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それって誰のこと?

刀鍛冶始めました。

ゴーーーーン

1の鐘が鳴った。

「うーーーんん!あふ」

鐘の音で目を覚ました俺は、布団に入ったまま大きく伸びをした。

「はふ、あ、お...タケルさんおはようございます」

え!アシャさん?

俺は完全に目を覚ましてベットで上半身を起こし声のした方に顔を向ける。そこには少し目を腫らしたアシャさんがいた。

「あれ?アシャさん?なんで?ここって?....俺の部屋だ」

俺は慌てて周りを見渡すと、10日以上暮らして少しだけ俺の私物が増えた部屋だった。間違いなくここは俺の部屋だ。

「えーと、おはようございます?....なぜアシャさんがここに?」

「えーとですね。私がタケルさんを殴ったら気絶してしまったので。スナフがこの部屋まで運んでくれたんです。私は、タケルさんが目を覚ますまで看病」

「アシャさん.....」

「しようとして、いつの間にか寝てしまいました。へへへ、ダメダメですね。1の鐘が鳴る少し前に目が覚めたんですよ。タケルさん具合はいかがです?どこか痛いところないですか?」

俺は、体で痛みが無いことを確認すると。

「うん、平気だな。......アシャさんごめん!心配させちまった」

アシャさんに向かって頭をさげた。

「いえ、私こそごめんなさい。心配して、あわてて戻ったら、ゴブリン達を全滅させていて。それなのに普通にしてるタケルさんを見てたら。....安心もしたんですけど、なんだかイラッとして気が付いたらタケルさんを殴ってました。本当にごめんなさい」

アシャさんが頭を下げてきた。

「いやいや、俺の方こそ心配かけちまって、本当にごめん」

「いいえ、街を必死に守ってくれたタケルさんを殴ってし「それって、いつ終わるんだい?」あ、ヴァイオラ」

俺とアシャさんは入口に顔を向けた。そこには、入口に肘を付きその手で頬を支えニマニマしているヴァイオラがいた。

「あ、ヴァイオラおはよう」

「おはようヴァイオラ」

俺とアシャさんは入口に寄りかかっているヴァイオラに声を掛ける。

「ああ、おはよう。お二人さん朝っぱらからラブラブだね」

「っち違うわ、そんなんじゃないから」

「ラブラブじゃねーし」

俺達2人はそろって否定する。アシャさんの顔が少し赤くなった。

「まーいいさ、起きたんなら朝ごはんにしよう。シルビアさんが特別にあたしらの分も作ってくれたよ」

「おー、顔洗ったら直ぐ行くからアシャさんも先に行って」

「ええ、先に行ってますね」

俺は2人を見送ると顔を洗って、着替えをした。身支度を整えて食堂に入ると。アリアちゃんが。最上級の笑顔で。

「おはよータケルさん。昨日は大活躍だったんだって?街を守ってくれたんでしょ!ありがとー」

おれは。

「おはようアリアちゃん。君の笑顔のためならどうってことないよ。はははは」

俺がアリアちゃんに挨拶してると。

「あらあら、タケルさんは小さい子も好きなのね。おはようタケルさん」

シルビアさんが料理を運びながら俺に声を掛けてくれた。

「おはようシルビアさん。....小さい子も?『も』ってなに?」

「ふふふふ」

シルビアさんは笑いながら厨房に入って行った。

食堂には蒼穹の翼のメンバーが全員そろっていた。俺を心配して集まってくれたらしい。俺が皆と挨拶を交わして、アリアちゃんが運んでくれた朝飯を食べていると。バトロスが。

「副ギルド長が話があるからギルドに来いと言ってたぞ。報酬の話しか、昇級の話ってところかな?」

「ありがとう。飯が済んだら顔を出してみるよ。ところで、昨日はずいぶん早く戻ってきてくれたよな。どのあたりから見てたんだ?」

「タケルがゴブリンチーフにエクスプロージョンかけたところかなー?オーガと戦ってるところは最初から見てたよ。もっとも、周りに散らばったゴブリンを見て驚いちゃってさ助けに入ることも忘れちまったけどね」

ヴァイオラが答えてくれた。他のみんなも頷いている。スナフが。

「しかし、オーガはあんなにあっさり死ぬ奴じゃないんだがなー、胸の傷は直ぐにふさがってたしな。再生力が凄まじく高いんだ、あれは」

「胸を切り付けた時に直ぐふさがったんで驚いたよ。さすがに、首を落とされると死ぬのな、あはは」


食事を終えた俺は、皆と分かれてギルドに向かった。ギルドのカウンターで用件を伝えると直ぐに副ギルド長の部屋に通された。部屋はそこそこ広く、執務用の机と部屋の隅にソファーが置いてある。バッカスは目の下にクマを作りながら書類を見ていたが、俺にソファーを薦めると自分も座った。

「さて、昨日は御苦労だった、お前さんのおかげで、この街は救われた。ありがとう」

いきなり頭を下げられた。

「いや、俺がやらなくても、討伐隊や防衛隊があれば普通に鎮圧できただろうし。結果は変わらなかったよ」

俺が言うと。

「討伐隊も防衛隊もあの時間では間に合わなかった。あそこに行った者たちで何とかするしかなかっただろう。ゴブリンが957匹、ゴブリンチーフが8匹そしてオーガ1匹、規模から言って災害級Fクラスだった、領主軍の状況によっちゃ街の壊滅もあり得たところだ。お前の手柄だ、誇っていい。おかげで、こっちは領主に提出する書類や、緊急クエストに参加した者達への報酬にと書類仕事が一気に回ってきたがな、あいつらがあのままガーゼルの街に襲いかかることに比べりゃ何てことのない話だ」

「957匹もいたのかー、こんなことって頻繁にあったりする?」

「あんなことが頻繁にあったら、今頃人間は滅んでるよ。とこれで、お前さんに話が2つある。まずは報酬の件だ、緊急クエストで参加者1人当たり、2000イェンが出ることになっている。それに、討伐した魔物は規定の討伐報酬を2割増し、素材も2割増しって規約がある。魔物討伐報酬が、ゴブリンで114840イェン、チーフが19200イェンオーガが36000イェンだな。報酬だけで172040イェンだ、素材はどうする?オーガの魔核は魔結晶になるぞ?」

「オーガの魔核以外は換金してくれ」

「だったら、少し色を付けて350000イェンって所だ」

「そんなに貰っていいのか」

「なーに、あのまま街になだれ込まれたらとんでもない被害が出るところだったんだ、領主がそれだけで済んだのか?って安心するくらいの金額だ」

「だったら、貰っとこう、邪魔になるものじゃないしな」

「それだけじゃなく領主が、お前さんへの別途報酬を考えてるらしいぞ。希望があるなら聞いておくように指示があった。むこうも、お前さんに借りを作ったままじゃ今後色々とやりにくいんだろう。何もないようなら、金になると思うがね」

「そんな物貰うと気がつくと領主軍の騎士になってたりしないかい?」

「それを望むならなれるんじゃねーか?騎士団長は無理でも部隊長くらいにはなれるだろ」

「そう言うことなら、商売の営業許可証が欲しいな。俺、この冒険者が終わったらあの子と結婚して雑貨屋を始めるんだ。ってね」

「なんだ?もう決まった相手がいるのか?成人したばっかりで手が早いな。相手はどんな娘だ?ギルドの受付の娘っ子達を紹介しようと思ったんだがな?」

なっ、なんだと!

「すみません、結婚相手のあてはないです。美人で、可愛くて、やさしくて、気立てのいいナイスボディなお姉さんをお願いします!あと、成人したばかりじゃなく17才だ!」

「わはははは、よしよし、考えておいてやろう。さて、次の話だが、お前さんの冒険者ランクの話だ災害級Fクラスの魔物の暴走を1人で止めちまったんだ、S+やSSでもおかしくはねえんだが、なんせ前例が無いもんでな。本部の偉いさんにお伺いを立てにゃならん。もう少し待っててくれ。それまではC-ってことになる。ここまでならギルドの支部長権限でいけるからな」

「え?普通に算定してくれ、いつでもあんなことができると思われると困るんだよ。今回は条件がかなり良かったんだ」

そう切り出してから、昨日の討伐方法を説明した。

「なるほど、街を防衛するために正面から戦ったら、この結果は出せないってことか」

「そう言うことさ、いくらなんでも、1000匹からのゴブリンに一度にかかられたら身動きできなくなっちまう。討伐数で行くとどうなんだ?ゴブリンばっかりだからE+以降は討伐数は加算されない?」

E+でも、冒険者になって2週間程度じゃ異例のスピード昇級とかじゃないか?

「そうだな、討伐数だけで規定どおりに算定するとD-だ。しかし、1度に1匹ずつ倒す1000匹と1度に1000匹倒すのを同じ討伐数として算定するわけにゃいかねえだろ。せめてC-は付けないとギルドとしてのメンツが立たねえ」

「ああ、かまわない、と言うかむしろ多いくらいだが、結果からみると、災害級の魔物の群れを1人で討伐したんだからな、ギルドとしても実績出したやつを正当に評価しないなんて評判が立つの嬉しくはないんだろ?」

「まあ、そう言うことだな」

「だったら、ありがたくお受けする」

「これからもよろしく頼む」

俺は部屋からでて、受付に並んだ。いつものお姉さんの所だ。ちなみに名前はアネモネさんだ。しばらくして順番が回ってきた。

「タケルさん、昇級おめでとうございます。カードを貸してください。街を守ってくれてありがとうございます」

おれは、カードを出しながら。

「ありがとうございますアネモネさん。おれは、自分にやれることをやっただけですよ。この街には守りたい人たちがいますから」

「あら、その中にあたしは入っているのかしら」

「当然だね」

「ありがとう。でも、無理はだめよ。では、手続きはこれで終了です。カードお返ししますね。報酬は口座に振り込めば?」

「ああ、そうしてくれ」

「では、これからもよろしくお願いします」

「こっちこそよろしく」

カードを受け取るとギルドを出た。



「さーて、これからはオーガとかも討伐することになるのかねー。となればこの太刀もどきじゃちょっと不満だよな。せっかくの鍛冶スキルだしな、自作してみるかな。鍛冶屋で場所と道具借りて材料買い取って.....とかは無理かな」

『マスターシルビアニキイテミルトイイヨ。ショクドウノオキャクサンショクニンサンガオオイッテイッテタ』

「なるほど、それ良いかもな」

俺は宿に帰ることにした。



「そうですねー、心当たりの人が1人いますね」

とシルビアさん。

「本当ですか!紹介してください、どんな人なんですか」

「はい、今は台所用品とかしか作っていないんですが、昔は腕の良い鍛冶屋さんだったと聞いたことがあります。場所は直ぐそこですから案内しますね。お昼にはまだ、少しだけ時間がありますから」

「はい、ありがとうございます」

シルビアさんに連れられて鍛冶屋に行くことになった。



「こんにちはー、ダイロックさん」

俺達は、シルビアの宿から200mほどの距離にある鍛冶屋に来ている。建物は年代物だが作りはしっかりしているようだし、店も大きい。

「おー、シルビアじゃないか。うちに来るのは久しぶりだな、包丁の砥ぎ出しか?」

「いいえー、今日はうちのお客さんが鍛冶屋さんを探していたので連れてきたんですよー。こちら、タケルさんです」

「こんちは、タケルと言います」

ダイロックは身長は160cmほどだが、がっしりした体格と立派な髭と、絵にかいたようなドワーフだ。...と思う。この世界の人間はヒューマン、エルフ、ドワーフだ。獣人とか魔人とかはいない。ここアースデリア王国は豊富な鉱物資源のおかげでドワーフの職人が結構多いらしい。力が強いのでそれを生かして冒険者をしている者もいるそうだ。

「わしはもう武器は打たん。紹介してくれたシルビアには悪いがもう歳だ、他を当たってくれ」

ダイロックが用件も聞かずに答える。まあ、鍛冶屋に来て設備を使わせろって言う客がいるとは普通思わないよな。

「あー、そうじゃなくて、武器が欲しいのは間違いないんだが、自分で打ちたいんだ。ただ、場所と道具と材料を提供して欲しいんだよ」

俺は腰の、なんちゃって太刀を鞘ごと抜きとりダイロックに渡した。

「見たことのない形の剣だな。こんな物どこで手に入れたんだ?この形じゃ振り方も独特なものになるな」

「そいつは鋼のバスタードソードだった物を俺がモデリングで作り変えたもんだよ。形だけしか真似できなかったんで本格的に作りたいんだ」

「その外見で実は中年なのか?とても鍛冶の修行をしたようにゃ見えんが。......まあいいだろ。うちの設備で良けりゃ自由に使いな。ここで、剣を打たなくなってしばらく経つが、包丁や鍬は打ってるからな設備は使えるし、道具もそろってる。材料は鋼しかないがね」

「鋼しかって、どう言うことだい?他にも何か材料があるのかい?」

「ん?ミスリルやオリハルコンにアダマンタイトは今うちには無いってことだ」

おー、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトだって、ファンタジー金属があるのか、この世界には。まあ、いずれ使ってみるとして、今の所は鋼でいい。ここまで一緒にいてくれたシルビアさんは話が纏まったのを確認すると帰って行った。


「鋼でいいんだ。で、使わせてくれるのかい?で、いくら払えばいいんだい?」

「そうだな、.....タケルの剣の作り方に興味があるな、作り方が秘伝じゃなけりゃ見せてくれないか?代金はそれでいい」

「ああ、かまいはしないが面白いもんじゃないと思うがね」

「いやいや、この歳になって新しい鍛冶の仕方が見れるなら十分さ」



俺達はさっそく鍛冶場に行って作業を始めることにした。スキルのおかげで必要な設備や道具がそろっていることを確認し、鋼を確認すると十分な品質であることも分かった。鍛冶スキルLV7すげえ。本来10日前後かかるであろう作成時間をモデリングを合わせて使うことで3日ほどに短縮できるはずである。

整形する部分なんかをモデリングで行うことにしても、鍛錬の時間は短縮できないってことだ。ダイロックにその話をすると毎日通ってこいと言われた。今日から作業開始だ。


スキルによって的確に鍛錬ができるとこが分かったので、もう少し時間が短縮するかも知れない。今日の作業は心金、棟金、側金などの鍛錬まで行ったところで夜になり作業を終えた。刃金の鍛錬は明日だ。

「ふう、今日の所はこの辺までになるかな」

「んー、鍛造とは言うものの、俺が作っている剣とはまったく違う作り方だな。なかなか面白い.....。いや、興味深い物を見せてもらった」

「そうかい?普通の剣とは製法が違うから参考にはならないだろ?」

「そうとも言えんな。出来上がりを見ないと何とも言えんが....どんなことでも受け取る側の心構えでそいつの身になるもんさ」

「そんなもんかね」

「そんなもんさ」

俺は明日の時間を約束し、ダイロックの店を後にした。



俺がシルビアの宿に戻ると、食堂が満員だった。シルビアさんを見つけて話しかける。

「ただいまシルビアさん。今日は助かったよ。いい人を紹介してくれてありがとう」

「おかえりなさいタケルさん。ダイロックさんいい人でしょー?」

「ああ、本当の職人って感じだよね」

「そうね、頑固そうだものねー。ふふふ」

「あはは、そうだね。ところで今日はなんでこんなに人がいるの?」

「ふふふー、ここにいればそのうち分かるわー。カウンターの端でよければ席を用意してあるわよ」

「ありがとう。着替えてきてから晩飯にするよ」

「はい、用意しておくわね」

おれは、部屋に戻って体を拭く、風呂は飯の後にしよう、鍛冶仕事でかなり腹が減っている。

部屋を出て食堂のカウンターに座ると直ぐにアリアちゃんが食事を持ってきてくれた。

「タケルさん、お食事でーす。今日はすっごく楽しみだね」

「アリアちゃんありがとう。何か始まるのかい?」

「知らなかったの?今日は、吟遊詩人さんが来るんだよ」

「へー、知らなかったよ、今日はダイロックさんの所にいたからね」

「もう直ぐ始まるよ、食べながら聞くといいよ」

アリアちゃんは、他の客に呼ばれて注文を受けるために離れて行った。

「吟遊詩人か、ファンタジー感にあふれたイベントだな」

間もなく吟遊詩人があらわれ食堂の端の小さな舞台の上でリュートのような楽器を弾きながら朗々と語り始めた。


それは、1人の英雄と従者の話だった。内容はさほど捻りのない英雄譚だが、その吟遊詩人の腕が良いのだろう情感たっぷりに歌い上げ。客は時に息を呑み、また時には拍手をし歓声をあげ酒を片手に聞き入っている。話の内容は、英雄と従者が冒険者と共にガーゼルの街に襲い来る魔物の大群を発見する所から始まり、冒険者たちに街への知らせを頼み、自らは命の危険も顧みずその場にとどまることを選択する。最初から自分たち2人で魔物の群れを倒さねばならない覚悟を決めていたのだ、「別に全滅させてもかまわないのだろう?」と中2病全開のセリフを言う所では、聞いた客は多いに盛り上がる。ただし俺はそうもいかない。思い切り混乱して、せっかくの料理の味も分からなくなっていた。俺は、そっと席を立とうとしたが、両肩に置かれた手のおかげで立ち上がれなかった。振り向くとそこにはアシャさんがいた。

「どこに行くんですか?これからがいいところですよ」

「アシャさんこれって....」

アシャさんは俺隣の席に座った。隣で聞き入っていた男は唄に興奮して舞台の方に行ってしまっていた。

「はい、昨日この街を救った英雄の話ですよ。今朝からあちこちで話を聞き回った吟遊詩人がここで歌うと聞いて私達も聞きに来たんです楽しみですね、あちらで、ヴァイオラ達も聞き入ってますよ」

アシャさんが指さす方を見ると、蒼穹の翼の面々がエールの入ったジョッキを掲げて俺に挨拶してきた。アシャさんもアリアちゃんにエールを頼むと、笑顔で俺を見た。

吟遊詩人はまるでその場にいたように聞く者の心を躍らせるような戦いのシーンを歌い上げる。

違うから!そんなにカッコよく戦って無いから!アインと2人で逃げ回りながらチョコチョコ削ってただけだから。いつの間にかゴブリンの数が5000に増えてるし!英雄は白く輝く魔法剣を振り回し、従者は上級魔法を撃ちまくっているようだが、俺のはなんちゃって日本刀だし、魔法だってファイアーウォールしか使ってねーし。最後のオーガとの死闘って誰がやったんだよそんなこと!あいつを倒すのにそんなに時間かけてねーから!死闘の末にオーガを倒し自らも疲れ果てて気を失ったってのは誰のことだよ。

「俺が気を失ったのは、アシャさんに...」

アシャさんに軽く睨まれたとたん、俺の口は言葉を発せなくなった。

そこから、唄は英雄と従者をほめたたえる。客たちは盛り上がり感動の涙を流している者も出ている。

どこのどいつだよ、その清廉潔白で高潔なやつは!俺の前に連れて来てみろ。

やがて、リュートの音が止むと。大歓声とともに大量の硬貨が舞台に投げられた。中には銀貨もちらほら見てとれる。吟遊詩人は客からエールのジョッキを受け取ると舞台のすぐ前の席に座り一口飲んだ。興奮した客たちは、口々に英雄と従者を褒め称えまわりの奴らと握手をし腕を振り上げ......。

もう、勝手にしてくれ、俺は知らん!

「アシャさん、ひょっとして蒼穹の翼の所にも吟遊詩人が行ったってこと?」

「ええ、ヴァイオラとスナフが身ぶり手ぶりを交えて話してましたね。私が割り込む隙は無かったですね」

「なんてこった。恥ずかしくて明日から街を歩けなくなっちまう」

「そんなことありませんよ。「殲滅の白刃」さん。明日から女の子にもてもてですよ。嬉しいでしょ?」

「センメツノハクジンさんてダレノコトデスカ?」

「タケルさんでしょ?剣1本でゴブリンの大軍を倒したんだもの」

「明日この街から逃げ出そう。うんそうしよう!俺、この街を出て、俺のことなんか誰も知らない街に行って、美人で、可愛くて、やさしくて、気立てのいいナイスボディな女の子と結婚して雑貨屋を始めるんだー」

「それは難しいですね、英雄「殲滅の白刃」と従者「滅失の魔術師」は、これから、吟遊詩人達の間で新しい英雄譚としてこの国中はおろか大陸中に広まることになります」

アインは魔法使えねーし!

俺の逃げ場はこの大陸中から消えることになるらしい。

「タケルさん、美人で、可愛くて、やさしくて、気立てのいいナイスボディな女の子について、後で、じっくりお話しましょうね」

アシャさんの笑顔に、なぜか戦慄を覚える俺だった。


俺は、両手両膝を床に付くと。


「おーあーるぜーっと」

言わずにはおれなかった。


そろそろ、新キャラ出したいところです。

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