2:夢でありますように
残酷描写があります。
パチパチッパキッ
「ぐっ・・・。」
鼻につく煙の臭いに俺は瞼を上げる。
「(あれ、俺、家で寝てたんだっけ?・・・それにしても、変な夢だったなぁ。)」
まだ意識が朦朧とする中、自然と部屋の光源に目が向かう。
暖炉だろうか、その中で薪が勢い良く燃えており、それが部屋を照らしていた。
その暖炉の前には男がこちらに背を向けて座っている。
「(ここ、は・・・?)」
自分の部屋で無いことに気がつき、無意識に体を動かそうとする、が。
ジャラ
手足がうまく動かせず、音のなった方に目を向けると俺の手足に枷がはめられていて、その枷から延びた鎖が壁に埋まっている。
俺は左右の腕を斜め上にあげた大の字状態の格好で、吊るされるように無理やり立たされていた。
改めて自分の状態を確認する。
頭が痛いが他に異常はない・・・いや、服が全部脱がされていた、しかも口には布が噛まされている。
この状況にようやく意識が覚醒する。
「ン”!ン”ーッ!(な、なんだよこれ!)」
ガチャンガチャン
パニックになり俺は枷を外そうと暴れるが、一向に外れる気配はない。
その音に気がついた男がこちらに振り向く。
「********。」
男が何かを言いながらこちらへ近づいてくる。
男は近くにある机の上から細い棒を手にし、それをしならせながら近づいて来た。
「**************。」
再び男が何かを喋っているが、聞いたことの無い言葉だった。
俺は頭を振り、手足を必死に動かしながら言う。
「ん”-!ん”-!ん”-!(何言ってるかわかんねぇよ!なんなんだよ!?この手足の外してくれ!)」
ガチャン!ガチャン!
しかし、猿轡を噛まされていてうまく喋れない。
「******。」
男が肩をすくめ、手にした棒を振り上げ、俺の胸に勢いよく振り下ろす。
ピシンッ
「ン”-!(いってえええええええええええ)」
打ち据えられた胸元がジンジンとし、目を向けると赤く腫れ上がっていた。
「(夢じゃ、無い、のか?)」
その痛みに、ここが一縷の望みだった夢ではなく、現実という事を理解させられる。
俺は胸元からゆっくりと顔を上げる。
正面にいる男を見ると、そこには両手で自分の身体を抱きしめながら恍惚とした表情で震えている男がいた。
「***************・・・」
何かを呟いている、喋るたびに涎を垂らしているが、男はそれを気にしている様子はない。
「(こいつは、ヤバイ。)」
男の様子を見て体が自然と後ずさろうとする、が。
ジャラ
音を出した鎖に目がいく。
「(そうだった、壁に・・・逃げられ、ない?)」
この状況が絶望的だと思い知らされる。
恐怖で身体が震え、目尻に涙が溜まる。
「ん”-ッ!(うあああああああああ!)」
ガチャン!ガチャン!
涙ながらに俺は必死に逃げようとするが手足の枷は外れる気配は無い。
鎖の音に男がトリップから戻ってきて舌舐めずりをしながら血走った目で俺を見つめる。
手に持った棒を先程のように振り上げ打ち下ろす。
パシンッ
再び胸部に痛みが走る。
男の拷問は始まったばかりだった・・・
「ハァッハァハァ」
荒い息を吐き、肩で息をした男が手を止める。
どれほど打たれただろうか、痛みで何度も意識を失い、痛みで起こされ続けた。
痛みに耐え切れず排泄物を漏らし、悲鳴を叫び続けたため喉は枯れた。
打たれた胴体は赤く腫れ上がり、所々皮膚が剥けて出血している。
目の前の男は自身の汗にまみれ、肩で息をしていたが、その表情には満足そうな笑みが浮かんでいた。
息を整えた男は桶を持ち、部屋にある大きな瓶に入れて中の水をくみ、俺の下半身に向けて桶の水をかける。
水掛を何回かした後、男は机の上に置いてあったフラスコのような容器の中身を水の入った桶に入れ、俺の頭上からかける、皮膚が剥けていた所から水が染み激痛が走るが、軽く身動ぎするぐらいの体力しか俺には残ってなかった。
そして片付けが終わったのか男は部屋から出て行った。
男が出て行くのを見て俺は安堵なのか、瞬く間に意識を失った。
閉じ行く視界の中、視界の端に暖炉が見えたが、暖炉の炎はいつの間にか消えていた。
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スキル【痛覚緩衝】
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