ゴブリンがいっぱい
今日は、1の鐘が鳴る前に起きられたので、宿の裏庭で型の反復をしていた。
「そい言えば、ゴブリンの討伐証明と魔核を換金し忘れてたなー。あのオークっぽいおっさんのせいだよな」
素振りを終えた俺は、汗を拭いてロビーに行った。カウンターにはだれもいない。『シルビアの宿』では朝飯は泊まり客だけなんだからカウンターに人がいる必要はない。そのまま表に出ると。
「アインおはよー」
『マスターオハヨー』
アインに挨拶すると挨拶を返してくれる。なんだか相棒みたいだ。
「アイン朝っぱらからここで案内してたのか?ご苦労さん」
『アインユウベカラココデアンナイシテタケドダレモコナイヨ』
「あ、えーと....。シルビアの宿はさ、朝飯は泊まり客だけで食堂には外からお客来ないんだ」
『ナンダッテー』
『マスターヒドイ』
アインはそう書いた後にうなだれて、黒板を片手にぶら下げると右手で目をこすり泣き真似をした。
「タケルさんアインおはよー?」
アリアちゃんがドアから出て挨拶してくれた。アリアちゃんはアインを見ると。
「アインどうしたの?何があったの?」
『マスターニイジメラレタノ』
「タケルさん!アインいじめちゃ可哀想だよ!」
「いやいや、いじめてないから。アインが案内してるけどお客が来ないって言うから、この宿の食堂は朝は外からお客来ないって言っただけだよ」
「アインごめんね。あたしも気がつかなくて、一晩中ここにいたの?寒かったでしょ?」
『アリアヤサシイネ、マスターハンセイシロ』
「タケルさん、反省しなさい」
「すみません?」
俺の何が悪かったのだろうか?
朝飯を食べた俺は、アインと一緒に冒険者ギルドに向かった。アインを表に待たせると俺は1人で裏に回り討伐報告をした。討伐証明と魔核をカウンターに置いて。
「ゴブリン討伐してきたよ。昨日の分だけどいいかな?」
と、声を掛けると。
「おう、ご苦労さん。確認するからちょっと待っててくれ。あ、カードも出してくれ」
受付担当は討伐証明を袋から出すと、目を見開いて。
「すごい数だな。何日分なんだ?」
と言いながら数え始めた。
「昨日の分さ、初めてのクエストってやつだな」
俺はカードを渡した。
「ほー、45匹分の討伐証明と魔核か。討伐報酬が4500イェンで魔核が450イェンだな。初めての討伐でこれだけ持って来るなんて、戦闘経験があるのか?」
「ん?村にいた時にそれなりにね」
「よし、処理は終わった」
カードとクリア証を受け取ると、受付担当に尋ねた。
「金って、どこかに預けられるのか?」
「ギルドに口座を作れるぞ表のカウンターで受けてくれる。それからこのクリア証を提出して報酬を受け取ってくれ」
「おう、ありがと―」
俺は、表のカウンターで受け付けの列に並び順番を待つことにした、朝が早いせいか結構な列ができていた。受付のお姉さん達が優秀らしくテキパキと処理されていく。それほど待たずに俺の順番になった。一昨日登録受付をしてくれたお姉さんに当たった。縁があるのか?.....偶然だな単なる。討伐報酬をもらって口座を作り、表に出るとアインを連れて南門に向って歩き出した。
「ゴブ」「ゴブ!」「ゴ...」
ゴブリン討伐だ。今日は、昨日と違って屋台で弁当を買ってきたし、夕方まで狩りまくれる。俺も、アインも好調に討伐していく。弁当を食べてからしばらくゴブリンに合わなかったが、いつの間にかオークのテリトリーに入っていたらしい。オークも随時依頼の魔物なのでそのまま狩り続ける。オークは太っているためアインの爪が効かないかと思ったが、アインの意思で爪は伸び縮みするらしく、易々と腹を切り裂いていた。アインはスピードもあるため、オークの振るう棍棒は空を切るばかりだ。
「さて、証明を入れる袋がもう一杯だなー、アインそろそろ帰ろうか」
『ハイ、マスター』
「ゴブリンもオークも問題なく討伐できるな。アインさんなかなかやりますなー」
『イエイエ、マスターコソ』
「まー、一発殴られただけで、形勢逆転しちまうだろうから。気を緩めないようにしないとな」
『アインモソウオモッテタヨ。マスターニチュウイシヨウトオモッテタヨ』
「ははは、そうかそうか」
俺達はガーゼルの街に帰って行った。
「ただいまー」
シルビアの宿に帰ってきた。
「アイン、タケルさんおかえりなさい」
「アリアちゃん、アインが先なのか?こいつゴーレムよ?」
「えへへ、だって、アイン可愛いんだもん」
『アリアモアインモカワイイ』
「はいはい、アリアちゃん面白い物あげようか?」
「え?タケルさんがあたしに?お母さんにじゃないの?」
「アリアちゃんそのネタいい加減ヤメテクダサイ」
「ふふふ、ところで、何をくれるの?」
「ちょっと見ててね。そうだ、ペンを貸してくれるかい?」
俺はそう言って、採取袋に入れてきた小さめの丸太を取りだした。モデリングを使って丸太を変形させていく。
「タケルさん、これでいい?」
アリアちゃんがペンを持ってきてくれた。
「ああ、ありがとう。さーてもう少しだぞと」
丸太は徐々に姿を変えてゆき。
「あー、アインだ!」
そう、ペンで目を書いたら、黒板を持ったアインのでき上がりだ。
「はい、アリアちゃん」
「これ貰っていいの?」
「もちろんさ、アインを気に入ってくれてるみたいだからね」
「ありがとう、タケルさん」
するとそこに、シルビアさんがやってきて。
「タケルさんおかえりなさい」
「ただいま戻りました」
シルビアさんと挨拶を交わす。
「あら、アリアそれタケルさんが?」
「うん!今、目の前で作ってくれたの」
「あら、良かったじゃない、可愛いわね。タケルさんありがとうございます」
「大したことじゃないですよ。スキルを使えばあっという間だから」
「じゃー、お店の前に飾るのにこれの大きいのを作ることって出来ますか?もちろんお金は払いますから、今朝、店の前のアインちゃんを見てたら、メニューを書いた看板を出せたらいいかなーって思ったの」
「それはいいかもしれませんね。だったらちょっと待っててください。近所に木工の工房ありますか?」
「ええ、この直ぐ先にありますよ」
シルビアさんに場所を確認すると、アインと2人で買い物に行った。
俺は案内された木工の工房に行くと、そこの親方に交渉して丸太を手に入れた。アインに丸太を持たせ先に宿に帰らせて、雑貨屋で黒板を買ってきた。その日からマスコットとしてアイン看板がシルビアの宿に飾られることになった。夜や俺が宿にいる時は2つ並んだアインが見られる様になった。結構評判が良かったらしく。これ以降ガーゼルの街で流行ることになる。俺が丸太を買った工房がアイン看板を見て商売を始めた。結構待たないと手に入らないらしい。
ガーゼルの街の近辺にいる魔物は、ゴブリン、オーガ、コボルトが数が多くそれを中心に討伐を進めていたが10日ほどたつと俺はFランクになっていた。アリステアの時よりかなり早い昇級だ。やっぱりアインと一緒に狩りをしているのが大きいかな。
「タケルさんおめでとうございます。今日からFランクです。かなりのスピード昇級ですね将来有望ですね」
カウンターのお姉さんが笑顔でカードを渡してくれる。
「やっと見習いを卒業しただけですよ。無理せずぼちぼちやっていきます」
「少し見ない間に、もうFランクなの?タケルはやっぱりすごいね」
後ろから、声をかけられた。俺が振り返ると。そこには懐かしい顔があった。
「ヴァイオラ久しぶりだね」
「うん、久しぶりだねー元気してたかな?」
「ああ、同じ街にいてもなかなか合わないもんだな」
「あたしらは、護衛のクエストが入って10日ほどこの街を留守にしてたからね」
「あーなるほど」
俺は、周りを見渡した。
「蒼穹の翼のみんなは、元気だったのかい?」
「アシャも元気だよ。もう直ぐここに来るよ」
ヴァイオラがにやにやしている。
「いや、そんなこと聞いてないし。みんなが無事だったか気になっただけだし!」
「私のことなんか気にしていないってことですね。そんなにはっきり言われるとちょっと悲しいです」
俺は、ぎこちなく後ろを振り向いた。そこには悲しそうな顔をしたアシャさんが.....。
「ア、アシャさん、今のは、言葉の綾と言うか、ヴァイオラにはめられたと言うか、アシャさんのこと気にならないなんてことは無くて。......アシャさんが無事に帰ってきてくれてうれしいです....」
俺の慌てぶりを見てアシャさんはほほ笑んでくれた。
「アシャさんおかえりなさい」
「ただいまタケルさん」
アシャさんは、いつ見ても素敵です。
「よお、タケル生きてたな、がはは」
スナフが俺の背中をバシバシと叩く。
「スナフさん、イタイ、イタイって」
「タケル、久しぶりだな、お前さんのことだ、もうG+くらいにはランクアップしたのか?」
バトロスもやってきた。
「おかえり、バトロスさん。今日Fランクに上がったよ」
「なにー」
蒼穹の翼の残り4人はかなり驚いていた。
「ここでは、周りの邪魔だから、あちらのテーブルに行ったほうがいいね」
「ヒースさんもおかえり」
「ただいま、タケル殿も元気そうで良かった」
みんなでテーブルに付くと近況報告が始まった。
蒼穹の翼は隣国との交易に向かう隊商の護衛を行ってきたところらしく10日間ほどガーゼルの街を留守にしていたそうだ。明日は1日休養して明後日からまた討伐クエストを受けるそうだ。
おれは、アインのことや、毎日の討伐などを話した。
「アインですか、ゴーレム作ったんですね。どこにいるんですか?」
とアシャさん。
「例のブラッドグリズリーの魔核を元に作ったんです。ギルドの表にいますよ。あいつのおかげでこんなに早くランクが上がったんですよ」
「そんなに使えるゴーレムなんですか?あとでみせてください」
これはヒース。
「だったら今度一度一緒に討伐依頼を受けてみないか?タケルもFランクになったのならゴブリンやオーク以外の魔物を討伐するってのもいいんじゃないか?」
スナフが言うと、バトロスが。
「そうだな、俺達は明日1日は休みにするから、明後日でどうだ?なにか一緒にやってみないか?」
「え、いいのか?蒼穹の翼ってDランクのパーティーだろ?俺なんか足手まといじゃないか?」
「私たち蒼穹の翼のパーティーランクはDですが、個人を見ると、バトロスがCランクとスナフがC-ランク、私がD+でアシャとヴァイオラがD-です。Fランクが1人くらい入って仮パーティーを組んでも平均でDランクのままですし。タケル殿は普通のFランクではないでしょう」
ヒースがそう言ってくれた。
「じゃーお願いしようかな。それに俺も明日は休みにするか、討伐を始めてから一度も休日作ってなかったしなー」
すると。
「タケルさん、10日も連続してクエストを受ける人なんていないです。いくら体力に自信があったとしても少し体調が崩れただけで命に係わるんですよ。少し集中力が無くなっただけで、回避不可能な危険に合うかも知れないんですよ。普通は3・4日ごとに1・2日くらい休むものです。そんな無理なペースでクエストを受けていたら、いつか取り返しのつかないことになります」
アシャさんが心配な顔で俺に助言してくれる。
「俺、ソロだったからな、無理なことはしていないつもりだったんだけど。その辺の常識が無かったんだなー、これからは気を付けるよ」
「はい」
アシャさんの笑顔は素敵すぎる。
そうして明後日のクエストの打ち合わせをして蒼穹の翼と分かれた。別れ際にアインを見たヴァイオラさんがアインを気に入ってしまいアインの木製マスコットを作って渡してあげた。アシャさんが羨ましそうにしていたのでもちろんアシャさんにも渡した。2人の笑顔は素晴らしいご褒美だった。
昨日は1日街をぶらついたりして休養を取った俺は、待ち合わせの時間にギルドのホールにやってきた。
蒼穹の翼のみんなとは、ちょうどギルドの入口で会えた。6人で掲示板を見ながら適当な討伐依頼を探す。
「これなんかいいんじゃない?」
ヴァイオラが指差したのは、ビックボア2頭の討伐依頼だ。大きな猪タイプの魔獣でDクラスだ、こいつも無駄な部分が無く1日で狩れるとしたらそれなりにいい稼ぎになる。ちなみに、獣が大きくなり魔物になった場合は魔獣と言う言い方もするようだ。素材代と合わせて1頭20000イェンくらいにはなるらしい。
「そうだな、こいつにするか。じゃー、受け付けしてくる」
バトロスが依頼用紙を剥がしてカウンターに持って行った。
2頭で40000イェンかー1人当たりにすると大した金額じゃない気がするが、俺の稼ぎ方が普通じゃないみたいだし。こんなものなのか?Fランクの冒険者がソロでゴブリンを倒す場合1日10匹狩れれば良いほうなのだと聞いたのはつい最近の話だ。
蒼穹の翼の皆とビックボアを探し始めてから3時間ほどで2頭のビックボアを見つけた。ここまでは魔物と遭遇しなかったせいで、直ぐにでも討伐に入れる。バトロスが俺たちに指示する。
「さっきタケルから提案された通り、俺達蒼穹の翼の3人とタケル達に分かれて1頭ずつ狩ることでいいか?アシャは戦況を見ながら両方に指示を出しつつ状況に応じて回復を頼む。出来るな?」
「はい」
アシャさんが答える
「ヒースはまず、俺達が当たるビックボアにファイアーボルトをたたき込んでくれ。その後はアシャのフォローをしつつ両方に攻撃魔法を頼む。タケルは右の少し小さいほうのビックボアを2人でやってくれ。」
「分かった」
と、俺が返事をする。
「先に倒した方が残った方のバックアップに入る、では行くぞ」
「「「「「おう」」」」」
俺達は風下から、ビックボアに近づいて行く。バトロスの合図でヒースが魔法を打ちこんだ。
「さあ、狩りの始まりだ!」
俺とアインは立ち上がると、右のビックボアに向かって駆けだした。アインが俺の前を行く。俺達に気が付いた奴は一鳴きすると、こちらに向かって突進してきた。まず、アインがやつの鼻面に向かって右手を叩き付ける。奴は突進を止めアインに向かって牙を振るおうとした。その隙に左に回り込んだ俺が右下に構えた刀で下から上に切り上げた。半ば以上首を切られたビックボアはその場に倒れ込んだ。
バトロス達の法を見ると。あちらももう直ぐ決着が付きそうだ。
「アイン、バックアップに行くぞ!」
俺とアインがバトロス達のバックアップに入るころにはもう1頭のビックボアも倒されていた。
「お疲れー」
俺が声を掛けると。
「さすがに早いなタケル」
「まったくだ」
バトロスとスナフだ。
「さすがに、初めてのビックボアにはもう少し手こずるんじゃないかな―とおもったんだけどねー、さすがタケルだね」
ヴァイオラだ。
「指示を出す間もなかったですね、でも、皆さんケガが無くてよかったわ」
「私の魔法は今回必要なかったですね」
アシャさんとヒースだ。
俺達はゴーレムホースが引く馬車に2頭のビックボアを積みこむと帰路に付いた。
ビックボアの解体はここでは行わずに街の解体業者に直に持ちこむらしい。両方とも頸動脈は切れているので血抜きはできてしまうからとのことだった。
周りを警戒しつつ馬車を進めていると。街まであと2時間を切ったくらいのところでアインが。
『マスター、アノオカノムコウナニカイル』
と言ってきた。
俺とヴァイオラで様子を見に行くと、丘の向こうの方に、ゴブリンの集団がいた。俺達は皆の所に戻りヴァイオラが報告する。
「ゴブリンの集団だ。500匹くらいかな」
バトロスが。
「500からのゴブリンだと?ひょっとすると、ゴブリンジェネラルでも出たか?ジェネラルがいるなら10じゃ利かない数のチーフもいるかも知れんな、道理で今日はゴブリンを見なかったはずだ」
ヒースは。
「ガーゼルの街を襲うつもりでしょうか?だとすれば直ぐにでも知らせに行かないと」
スナフが。
「襲ってくるなら夜になるとは思うが、魔物が考えることだ、いつ動き出すかなんてわからんからな」
俺が。
「俺があの丘で奴らの動きを見張ろう。蒼穹の翼は急いで街に戻って体制を整えて討伐隊を連れて来てくれ」
「タケルさん何を言い出すんですか!あなたを残して行けるわけないでしょう!」
アシャさんが言った。まあ、そう言うよな。
「聞いてくれ、俺が残るのが一番いいと思うんだ。もし、奴らが街に向かって動き出したら。アインを突っ込ませて撹乱する。そのすきに俺は街に向かって走ればいい。この中じゃ俺が一番足が早い。途中で魔物に襲われても、この辺の奴らなら瞬殺だ追いつかれる心配はない」
バトロスは考えている。俺はさらに。
「俺じゃ信用が無いからギルドで話しても討伐隊を出させるのは難しいだろう。蒼穹の翼が行くしかない。そちらは、確実にこのことを街に伝えてほしいんだ。5人いれば途中で魔物に襲われても誰かは辿り着けるだろう。残るほうが危険だとは誰にも言えないはずだ。それに誰かが残らないと、万が一直ぐに街に向かって奴らが動き出した時に後手に回るし、真っ直ぐ向かうとは限らない。討伐隊の他に防衛隊も必要になるだろう。たぶんこれが最良の手だと俺は思う」
しばらく考え込んでいたバトロスが。
「分かったタケル。危険な役目だがやってくれるか」
「タケルさん。必ず無事でいてください、直ぐに討伐隊を連れてきます」
アシャさんだ。
「ああ、無理はしないさ。でも万が一の時には、全滅させてしまってもかまわないんだろう?」
俺がおどけた口調で言うと。
ヴァイオラが。
「あたしたちの分も残しておかないと困るんだけど?」
スナフが。
「そうだな、ギルドの特別クエストになるだろう。俺達も稼がせてもらわないとながははは」
バトロスの。
「そうと決まれば直ぐに行動だ」
の一言で皆が一斉に動き出した。ゴーレムホースって人が走るより遅いのか。そんなことを考えながら蒼穹の翼を見送った俺達は。
「アイン、行くぞ」
『ハイ、マスター』
丘の上でゴブリンを見張ることにする。
1時間ほど見ていると。ゴブリンの中に一際大きな個体がいることに気が付いた。
「あれがゴブリンジェネラルか?周りに取り巻きの少し大きな個体も数匹いるな」
ジェネラルが周りのゴブリン達に向かって何か叫び始める。ゴブリン語なんてもんがあるのかね?
すると、ゴブリン達が街の方向に向かって真っ直ぐに進み始めた。ヤバイ動き出すのが思ったより早い。これじゃ街の準備が整わない。
アインが。
『マスター、ハンブンハアインノエモノダカラネ』
「じゃー、あのでかい奴は俺のだぞ」
おれは、アインに言うと荷物を下ろし鞘から刀を抜いた。