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AMRでいいよな

んー、防具はもう少しデザインを考えたいところだけど、クエストで表に出たりもするんだから時間優先だ。試作品だからデザインの甘さは勘弁してもらおう。遠距離攻撃用の魔道具はもう少しアイディアを練り込もう。

「さーて、試作1号は成功してるんだ。ガーネットとケーナの分も機能は一緒で違いはデザインだけだからな楽勝だろ」

モンスターの革や厚手の布地、アダマンタイト、ミスリルで外装を作り、キルティング加工した布を作って内張りをする。1号は既製品の鎧を買って来て作ったから良かったが、こいつは全て自作だ。1度やった作業はサクサクと進むが、初めての部分は結構大変だ。とは言え、時間はくったが、パーツが出来あがった。


「あ、マネキンがねえとサイズ合わせができねえな。えーと、作業場に材木転がってたよなー」

作業場に置いてあった材木をモデリングで加工し、2人のマネキンを作る事にする。2人の体型は何となくだが、記憶と想像力を総動員して作ってみた。ガーネット用はボンキュンボンって感じだな、ケーナの方はツルペタだ。

「俺の想像力だとこの辺が限界だよな。......しかし、このマネキン誰にも見せられねえなそれこそ本人にも。必要もねえのに手足に頭まで作っちまったもんな。顔には力が入っちまった。まあ、とにかく組み付けてみるか。仮縫いは必要なんだしな、本人で合わせてからモデリングで修正すればいいだろ」


「よーし、出来た!」

ディフェンダーバージョンタケル試作2号と3号だ。んー、名前長いな。何か考えようかな。

「さて、袋に入れて―と。みんなそろそろ帰ってくるころだよな」

マネキンを倉庫の奥に仕舞い込んで工房に戻ると、店の戸が開く音がして。

「「「ただいまー」」」

と声がした。俺は袋を持って工房から店に顔を出し。

「おかえり。防具、ディフェンダーヴァージョンタケル試作2号と3号な、仮縫いの所まで出来たぞ」

「へー、早いね。2人分できたの?」

「ああ、こっちがケーナの分。こっちがガーネットの分だ一式入ってるぞ。工房で着替えてみてくれ」

それぞれに、袋を手渡すと。背中の扉を指差した。袋を受け取った2人は工房に入って行った。振り向きながら。俺に声をかけてきた。

「タケル」

「タケル兄ちゃん」

「ん?」

「「の・ぞ・く・な・よ」」

「のぞかねーよ!」

「「あははは」」

全く2人してからかいやがって。俺には、どうせ、覗けっこねえと思ってるな。

「ああそうさ、覗けねえさ、悪かったな!」

すると、背中から声がかかった。

「タケルの意気地無しー」

「もう、ヴァイオラったら」

ギギギと、音がしそうなほどぎこちなく振り向くと。そこには、アシャさんとヴァイオラが並んで立っていた。

「アー、コンバンハ」

「こんばんは」

「タケルさんこんばんは」

んー不味いな、想定外だ、あの2人なら丸め込めると思っていたんだけど、客観的に見れる人間がいるとなると、あの装備は不味いかもしれねえな。それに、アシャさんにはこの間迷惑を掛けまくった。情けない思いが蘇るが、何とか平静を装い挨拶をする。

「いらしゃい、今日は二人なのか?」

俺が尋ねると、ヴァイオラが。

「バトロス達とは別行動だよ。ねえタケル晩御飯一緒に食べない? アネモネも来るってさ、この間のタケルの様子を聞きたいんじゃないかと思って誘ったんだよ」

「あー、俺は忙し」

ちょっと困り顔のアシャさんをよそに、ガーネットは、俺に皆まで言わせず。

「くなんかないよねー、美女に囲まれて食事が出来るんだよ。どんな用事が有ったって、男なら勿論優先順位は決まってるじゃないか。ところで、ガーネットとケーナはどうしたんだい? 奥に入っていったけど」

俺は工房を指差しながら。

「二人なら、新しい防具を付けてもらってる所だ。さっき仮縫いが終わったんでね、フィッティングだ。ディフェンダーを参考に俺なりにアレンジしてみた」

「うわー、タケルが作る魔道具の鎧かい? いいなー、羨ましいな。ねえ、アシャもそう思うだろ? あたし達にも作ってくれない? 勿論あたし達からお金なんて取らないよね? そうしたら、この間のことは黙っててあげてもいいんだよ。アシャもそう言ってる」

「もう、ヴァイオラったら。何を言ってるの。タケルさんのお店は魔道具屋なのよ。売り物なのよ、それをタダでなんて。それに、この間のことを黙ってるなんて、まるで脅迫じゃないの。誰にだって苦手な物はあるんだから。タケルさん、気にしちゃだめよ、ヴァイオラの言う事なんか聞かなくていいんですからね。でも、晩御飯は一緒に行きましょう。アネモネも楽しみにしてるから」

アシャさんって優しいよな。これで付き合ってる人がいなきゃ俺にだってチャンスが有ったかもしれないのに。非常に残念でならない。

「分かった。一緒に行くよ。それに、防具はまだ試作段階だからテスターしてくれるんなら、タダでいい」

「え? 本当に? タダって言ったね? アシャも聞いたよね。やったね! タケル太っ腹だね  やっぱりタケルも美人には弱いねー」

「タケルさん、こんな無茶なお願いなんて聞くことないのよ?」

「いや、本気さ明後日にでも渡せると思うぞ。今言った通り試作品なんだよ、テスターしてくれるんなら大歓迎だ。ヴァイオラこそちゃんと着てくれよ」

「もちろんだよ」

と、そこで工房のドアが開いた、ガーネットとケーナの着替えが終わったようだ。

「タケル兄ちゃん、これはなに? こんな物あたし達に着せるつもりなの?」

「タケルが何を考えてるのかさっぱりわからんが、さすがにこれは無いと思うぞ」

振り返るとそこには、ディフェンダーヴァージョンタケル試作2号と3号を着た2人の姿があった。ガーネットが着ている2号は、いわゆるビキニアーマーだ。トップスはホルターネックの首紐がチョーカーのような幅広の首部分に繋がっている。魔結晶はチョーカー部分の正面中央に2つ並んでいる。片方は魔力供給用の魔結晶だ。ボトムはローライズで、腰の両側にそれぞれ2つずつ魔結晶が並んでいる。ガントレットは細身で肘を覆うくらいの長さ。グリーブはこっちも細身で太腿の半ばまでとなっておりベースの色は真紅でアクセントに金色を使っている。赤い髪のガーネットに良く似合っている。ケーナの3号はスクール水着だ。胸がツルペタだからビキニじゃずり上がっちまうかもしれないからな。スクール水着の両肩に制御用の魔結晶と魔力供給用の魔結晶を離して取り付け、腰の両側にはそれぞれ2つずつ魔結晶が付いている。グリーブは拳部分のナックルガードそれに肘当てがついている程度の軽めの物。足元はグリーブではなくショートブーツに少し厚手のオーバーニ―ソックス。色は白をメインに白銀をアクセントにした。スク水アーマーとでも呼べばいいだろう。それを見たアシャさんが。

「タケルさん、2人になんて物を着せてるんですか!」

と言い、ヴァイオラも。

「本当だよ。まるで下着じゃないか」

ガーネットが。

「どう言うつもりなのか聞かせてもらえるかな?」

アインは。

「ドウシタノ? 2人トモ似合ッテルヨ。かっこいいヨ」

それに反応したケーナは自分の格好を繁々と眺め。

「えー、似合ってるかな?」

「ああ、ケーナ似合うぞ。ガーネットも良く似合ってるじゃないか」

するとそこで店のドアが開いて、アネモネさんが入って来た。

「ゴメーン待たせちゃったかな......? ガーネットさん、ケーナちゃんなんで下着姿なの?」

「アネモネさんいらっしゃい。下着じゃないよ、これは俺が作った新しい防具さ、こう見えてもフルプレートメイルなんか比べ物にならないほどの防御力なんだぜ」

「こんな下着みたいな物がフルプレートメイルより防御力が高いだって? 何寝ぼけた事を言ってるんだい。寝言を言うにはまだ時間が早いよ」

ヴァイオラが言うと、ガーネットも。

「タケルが見せてくれた新しい防具は普通の革鎧だったではないか。なのに自分たちのこれは鎧とは程遠いじゃないか?」

「これで、どこを守ると言うんですか? どんな攻撃からも守れる部分なんか無いじゃないですか。私たちにもこれを着せるつもりですか?」

アシャさんがそう言いながら、冷たい目で俺を見つめる。あっ、アシャさんだけじゃ無いな、みんなの目が冷たい。

「あー、えーと、......。み、みんな、なーにを言ってるのかなー? なんで、この機能的なデザインが分からないのかなー?」

「「「「「機能的なデザイン?」」」」」

みんなの目が更に冷たくなったような気がしないでもない。嫌な汗をかきながら。

「そっ、そうさー、ダルニエルのディフェンダーの欠点を根本的に解決するためにこのデザインになったんだぞ。本当だぞ」

5人を代表するようにヴァイオラが。

「勇者の鎧の欠点を解決すると、こーんなにエッチなデザインになるってのかい? タケルのスケベ!」

「ますたー、本性ガ出チャッタネ。モットモ、今ニ始マッタ事ジャ無イカ」

「店長、不潔です!」

「ヴァイオラもアインも何てこと言うんだ。フィーアの一言が何気に一番堪えるぞ」

ヤバイ、ガーネットがパーティメンバーに入ったからって調子に乗りすぎたか? ここは俺の尊厳の為にも何とかして言い訳を考えないと不味い。アシャさんですら冷たい視線で俺を見ている。

「いいかみんな、ディフェンダーの欠点って何だと思う? そう、そうだ! フルプレートメイルって事だ!」

みんなの返事も聞かずに答える。

「夏は暑いし、冬だってちゃんとしたインナーを着ないと凍傷になっちまうだろ? 物理障壁がきちんと鎧の周りに働いているんだ。あんな風に全身をカバーする必要がどこに有るんだ?」

俺が聞くと。速攻でアネモネさんが。

「魔法攻撃を防御するためでしょ?」

「いやいや、魔法攻撃を防ぐだけなら、魔法障壁を張ればいいんだ」

「そうしたら、ヒールを掛ける事が出来ないじゃないですか」

「アシャさん、それは違うよ、ヒールなんて必要無いんだ。完璧な物理障壁と魔法障壁が張れるんだ、どこをケガするって言うんだ?」

「あ、確かにそう言われればそうですね」

「そうだろ? つまり、使いにくい上に、重くて、動きにくいフルプレートメイルの欠点を全て解決する解答が今回の、ビキニアーマーでありスク水アーマーって訳なんだ。どうだ2人とも? 軽いし動きを邪魔するようなパーツも無いだろ?」

ガーネットは。

「胸の部分がこの程度では、揺れてしまって邪魔になる」

と言って、体を動かし始めた。捻ったり飛び上がったり、胸がもう大変なことになっている。ケーナも体を動かし始めたが、君はツルペタだから動くまでもないはずだ。

「あー、だったら下を少し伸ばしてベアトップタイプにすればいいさ、本縫いでは修正するよ」

すると、アシャさんがため息をつきながら。

「はあー、基本的な部分は変更するつもりはないんですね?」

と言った時に、ガーネットの防具の仮縫いの糸がほどけた。大きく胸がはだけ......。

「キャッ!」

と言ったガーネットが両腕を胸の前で交叉させた。しかし、美しい胸のラインと綺麗なピンク色の先端を俺の目ははっきりと捕らえる事が出来た。脳内メモリーに永久保存しよう。ガーネットが腕を交差させるのと同時に俺の目の前が暗くなり瞳に激しい痛みが走った。

「いたたたた。目に指が入ったように痛い!」

「タケルさん、何を見てるんですか! そんな物見たら目が潰れてしまいます!」

「その声は、アシャさんか! 見なくても物理的に目が潰れる! 目に指が入ってるから!」

涙を溢れさせながら俺が叫ぶ。

「大丈夫です。ガーネットさんが着替えたら、ハイヒールで直します!」


「ふー、失明するかと思った」

アシャさんにハイヒールを掛けてもらってやっと落ち着いた。ガーネットとケーナは着替えて戻っている。

「ところでタケル? さっきの防具って、趣味全開のデザインなんだとは思うけど、他人にもあの姿を見せたいの? 信じられない」

アネモネさんがそう言うと、みんなが同意して大きく頷いた。あ、そう言えばそうだ。俺は見たい、誰が何と言おうと見たい! しかし、他の男にアシャさんのこの姿を見せるのか? ......絶対に嫌だ!

「あー、確かに。デザインに全く問題が無いとは言えない事も無いと言わざるを得ないかな? なんて思ったり思わなかったりするかもしれない」

アインが。

「ますたー、何ダカハッキリシナイネ。ソンナニミンナニ、ソノかっこうヲシテホシイノカ?」

「自分の前では着て欲しい! 欲しいが、他人に見せるなんてまっぴら御免だ!」

「「「「「はあー」」」」」

みんなが盛大なため息をついた。まあ、今回はガーネットのビキニアーマー姿+アルファが見れたんだ。それだけでも作った甲斐が有ったってことかな。......いや、ちょっと待てよ?

「そんなに嫌ならどうして2人とも着替えてきたんだ? 袋から出しただけでどんなデザインかなんてわかるじゃないか。着替えてきたって事は、実はそれほど嫌じゃ無いんじゃないか?」

と俺が言うと。2人が顔を真っ赤にしながら。

「なっ、なんて事を言うんだ! タケルがテストだからと言うから。自分は我慢して着てきたのだぞ」

「そっそうだよ。タケル兄ちゃんの為にあたしたち我慢したんだよ!」

「とか言って、本当は結構気にいってたりするんじゃないの? あたし達の分もああいった形のを作ってもらおうか? ねえ、アシャも本当は着てみたいんじゃないの?」

「「「ヴァイオラ(姉ちゃん)!」」」

アシャさんの顔も真っ赤になった。可愛いなーアシャさん。ヴァイオラ聞いたぞ、覚えてろよ。

「あははは、冗談だよ。タケル、普通に着れるデザインのヤツを頼むよ。もちろんタダだよね?」

「ああ、まかせてくれ。デザインから練り直すから少し時間は貰うけどな」

「え? タダなんですか? ディフェンダーより高い防御力の鎧が? タケルさん商売する気が有るんですか?」

「アネモネさんはそう言うけどさ、今までに無い鎧なんだぜ、テストもしないで売り出せないだろ? テスターとして意見を聞くためだよ。なんならアネモネさんもいるかい?」

「いいえ、私はギルドの職員ですからね、戦闘部隊にも所属はしているけれど、テスターが出来るほど使う機会は無いわね。残念だけど貰う訳にはいかないわ」

「そうか? 別に気にすることなんかないぜ、普段の生活で使ってもらえれば、別の視点から欠点もわかるかも知れないしさ、ギルドの受付って制服なわけじゃないんだし」

「絶対に嫌です!」

と、とても良い笑顔でアネモネさんが答えてくれた。

「さいですか」

「でも、タケル兄ちゃん。ディフェンダーが冬に凍傷になっちゃうって言うけど、あれだって冬は寒いじゃないか」

「動きの邪魔にならない程度に上に何か着ればいいんじゃねえの? マントとかさ、戦闘になったら脱げばいいし、それにーそうだな、温度の調整機能とか付けてみるか」

ふふふ、上に何か着たとしても、防御出来る範囲はさっきの防具だけだからな。攻撃を受けたら、上に着た服はちゃんとダメージを受けてしまうはずだ。上に何か着けている方が凄い事になるような気がするが黙っていよう。


店を後にして晩飯を食べに行った俺達だが、この間の墓守りの話題より、今日の防具の話題が中心になった。俺の趣味が悪いという事で、みんなの意見が一致したようだ。しかたないじゃないか。あんな格好してくれる人なんか向こうじゃ居なかったんだから。ビキニアーマーは男のロマンだと思うんだ! と力説したがだれも相手にはしてくれなかった。



翌日も俺はクエストを受けずに用事を済ます事にした。まずは、店を貰った時に設備を整えてくれたダンカンに相談して作業場部分の建て替えの相談をした。今のままでは天井が低くてロボが立ち上がる事ができないし、重量物用のクレーンも付けたいので更に高い天井が必要になる。敷地は十分に有るんだから、今までよりも少し広い作業場にしたいな。ダンカンは設備屋と言う訳では無く腕の良い大工だとダイロックに聞いていたので、そのまま頼んでしまった。その後は、鍛冶ギルドに行って鍛錬した鋼を注文した。これは、クレーンの本体やレールにする為に必要だ。手作業で鋼を鍛錬するので、本来ならクレーンなどの大きな物は作れる訳が無い、ただし、モデリングのスキルが有るんだから、有る程度品質を揃えた鋼を納品してもらえば、後は何とでもなる。組み立てにはゴーレムギルドに発注すればいいし、クレーンの可動部分は魔石を動力にしたオートマタで作る事が可能だ。クレーンは自作の馬車に付けたウインチと変わらない。ただ、釣り上げる物が重くなるだけだ。設備の手配が終わったので、発注を受けていたみえーるくんを作ってギルドに客への受け渡しと、集金を任せてきた。

「あーもう昼飯の時間になっちまったなー、飯にしよう」

シルビアさんの宿でBランチを食いながら、遠距離攻撃用の魔道具について考える事にする。カウンターに座りサンドイッチをパクつきながら考え始めた。

「弓じゃなー、ケーナの力じゃまだ強い弓は引けっこねえよな。とすると、やっぱり狙撃銃か自動小銃だよなー、リボルバーワンドが有るんだから、実体弾を使うやつがいいよな」

でも、オートマチックの給弾の仕組みとか知らねえんだよなー。それどころか薬莢の構造すら知らない。ましてやライフリングの事など全く分からない。使うための整備しかしたことが無いんだからな。リボルバーのシリンダーの動きとかは見たままだったから再現出来たけど。ボルトアクションのライフルならともかく自動小銃とか無理だ。だいたい、魔法が発達している世界なんだから高性能な火薬とか無いんじゃないか?高性能な火薬が手に入らないなら、ファイアーボールで弾丸を打ち出せばいいのか? 弾丸だけで良いんだから口径を大きくしても装弾数はそこそこ多く出来るか?

「魔物を相手にするんだから、5.56mmとか7.62mmじゃ話にならないよな? 威力からしたら、アンチ・マテリアル・ライフルが欲しいな、とすると12.7mmか。形から言ったら、ヘカートⅡ? いやバレットライフルM82? んーM95が良いな。全長が短くないとケーナには使いにくいだろう。あれはボルトアクションだけど、セミオートにしたいな。ガス式は無理だから、連射の間隔は長くなるけどオートマタで自動給弾にするか......」


店に戻り工房でアイディアを練る事にする。

「盗まれた時困るから、やっぱり記述魔法が使えないと撃てないようにしとくか? それに、持ち運ぶ時には軽量化の魔法がいるな。それから、弾丸を回転させる方法はどうするかな? 下手にライフリングとか刻んで引っ掛かっても嫌だしな」

問題点が山積みだな、いや、問題点の洗い出しすらちゃんとできないな。

「まあいいか、取りあえず、作ってみよう」

メインのフレームやバレルの材料はオリハルコンで作るか。重い方が安定するだろうしな。軽量化の魔法を使えばいいんだから、持ち運びには問題無いだろう。先ずはオートマチックのボルト部分の設計から始めねえとな。

「先ずは発射のシステムからだよな。ファイアーボールを記述するのはいいんだけど、そのままやると弾が入っててもいなくても作動しちまうよな。それだと単なる火炎放射器だよな、弾にも一部記述しておいて本体の記述式と弾丸の記述式を合わせて魔法が発動するようにしないとな」

メインとなる記述を本体に刻んで、弾には発動と、出力調整のパラメータを記述しよう。12.7mmなんだから結構書けるし、弾の種類によって出力をいじれば良いだろう。ボルト部分を作り記述を済ませたら、次はボルト部分の構造だ。手動でも動かせるようにしないと弾の変更が出来ないよな。本当は発射の時のガス圧とかでボルトを動かすんだろうが、機構が思い付かない。んー、トリガーを2段階にして、1段目で発射、更に押し込むと給弾装置が作動でいいか? ボルトの作動は、ゴーレムに使ったシリンダーとスプリングでいいよな。取りあえず不具合は後から順次修正していけばいいから、取りあえず形にしてみることにしよう。もっとも、この段階でやらかすと根本的な欠陥に気付かずそのまま進めちまって結局失敗作になっちまうかも知れねえけどな。


細々とした部品を作り、組み付けていく。メインフレームに機関部分を取りつけ動作確認をする。

「うん、滑らかに動くな。次はバレルだなー。ライフリングを刻むノウハウが無いからなー。種子島じゃねえんだからライフリング無しって訳にも......。アルトガイストの弓の射程ってどれくらいなんだろ? こいつは威力重視で、遠距離攻撃って言ったってそれほど遠くを狙う訳じゃ無いんだから、とりあえずそのまま撃ってみようかな?」

あ、バレットライフルと言えば、あのマズルブレーキは外せないよな。モデリングであの特徴的な形を成形しバレルの先端に取り付ける。

「よしよし、カッコイイじゃないか。見た目は大事だよなー、ついでにスコープはーと。みえーるくんの倍率を上げるか? まあ、今の所それほど飛距離は出ないだろうし、そのままのみえーるくんにレティクル付ければいいか」

照準用のみえーるくんを作って銃のフレームに取りつける。

「おー、カッコイイじゃないか。元のモデルが有るし、機能もイメージ出来たから完成も早かったな。最も見た目しか完成してねえんだよな。スタートラインに立ったってところか」

バレットライフルM95っぽい何かが出来上がった。考えたイメージ通りの形はしているが、実際に魔物を狩る武器として使えるようにするのはこれからだ。場合によっては最初からやり直しの可能性だってある。

出来上がったライフルは、ブルパップ式で機関部分はストックの中に入っている。そのせいで全長は短めだ、それでも1.1mくらいになっている。マガジンはダブルカラムにして装弾数は15発にした。薬莢がないからもっと増やせるかもしれない、この辺は実際に使いながら変更していけばいいだろう。

「弾はどうしようかな? 貫通力より打撃力重視の方が良いのか? 相手によって使い分ける必要が有るかな? テスト用に曳光弾作らなきゃならないけど、本物の曳光弾の仕組みがわからないからな、小さな魔石を使うしかないか? 勿体ないな」

使い捨ての弾丸に魔石を使うとか金が幾ら掛かるんだろう。とわ言え他に方法も思い付かないのでこれでいくしかないんだけどな。

「とりあえず30発でいいかな、実際に使う弾は火薬が無いから榴弾は無理だよな。徹甲弾とホローポイントにしよう対魔物用の弾丸なんだから相手によって貫通力重視か打撃力重視か切り替えればいいだろう。こっちは15発ずつかな」

弾丸を作成し、記述式を刻む。

「よーし、明日はテストだな」



今日も2人とは別行動だ。討伐クエストを受けると言っていたが、アインとフィーアがいるんだから全く心配はいらないだろう。俺は、ツァイに馬車を引かせ街を後にする。ライも一緒に連れてきた。馬車にはライフルを分解するための工具や、各種インゴットを積んできた。試射して改良してを繰り返す事になるだろうしな。

「ツァイ見晴らしのいい草原まで行ってくれ」

「はい、主様」

「このライフルのテストをするから、ツァイには周りに気を配っていて欲しいんだ」

「お任せください。魔物の1匹や2匹わたくしの敵ではございません」

「あははは、そうだな。よろしく頼むよ。ライは弾の飛距離や着弾位置の確認をして欲しい」

「了解だ店長」

しばらく走るとちょうどいい草原に着いた。

「よし、この辺りでいいな」

馬車を止め、ツァイを馬車から解放する。馬車の荷台からライフルを降ろし準備を始める。

「こいつの名前どうしようかな? アンチ・モンスター・ライフルでAMRで良いな。こっちの世界にはアンチ・マテリアル・ライフルなんて無いんだし。あ、こいつはライフリング刻んで無いからライフルじゃなくて、マスケットになるのか? ......まあ、その辺は雰囲気でいいな」

ネーミングセンスの無さはデフォルトだ。曳光弾を詰めたマガジンを装填し準備完了。キャリングハンドルに付いた魔石に魔力を流すと軽量化の魔法が発動する。軽くなったAMRを持ち上げちょっとだけ地面が盛り上がった場所を探した。バイポットを下げて地面に置くとシートを敷いて伏せ撃ちの体制をとる。

「おっと、インカムと物理障壁の準備をしないとな。暴発しても本体は吹き飛ばないだろうけど念の為だな」

ディフェンダーだけでなく頭にも物理障壁を展開しさらに魔法障壁も展開する。そしてインカムを使って2人に話しかける。

「ツァイは周辺の警戒を頼む。魔物だけじゃなくて冒険者なんかにも注意してくれ。ライは弾の行方と飛距離を確認してくれ、どこに飛んで行くかわからねえからな」

「はい」

「了解だ」

引き金を2段目まで引けば弾は自動装填されるが、初めてなのでボルトを引きゆっくり戻す。マガジンの1発目が装填されていく様子を確認してから射撃姿勢を取る。スコープを覗き込み適当な目標を探す、500mくらい先だろうかちょうどいい大きさの岩を見つけると中心にレティクルのクロス部分を合わせる。

「さて、行ってみますか」

息を吐き出し完全に吐き出した状態で息を止める。そして引き金を絞るように引く。

「ズガン!」

と言う大きな爆発音と共に、ストックから炎が噴きあがった。

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