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出来なかったんじゃなくて、しなかったんだよ?

だらだらとした会話の回になります。こんな話になっちゃいました。

シルビアの宿の食堂は7の鐘から始まる。まだ、それには時間があるので食堂には俺達しかいない。険しい顔のまま、アネモネさんが話し始めた。

「タケルさん、わたし達が聞きたいのは昨夜の事です。タケルさん、晩ご飯はどこで食べましたか?」

「えーと、昨夜なら、ギルドのすぐ側の「戦士の安らぎ亭」だよ? ほら、前に4人で食事した店だ」

「1人で行く店では無いですよね? あそこ」

「ああ、騎士団一番隊の隊長をしている、ガーネットさんと一緒だよ」

アネモネさんの話をアシャさんが引き継ぐように。

「いつの間に、騎士隊の隊長となんか知り合ったんですか? しかも、2人きりで食事をするような仲になってるなんて」

「この前、領主のところにギルド長に連れられて行ったんだけど」

「お店をもらったって言ってたときですね? あの時領主邸でどんな事が有ったんですか?」

「あの時は、領主の部屋に通されて、部屋に入った瞬間後ろから斬りつけられてさ、やっぱり、暗殺かって思ったな、で、そいつを一本背負いで床に投げつけて、肘で肋骨を叩き折ったんだけど、それが騎士団長のダンバルドだった」

「きっ騎士団長の肋骨を折ったんですか!」

アシャさんが俺の話に割り込んできた。みんなも驚いている。

「ん? ちゃんとハイヒールで直したよ」

「直せば良いってものではないでしょ?」

「俺の実力が見たかったって、笑って言ってたぞ」

アネモネさんが、あきれたような、関心したようなどちらとも取れる口調で。

「さすが、騎士団長と言うところでしょうか」

「その後に、領主の護衛が剣を抜きそうになったから、近づいて、剣を奪いながら背負い投げで放り投げたんだ、その護衛がガーネットさんだった」

「ガーネットさんの事は放り投げただけなんだね。騎士団長とは扱いが違うんじゃない?」

今度はヴァイオラが聞いてきた。

「ん? そりゃそうだろ、背負った瞬間にお姉さんだって気が付いたからな。ケガさせたら大変じゃないか。受け身が取れるように投げたさ」

俺が、当たり前のことのように言うと。アシャさんが。

「自分が暗殺されるかもって状況でそこまで考えたんですか?」

「いや、考えたって言うんじゃなくて、感じたかな? 背中に『むぎゅー』って......あっ」

やばい、喋りすぎた。周りを見渡すと。みんなが俺を呆れたような眼差しで見ると。

「「「「「はあー」」」」」

と、ため息をついた。アリアちゃんだけは小声で。

「ガーネットさんて、大きいのかな?」

俺は、聞こえなかった振りをして、話を続けた。

「その時に奪った剣で、領主に斬りかかったんだけど」

そう話すと何人かから悲鳴のような声が上がった。

「「「「はあー?! 御領主様に斬りかかった!」」」」

それには答えず、話を続ける。

「でも、ギルド長が魔法で障壁を張ってて届かなかったから、ギルド長に剣を投げつけて集中を乱して、障壁を消してから領主のザナッシュ様の腕を決めて首に腕を回して「動くと折る」って言ったんだ。暗殺か俺を試してるのか判断出来なかったからそこまでしちまったけどちょっとやばかったよな、あれは」

ヴァイオラが。

「もう、なんて言っていいかわからないね」

ケーナは。

「タケル兄ちゃん、よく生きて帰ってこれたね」

シルビアさんは。

「何とコメントしてよいやら」

アネモネさんが。

「あの時に、そんなことがあったんですか。ギルド長よく死ななかったですね」

「俺を試しているのかもって思ったからな、人殺しは不味いかなとは考えたよ。剣は握りの方が向くように投げたし、団長も肋骨で止めたんだ。やろうと思えば、剣の刃を向けてギルド長に投げることも、団長と領主の首の骨を折ることも出来た」

アシャさんが。

「領主や騎士団長の首なんか折ってたら大変な事になってましたよ。領主邸で暴れるだけでもとんでもない事なのに」

「だって、報酬の話で俺をおびき出して、暗殺するつもりかとも思ったからなー、実力でも試すつもりかとも考えたけど、そんな気楽には考えられなかったな、領主がどんなヤツかなんて知らねえからな」

アリアちゃんが聞いてきた。

「タケルさんは、ガーゼルの街を救った恩人なんだよ? 御領主様が暗殺するなんてどうしてそんなことを考えたの?」

「領主にしたらさ、災害級の魔物の進行を1人で止めちまう化け物みたいなヤツが自分の街にいたら、そいつに危険は無いのか? 街を襲う気が無いのか気になるだろ? 手遅れになる前に始末するって事は考えられる。まあ、実力が見たかったって言ってたけど、どんな人間か見たかったってところだろうな。だれも殺さなかったからな、一応安心したのかも知れないな」

「タケル兄ちゃんって、そんな難しい事も考えるんだな」

「ケーナは、俺のことをどんな風に思ってるんだ?」

「えーと、お姉さんが大好きな、ちょっと変わってるけど、強くて優しい兄ちゃん?」

「ケーナ、褒めるか貶すかどっちかにしてくれ、どんな顔したらいいかわからなくなる。そして、お姉さんなら誰でも良い訳じゃなくて、俺が好きなのは」

「美人で、可愛くて、やさしくて、気立てのいいナイスボディなお姉さんでしたよね」

アネモネさんが良い笑顔で答えてくれた。ケーナはあきれたように。

「タケル兄ちゃんて......、アシャ姉ちゃんみたいな人がいいの?」

ケーナの一言で、その場の空気が固まった。

「ななななーにを言い出すのかなー。ケーナくーん? 俺みたいなのをアシャさんみたいな素敵な人が相手にする訳ないだろ」

最後の方は小声になっちまった。アシャさんの方は、見れなかった。アリアちゃんが、自分の胸を押さえて。

「タケルさん! あたしだって、いつまでもこのままじゃないんだからね!」

俺は話題を変える為に。

「で、その後に領主から店をもらう話になった。それから、ギルド長に貸しを返せって言って、戦争参加の強制依頼の免除をもらった。領主も了解済みだ」

あきれたようにアネモネさんが言った。

「戦争時のギルド強制依頼を免除だなんて。そんな物よくもらえましたね」

「ガーゼルの街に拠点を置いている間だけだよ。店が有るんだから拠点を移す気は無いけどな。ケーナの後見人になって冒険者にしちまったからな、ケーナが人を殺すところも、殺されるところも見たくないって言ったらわかってくれた。普通の依頼としてなら俺は受けるかもって言ったら、守りたいと思える国にすれば良いだけだって言ってさ。あの領主様なかなかの人物だよな」

「タケル兄ちゃん......」

シルビアさんが。

「ケーナちゃん、やっぱり優しいお兄ちゃんね」

「うん」

ケーナが嬉しそうに頷いた。

「俺はやさしくなんか無いですよ。甘いだけです。やさしいヤツなら、ケーナの将来を一緒にもっとよく考えたでしょう。俺は、あんなに、簡単に後見人になんかなっちまってケーナを冒険者にしちまって、今更人殺しはさせたくないなんて言ってる。本当に甘っちょろいですよ俺は」

周りを見ていられなくて、俺はうつむいた。

「あたし嬉しかったんだよ。村では邪魔者で、この街にも居る場所が無くて、冒険者にもなれなくて、どうして良いかわからなくて、あたしのことなんか誰もいらなくて。だけど、タケル兄ちゃんだけはパーティに入ってくれって言ってくれて。家族だって言ってくれて。本当はあたしなんかいない方が、アインと一緒の方が楽にクエストだってできるのに......。ふわあーーん」

ケーナが泣きながら、俺に抱きついてきた。正座で足がしびれていた俺は、ケーナと一緒になって床に倒れた。その拍子に後頭部を床にぶつけてうめきそうになったが、なんとか耐えた。男の子だからな。そしてケーナの頭をなでながら。

「俺だって、1人ぼっちだったし。今思うと、寂しかったんだよ、だれかと一緒に居たかったんだな。俺にはケーナが必要だったんだよ。ケーナが男の子の振りをしてくれてたおかげで、パーティに誘えたんだ。弟ができたみたいで楽しかったんだぞ。まあ、妹だったわけだけどな。あははは」

アネモネさんは、少し涙ぐみながら。

「さすがに、成人するまでは戦争になんか行かせませんが、そうですね、タケルさんが強制依頼の免除をもらった気持ちはよくわかります。後見人制度なんて、冒険者が自分の身内を一緒にクエストに連れて行く時くらいしか使わないんですよ普通はね」

「そうだろうな。よっぽどの覚悟がないと成れないよな。そいつの人生いっしょに背負うんだからな。俺は覚悟を決めたつもりだったんだけど。改めて、覚悟を決めるよ。ケーナ、一緒に頑張ろうな」

ケーナは俺の胸で何度も頷いた。


ケーナが泣きやむのを待って。ちょっと場を和ませようかと思って。

「えー、ところで、後頭部が割れるように痛いのですが。どなたか、ヒールしていただけませんでしょうか?いえ、いえ、ダメなら自分でやりますですが?」

アシャさんが、少し目を潤ませたまま、にっこり微笑んで。

「あら、まだ割れていませんから、しばらく我慢してください。話がそれてしまいましたから、本題に入れていませんよ?」

ケーナが俺から離れると。

「アシャ姉ちゃん、だめなの?」

お、ケーナいいぞ! もっと言ってくれ!

「ふふふ、ケーナちゃんのお願いじゃ聴かない訳にはいきませんね」

と言って、立ち上がり、スタッフを掲げて。

「大いなる光よ我の願いにより癒せ!」

すると、頭の痛みが引いた。

「ありがとう、アシャさん。助かった」

アシャさんに礼を言うと。にっこりと微笑んで。

「いいえ、どういたしまして。でも、正座は続けてくださいね」

「ハイデス」

すると、ヴァイオラが。

「さて、話が長くなっちゃったから。食堂が始まる前に単刀直入に聴くよ。あたし達が今日来た訳はね。今日になって冒険者ギルド内を駆けめぐった噂の真偽を確かめたかったのさ」

「ん? 噂ってどんな? 俺が何かやっちまったのか?」

ヴァイオラが、周りのみんなを見渡しながら。

「正に、やっちまったのかって問題なんだけどさ」

「もう! ヴァイオラったら」

アシャさんが赤くなって言った。あ、アネモネさんも赤い。

「殲滅の白刃が、昨夜「戦士の安らぎ亭」でさ、領主騎士団の鬼百合と綽名される一番隊隊長ガーネットと、食事をして、いい雰囲気になってたとか。そうかと思えば、店の中で二人で抱き合ってみたり。酔わせたガーネットをお姫様抱っこでお持ち帰りしたて噂になってるんだよね」

......。あれが、そんな風に見えるのか? いや、待てよ、そんな風にしか見えないだろ、客観的には。

「一番隊のガーネット隊長と言えば、剣の腕は騎士団長と互角、今まで浮いた噂の一つもなかった堅物で、その美貌と髪の色、剣の強さから鬼百合って言われてるんだよね。しかも独身だし」

なるほど、鬼百合か。うん、そのイメージはわかるな。騎士隊の詰め所に行ったときの視線はそのせいだったのか。やっぱり結婚してないよな。騎士団の女子寮に居るんだしな。なんて事を考えていると。

「で、タケル。その噂は本当なのかい? お持ち帰りしちゃったのか? ん? お姉さん達に正直に言ってごらん?」

「側から見たら、その通りに見えたと思うが、実際には全くそんな事は無かったな」

アシャさんが。

「本当ですか! 本当に何も無かったんですか?」

と聴いてきた。

「ああ、ガーネットさんが俺に稽古をつけて欲しいって話だったよ」

アネモネさんが。

「稽古をする話がどうやったら、抱き合ってたり、お持ち帰りの話になるんです?」

「そんなこと知らねえよ。昨日の昼間合った時に、二人で合いたいて言われて、「戦士の安らぎ亭」で一緒に晩飯を食べたんだよ。ガーネットさんは、稽古の話をするまでは、普通の世間話と言うか近況を話してたんだ。ワインを何杯か飲んだ後に、稽古の話をしてきたんで、ケーナと一緒に毎朝やってるから一緒ならいいって言ったんだよ」

ヴァイオラが。

「ふむふむ、それで、酔っぱらったガーネットをお持ち帰りしたって訳だね」

「違うし、話は最後まで聞けよ。いいか? 俺がそう言ったらガーネットさんが、テーブルを回り込んで俺の手を握って」

思わずと言った風に椅子から立ち上がったアシャさんが。

「手を握ったんですか!」

「アシャさん、落ち着いて、ガーネットさんは、ありがとうって言って手を握ってきたんだ。単なる握手だ。そうしたら、彼女は酒が弱かったらしくて、ふらついて俺の方に倒れ込んできたから、転ばないように抱きとめただけだよ。すぐに彼女が離れようとして、今度は後ろに倒れそうになったから、俺はあわててもう一度抱きとめたんだ。そうして椅子に座らせたら寝ちまったんだ。騎士団の女子寮に住んでるって言うから、抱き上げて送っていったんだ。寮長にあずけて返ってきただけだ。それだけだよ。お持ち帰りなんかしてねえよ」

「タケルさん! 酔っぱらいに抱きつかれそうになったら、避ければ良いじゃないですか。そうして転んでケガをしても自業自得です。わざわざ、二回も抱きとめる必要は無かったはずです。騎士団の隊長ならそのくらいでどうにかなるはず無いです。日頃から鍛えてるんだからケガなんかしません。しかも、酔っぱらって寝てしまった人を抱き上げて送るだなんて! そのまま、放っておけば良いんです!」

「アシャさん、それはちょっとどうかと思うよ? 見ず知らずな人じゃないんだしさ」

「いいえ、タケルさんは甘いです。酔っぱらいなんて「アシャ落ち着きなよ、話が進まないからさ」あ、そうですね。ごめんなさい、つい興奮して」

ヴァイオラに止められて、アシャさんが口をつぐんだ。俺は話を続けて。

「さっき話したみたいに、俺に投げ飛ばされて色々と思うところが有ったんじゃねーかな? ガーネットさんは、騎士団でも隊長になってからは負け無しだって言ってたからな。俺の習った剣術は対人戦専門だけど様々な状況を想定した戦い方をするんだ。あの時みたいに剣を持っていなくてもそれなりに戦う方法はある。そんなところが新鮮だったんじゃないか? 騎士としてどんな状況でも対処できるようになりたいって所じゃないかと感じたな。どうせ、ケーナと修練しているんだから、ここに1人くらい増えても平気だし、ガーネットさんの期待するような成果が出るかどうかはわからないけどな」

アネモネさんが。

「そんな話をためだけに二人で食事をして、お酒まで飲んだんですか?」

「うん、結果からすればそうだな。ガーネットさんは、なんだか話を切り出し辛いみたいだったよ。俺が、年下だからかも知れないな。騎士団の隊長が、俺なんかに稽古を付けてくれなんて言い出すんだからな、自分を鍛えるためなら、こんな若造にも頭を下げられるんだから凄い人だよな」

「そうですね、たしかに、なかなか出来ることでは無いかも知れませんね。話を切り出すのにお酒を飲んで、しかも酔いつぶれたりしなければもっと良かったんでしょうけどね。ふふふ」

「なかなか思ったことが言えない所なんかは、好感が持てるところだな」

そこでまたアシャさんが激しく突っ込んでくる。

「好感ですか! タケルさんはガーネットさんみたいな人がタイプなんですか?」

「そうじゃなくて、人として好感が持てると言いたかった訳でして......」

ヴァイオラが。

「好感を持てる大人の女性をお姫様抱っこして、タケルとしてはどうだったのさ? 何も感じなかったとは言わさないよ」

その言葉に昨夜のことを思い出した俺は。

「騎士なんてやってるから、もっとこう筋肉質で硬いのかと思ったら、柔らかくて......、なっ、ナンテコトハマッタクオモッテナカッタデス! ハイ」

ヴァイオラはさらに突っ込んでくる。

「ガーネットは寝てたんだろ、何もなかったのかい?」

「え? ナニモナカッタデスヨ」

「で、何があったんだい?」

「えー、送る途中で寝ぼけて首に手を回して頭を俺の胸に預けてきまして、とてもいい匂いがしました。でも、何も出来なかったぞ!」

少し間をおいてから。

「「「「「はあー」」」」」

なんで、みんなでため息なんか付くんだよ。どうせ何にも出来なかったですよ。

「なるほど、タケルだし、そんなところだろうとは思ったけどね」

と、ヴァイオラ。

「何も出来なかった......」

これは、アシャさん。

「しなかったんじゃなくて、出来なかったんですね」

そして、アネモネさん。

「んー、タケルさんだし、そんなところか」

アリアちゃん、俺だしって、ひどくない?

「やっぱり、タケルさんはいい人でしたね」

シルビアさん、いい人って、やっぱりって。俺に何を期待してたんだ? 追求は終わったみたいだけど、なんだか、ひどい言われようだ。いくら、ガーネットさんが寝てたとはいえ、どうこうしようなんて、彼女いない歴=年齢の俺にはハードル高すぎる。正座から、膝と両手を付いた姿勢に移行した俺は。

「おーあーるぜーっと」


その後、みんなから解放された俺は、部屋で、店から持ってきた鋼のインゴットと魔石を使って明日の稽古で使う剣を作っていた。

「真剣で打ち合う訳にはいかないしな。かと言って、竹刀じゃ軽すぎる。鋼で剣を作って、物理障壁を張ればいいかな?」

冒険者ギルドで訓練している連中は、備え付けの木剣を使ったりしていたんだけど、あれじゃ重さが違うし、たとえ木剣でも当たり所によっては大怪我をするので、思い切り打ち合う訳にはいかない。やっぱりケガを気にせずに、本気で打ち合った方がより成果が出るはずだ。

「ガーネットはロングソードだったよな」

ガーネットが普段帯剣している剣を思い出しながら、鋼のインゴットをモデリングで加工していく。やっぱり鍛冶スキルが高いせいか見ただけだった剣だが、同じようなバランスで再現できたと思う。そして魔石に魔法陣を刻んでゆく。物理障壁のパラメータをいじった物で、刃の周りに弾力を持たせた障壁を張る。これで、骨折などは防げるだろう。ただし、これだけでは剣の重さがあるから当たれば衝撃は伝わってしまうので、大怪我にはならないだろうが、打撲くらいはするだろう。そこで、当たった場所を中心にヒールを掛けるような魔法陣を加えた。さらに、魔石に魔力が十分残っているときは、障壁が青い光を出し、残りが少なくなれば赤い光になるように魔法陣を加えていく。これで、当たる寸前で障壁が消え、鋼の剣がそのまま当たる事もないだろう。魔法陣は全てマイクロ文字なんかより細かく描いた、これは、複製防止だ、この剣は売り物になるかも知れないからな。その魔石を剣の握りの部分に装着する。

「よし、これでいい。次は自分の分だな。それから、ケーナにも作ってやろうか」

俺には、打ち刀でいいか。ケーナには俺がこの前作った脇差しでいいだろう。脇差しは、ケーナが討伐に行くときに渡そうと思っている。


練習用の剣を作り終わった俺は、ベッドで考え事をしていた。

「さっきはえらい目に合ったな。まあ、ケーナにしたことを、アシャさん達に見られたのはまずかったよな。しかし、ガーネットさんとのことがそんな噂になってるとはな。何もなかったとは言え、ガーネットさんには悪い事したかな? 騎士団とかで処罰とか受けないよな? もっとも、酔っぱらって寝ちまうほど飲んだのは俺のせいじゃねえけど」

さらに別のことを考える。

「ケーナがアインを連れて行ってることを引け目に感じてたんだなー。......うん、もう1体戦闘用ゴーレム作るか。せっかくだから、ハイブリットにするか。アインみたいなのをもう1体作ってもな。また、色々ともめそうだしな、全く違ったゴーレムの方がいいだろうな。ロボの小型版みたいな形のやつ作ってみたいな」

アインが2人になるとか、無いな、それは無いな。

「Aクラスの魔核は、ロボ用に取っておきたいからな、今度はCかBクラスの魔結晶を連装で使ってみたいな。ツァイでDクラスの魔結晶3連装だからな」

Dクラスの魔結晶3連装だとアインのCクラスの魔結晶よりは魔力の総量は少ない。でも、アインは体を動かすためだけじゃなく、体を形成するのにも魔力使ってるからな、力なんかはツァイの方が強いんじゃないか?

「アインの強化もしてみたいよな。ゴーレム核に使っている魔結晶を変更する事は出来ないんだから」

Bクラスの魔結晶に転記する訳にはいかないんだから、強化するには今のゴーレム核に魔結晶を連結する形になるんだろか? そんなこと出来るんか? ミスリルでつないでみるかな?

「なんか、色々とやりたいことがあるな。店で売る物も考えないといけないしな。とりあえず鍛冶屋からになるか? 明日は、Bクラスの魔核を取りに行くか。着々と、巨大ロボに向かって進んでるような気がしたり、しなかったりするな。もっとも、資金と言う壁はまだまだ厚い、分厚い」


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