ここはどこ?チュートリアルステージ?
このあたりの展開はさらっと流したいんですが、そこそこボリューム出ちゃいますね。
「起動確認しました」
の文字をモニターで読んだと思ったら、いきなり視界が変わった。
草原のなかのちょっとした丘の上に俺は座っていた。
「えーと....ここはどこ?」
ゲームのキャラ設定してたはずだ。
「え?魂魄分裂?アルトガイストでの身体作成?ステータス転写?スキル転写?魂魄・・挿入....」
「って、ファンタジー世界のゲームにしちゃ、ダメダメな演出だと思ったけど?」
「これって、ラノベでよくあるやつか?」
「異世界転移ってか?」
転移というか、ファンタジー世界に体を作って2つに分裂させた魂を入れて.....、馬鹿らしい。
「正気なやつの発想じゃないよな、よっぽど気が動転してるってことか」
とりあえず立ち上がり周りを見渡してみる。
「右手遠方に大きな森と高い山波が見える」
「前と左手はどこまでも続く草原だなー、後ろは......ん?あれは城か?」
はるか遠くに尖塔と西洋風の大きな屋根が見える。
「異世界かはともかくとして、家の近所じゃねーな、こんなに広い平原なんかあり得ないし、あんな城なんて、写真以外で見たことねーしな」
さーて、どうしたもんだろ、気がつけば、服がジャージじゃなく、少しごわごわした布の上下に革の靴になっている。
「初期装備装着かー...腰のベルトには....剣と、巾着、胸のポケットには?カード?身分証明か?」
名前と年齢、職業が書かれたクレジットカードの倍くらいの大きさのカードがあった....職業:ムグミン村の村人....どこの村だよ!
よく見ようと、何気なくカードの右下をつまむと、スキルが表示された....表示された内容は.....やっぱりさっき設定したキャラクターになった.....
「いやいや、馬鹿か俺は、頭の中がゲームに侵されてるぞ」
「そうだ、巾着の中身はーと、金貨2枚に大きな銀貨3枚小さな銀貨6枚に銅貨2枚小さな銅が.....12枚か」
頭の中に、貨幣:小銅貨100000枚=銅貨10000枚=小銀貨1000枚=銀貨100枚=小金貨10枚金貨1枚、金貨100枚=白金貨とうかんできた。
「基本10枚で次の貨幣に変わるわけか、わかりやすいな白金貨には縁がないだろうな」
「小銅貨1枚の価値が分からないと意味ないんだけどなー」
えーと、小銅貨1枚(1イェン)=10円(あくまでも、目安)か。
「....わかりやすいようで、紛らわしいな....ってか知識が浮かんでくるの気持ち悪いな」
「えーと、この金貨は小金貨なんだろうな、23632イェン、236320円相当ってか、まー物価なんか違うんだろうから、目安ってことだろうな」
「そして、剣か、刃渡り60cmの両刃の直剣....ショートソードってやつかー、日本刀の方が使い慣れてるんだがねー」
スキルは使えるのか?
「あー、どうやるんだ?」
なんとなく、材料に触れたまま、完成品をイメージし「モデリング」と念じればいいと頭にうかんできた。
「ソーデスカ」
日本刀を強くイメージし「モデリング」と念じると、ショートソードが日本刀の形になった。
「おーーーー日本刀......の形はしてるけど、なまくらだな」
「ガッカリだよ!期待した気持ちを返してほしいよ!......元になった素材の材質が変わるわけじゃないってことか、粗悪品だな、あのショートソードは」
鞘も変形させてから腰にさした。
「信じられない事だけど、作ったキャラの中に入って変な世界に来ちまったってことだよな、VRMMOってのはこんな感じになるのかねー、なろうならデスゲームってところ...か...、不吉なことを考えるのはやめよう、フラグが立ちそうだ」
もう、現状を受け入れている自分に気が付いた。
俺ってチョロイな。
さーて、他のスキルは使えるかね?
総合剣術、格闘術、槍術、弓術、手裏剣術、家事は既得スキルなのでアクティベート。
モデリング、記述魔法はアクティベート。
オートマトン、鍛冶、ゴーレムは現在非アクティベート。
なるほど、剣術のLVが変に高いと思ったら、俺の実力ってことかよ。
非アクティベートねー、能力が限定されてるってことか。
ここはチュートリアルステージか?
「記述魔法は使えるのか?」
試しに地面に剣の鞘で魔法陣を書いて、魔力を流すイメージをすると水が噴き出した。
「おー、魔法だ!ワクワクするなー」
しばらく、色々と魔法を使ってみた、剣と魔法の世界に来ちまったことを改めて実感した。
とりあえず、現状は理解したことにして、城っぽい何かに向かって歩き出した。
「へー町の外壁かー、でかいなー、城塞都市ってやつかな―」
しばらく歩いていると、大きな外壁に囲まれた町が見えてきた高さ5mほどの頑丈そうな石壁に突き当たった。
中には町があるんだろう。
壁を左手に見て、壁にそってしばらく歩くと、大きな門が見えてきた。
町に入る人達が並んで、鎧を着けた兵士がチェックしているようだ。
最後尾に並んでしばらく待っていると、俺の順番がまわってきた。
「身分証明を出して、持っていないなら詰所で仮証明書を発行するぞ」
と兵士。
胸のポケットから、カードを取りだして右下をつまみ、兵士に見せると。
「名前は、タケル シンドーウ、犯罪歴はないな、スキルLV凄いことになってるな、お前さん何者だ?」
「祖父ちゃんと、村はずれの家で修行しながら育ったんですよ、祖父ちゃんが強すぎて、まったくかなわなかったんで、自分が凄いかどうかはわからないですね、先日祖父ちゃんが死んだんで、村を出て仕事を探しに来ました、それから、タケル シンドウです」
「なるほど、冒険者になりに来たってことか、街の住民じゃないから、入るのに税として銀貨2枚だ、冒険者ギルドに登録すれば、報酬から引かれるようになるからいちいち払う必要は無くなるがね」
名前は流された。
やっぱり冒険者ギルドあるのかよ!テンプレすぎだな。
「では、これ銀貨2枚です、すみませんが、冒険者ギルドってどこにあるんでしょう?」
「よし、入っていいぞ、冒険者ギルドはこの南北通りをまっすぐ行って、東西通りとぶつかった十字路の右にある大きな3階建てだ、アリステアの街にようこそ」
そして、兵隊さんは
「悪さするなよ、ははは」
と言って、門を通してくれた。
街の中に入ると、石造りの建物が通りの両側に並び、まさに、俺がイメージする中世ヨーロッパ感がする。
「しかし、日本語通じるのは助かったよなー、しかも、看板を見る限り日本語だよなーこれ、読み方がまったく違うとかないよな?」
「しかし、この街並みに日本語の看板とか、違和感バリバリだな」
しばらく歩くと冒険者ギルドが見えてきた。
中に入ると、市役所みたいな感じだ。
掲示板にクエスト情報が貼りだされていたり、飲み食いできる座席があったりするけど、カウンターに職員が座っているところなんか、まるで、小説の冒険者ギルドそのものだな。
カウンターの列に並んでしばらく待つと。
「ようこそ、冒険者ギルドへ、今日は新規登録ですか?」
と受付の男の職員に声をかけられた。
「はい、新規登録はここでいいんですか?」
なんで、男?ここは美人のおねーさんだろ、仕様ってやつだろ?と思ったが、現実なんてこんなもんだよな。
.....現実か......。
「では、身分証明を提示してください。そしてこの登録用紙に必要事項を記入してください」
俺は、カードを渡して、登録用紙に名前やら年齢やらスキルを記入した。
職員はカードと登録用紙を確認すると。
「スキルが凄いことになてますね、活躍を期待していますよ」
帰って北カードの職業欄を見ると、(職業:冒険者ランクG―)に変わっていた。
その後、冒険者ギルドのルールや仕組みの説明を受けた。
要約すると。
冒険者ギルドはクエストの斡旋をし、手数料を取ること、素材の買い取りと販売利益で運営されていること。(素材はできればギルドに売ってほしいとのことだ)
クエストには様々なものがあり、街中のお使いから、薬草採取、護衛、盗賊や魔物の討伐その他、国からの依頼なども受けること。
失敗やリタイヤすると、違約金が発生したり、ランクが下がったりすることもあること。
国単位に独立した冒険者ギルドがあり各国によって国との関係はまちまち、全ギルドを統合することは決定しているが、いまだ実行されてはいない。
戦争時には、国からの依頼として戦争に参加することはある。強制依頼となるが、違約金を払えば断れること。
冒険者ランクはG-~A+さらにSがあり、クエストクラスはG~S(+-は付かない)自分のランクの1つ上のクラスまでのクエストは無条件で受けられるが、それを上回るものも、保証金を払えば受けられること。(ランクG-の俺はFクラスクエストまでOKってことだ)Sクラスは名誉クラスで、今は1人もいないらしい。
ランクごとの規定数のクエストをクリアすれば上のランクに昇級できること。
最低クラス指定の依頼は保証金を払っても受けられないこと。
などなど、細かな説明を受けて登録が完了した。
「以上が、説明となります。おわかりいただけましたか?」
「必要なことは.....細かなことは、また聞くかもしれません」
「みなさん、そんな感じですよ、今日はクエストを受けていきますか?」
「今日は、疲れているので、宿をとって休みます」
どっさりと、疲れた、主に精神的に。
ついでに宿を紹介してもらって、明日から依頼を受けることにした。
「え-と、『金色の羊亭』ここだな」
宿に入ると、カウンターには、厳つい顔のおっさんが.....。
女の子成分が足りないと思うんだ!!
「泊まりかい?食事かい?」
「泊まりなら、1人1泊500イェンで、朝晩2食つきだ」
1泊5000円くらいか。
「とりあえず、3泊で」
「おう、じゃー前金で1500イェンだ、朝は1の鐘から2の鐘まで、晩飯は7の鐘から8の鐘が鳴るまでの間に注文してくれ
「今は、どのくらいなんだい?村から出てきてこの街には今日付いたばかりなんだよ」
「なるほど、朝6時に1の鐘が鳴って、2時間置きに鐘が鳴る、7の鐘ってのは6時だ、もうそろそろ鳴り出すはずさ」
「ありがとう、一度部屋に行ってくるよ」
「じゃーこれが鍵だ」
俺は鍵を受け取ると2階に上がり部屋に入った。
6畳ほどの部屋にベッド、物入れ、小さなテーブルに椅子があるだけの部屋だ。
「まーこんなもんか」
俺はベッドに横になると、今までのことを考えていた。
「あの表示を見ると、元の世界にも俺が残ってるってことだよなー、そうすると帰る場所は無いってことかー」
思ったより落ち込んではいないようだ。
「すると、この世界で生きていかなきゃならないわけだけど、言うほど簡単に覚悟なんてできないよなー」
「なるようにしかならないか」
すると、鐘が鳴りだした。
宿の晩飯は、可もなく不可もなくと言ったところだ、修行によっては、サバイバルのようなこともやらされたので、大抵のものなら美味しく食べることができるしな。
冒険者を相手にしている宿らしく、量は満足できるものだった。
晩飯の後はすることもないので、早々に寝ることにした。
さーて、明日は初のクエストだ。
次話から、クエストが始まります。