「ビンゴ」

俺は街道に出て木片を取りだすと馬車を見据えて背中に向けて魔力を流した木片を投げ捨てた。

ファイヤーウォールが発動し当りが明るく照らされた。あわてた馬が後ろ足で立ち上がって馬車は止まった。

御者台に座っていた人相の悪い男が俺を見て叫んだ。

「てめえ何もんだ。こんな街に近いところで一人で盗賊とはいい度胸じゃねえか!」

「誘拐した女の子たちを黙って置いて行くなら命は取らない」

左手で鞘を握り右手で刀を抜けるようにしながら馬車に向かって歩き出した。

「1人でなにができるってんだ、やっちまえ!!」

男の掛け声でガラが悪い男たちが5人剣を抜いてこちらに向かってくる。

「お前らオークより弱そうだし、コボルトより頭悪いな!」

「てめー」

「ぶっ殺してやる」

俺の挑発に5人は駆けだした、1人目は鞘から抜きざまに胴を真っ二つにし2人目は頭を斬り飛ばした。

3人目の胸を付きさし、刀を抜くために4人目に向かって蹴り飛ばした5人目を袈裟切りにし倒れたままの4人目の男を付きさした。

「そこまでだ、剣を捨てやがれ」

最初の男と御者をしていた男がアリシアを抱えて首に剣を突き付けている。

「アリシア無事か!」

「お兄ちゃん」

「わかったから人質を離せ」

俺は刀をやつらに向かって放りなげた。

「ああ離すさ!」

そう叫んだと思うとアリシアを放り出し2人が剣を掲げて向かってきた。

俺はすかさずベルトから左右の手に2本づつ棒手裏剣を抜きとり2人に向かって放つ。

「グワ!」

「ぎゃ!」

御者には右目と喉に、最初の男には右肩と左目に棒手裏剣が突き刺さった。俺はすかさず走り出すと途中で刀を拾い上げ2人を切り捨てた。

そのまま確認もしないでアリシアに駆け寄る。

「アリシア無事か」

刀をしまい代わりにナイフを取り出すと縄を切ってアリシアを自由にする。

「お兄ちゃーん」

アリシアが俺に抱きついて泣きだした。

「もう平気だから、悪いやつはもういないから」

アリシアの頭をなでながら落ち着くのを待った。


アリシアが落ち着いたところで。

「他のみんなを助けてあげなきゃね」

「あ」

アリシアが真っ赤になって俺から飛びはなれうつむいた。

俺は、他の子たちの縄を切り助け出した。みんな憔悴しているけど大きなケガをしている子はいないようだ。

「えーっと、ヒールはどれだっけ?」

ロープのあとがすり切れていたり、小さなケガはしているようなので俺がヒールの魔法紋を描いた木片を探していると。

「お兄ちゃん、あたしがみんなをヒールするよ」

とアリシア

「え?アリシアって魔法使えるの?」

「あたりまえだよ、ポーション作るのにはヒールやハイヒールが使えないとだめなんだよ」

にっこり笑ってアリシアはみんなにハイヒールをかけ始めた。

「大したもんだねー、じゃ、俺は後始末してくるよ」

誘拐犯たちからカードを回収し、死体は街道脇に魔法で掘った穴の中で燃やしてしまった。

死体を放置するとアンデッドになってしまうことがあるらしい。魔物や獣に食われることが多いそうだがここは街に近いから念のためだ。


みんなを馬車に乗せると馬の轡をとって街に向かって歩き出した。俺は御者なんかできないからな。

アリシア達は馬車の荷台で休んでいる。やつらから解放されて安心したんだろう。荷馬車の荷物は街道脇に降ろしてきた。必要なら兵士達が回収するだろう。


「ちゃららちゃら~!タケルはアリシアのお兄ちゃんになった。ってか知り合いから昇格したかな」


夜明け近くにやっと街の南門が見えてきた。出掛けに話した兵士が走り寄ってくる。

「どうなったんだ、女の子たちは見つかったのか?無事か?」

息を切らせて問いかけられた。

「ああ、みんな無事だ。誘拐犯たちは切り捨てた。これがそいつらのカードだ」

「そうか、確認するからお前さんのカードも貸してくれ」

「犯罪を犯すとカードに記録されるのかい?」

「ああ、そんなこともしらないのか?」

「犯罪なんか起きないような田舎から出てきたんだからしょうがないだろ」

「そう言えば、ムグミン村の村人だったっけなわははは」

本人すら覚えていないようなことをよくもまあ覚えてるもんだな。

「お前さんの話が本当ならお前さんには犯罪の記録は付かないから安心しな」

「便利なもんだな」



門の脇にある詰所でカードを確認してもらって直ぐに俺は解放された。

誘拐犯達には、殺人、誘拐、窃盗などの犯罪歴が記録されていたようだ。どうやって街の中に入ったんだろうねあいつらは。

「女の子達はこちらで責任を持って親元に送り届けるからタケル殿はゆっくり休んでくれ」

「女の子の1人は親から保護を依頼されているんだが俺が直接送り届けても?」

「ああ、かまわないぞ。御苦労さまでした」

兵士は敬礼で送り出してくれた。


アリシアをお姫様抱っこして街を歩いて行くと。

「んー、あ、お兄ちゃん」

「おはようアリシア、もう直ぐ家に付くよ」

それから、自分がどんな格好でいるか気が付いたようで。

「あ、あたし歩けるから」

「そうかい、無理はするなよ」

アリシアをそっと降ろすと店まではもうすぐだ。角を曲がって店が見えると。

「お父さーん!!」

「アリシア」

アリシアが駆けだした。おっさんも駆けだして2人で抱き合って喜んでいる。

おっさんは一晩中店の前で帰りを待っていたようだ。親ってのは大したもんだな。

「バーナムさん、アリシアさん無事にお届けしましたよ」

おっさんは俺の右手を両手で握ると。

「ありがとう。ありがとうタケル」

目を赤くして礼を言ってくれた。

「お兄ちゃんありがとう」

アリシアもいい笑顔で礼を言ってくれた。

その時頭の中に。


「チュートリアルステージ最終クエスト完了を確認しました」

「オートマトンスキルをアクティベートしました」

「鍛冶スキルをアクティベートしました」

「ゴーレムスキルをアクティベートしました」

「ステージ移転開始します」

「以後音声フォローは無くなります」


やっぱりここはチュートリアルだったのかよ!!

アリシアとおっさんの2人が俺の前から消えた。




全てのスキルが使えるようになりました。必要な時には人を殺せる覚悟を持つことをチュートリアルクリアの条件としました。

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