1.5(中):召喚術者
前後で終わるつもりが前中後になってしまった、不思議。
あの後、すぐにした事と言えば、手に入れた羊皮紙の複製だった。
書き写すさい、文章部分と魔法陣部分で別々の羊皮紙を使った。
翌日、書き写した文章部分の羊皮紙を懐に忍ばせ、仕事場である城へと向かう。
魔法陣の内容を知るためにも、まずは文章の解読が必要だった。
その日から仕事を今まで以上にテキパキと終わらし、城の図書館へ足繁く通った。
そんな生活が半年近く続いた、ある日。
ガタンッ!
8割ほど文章の解読が終わった私は、余りの衝撃に座っていた椅子を倒してしまう。
その音に殺意を込めて睨み付けてきた司書が居たが、ワシは気づかなかった。
「(しょっ、召喚魔法陣じゃとおおおおおおおおおおお!)」
叫びたい気持ちで一杯だった、だが、叫んだ瞬間、私は牢獄行きだろう。
自分の調べている物に冷や汗がダラダラと溢れてくる。
「(な、なんで、なんでこんなものが!?)」
解読した所を何度も読み返してみるが内容は変わらない。
がっくりと肩を落とし。
「(ここまでにしよう、流石にこれ以上は不味い。)」
そう思い羊皮紙に手を伸ばす。
だが、消されたはずの召喚魔法陣、その手がかりが目の前にある、それはとても、とても魅力的な物に感じた。
ゴクリ
自然と喉が鳴る。
ワシは解読した羊皮紙に手を伸ばし、その羊皮紙を・・・懐にしまった。
ワシが羊皮紙を懐にしまったあの日から数ヶ月、文章をすべて解読し、魔法陣を理解するのは早かった、だが、魔法陣を書く場所を探すのにはだいぶ時間がかかってしまった。
「だが、ついに・・・ついに!完成だ!クククク・・・ハハハハハハハ!」
興奮が抑えられなかった、失われた物をワシの手で復活させるのだから。
「さて、始めようとするかの。」
魔法陣に魔力を注ぎ込む
魔力が召喚陣にわたりきったとき、目の前に光があふれる。
「(おお!これが召喚魔法か!)」
興奮のあまり脈が速くなり、鼓動が高鳴る。
光が収まり薄暗さに目が慣れる、そして、召喚陣の上にいたのは・・・黒髪の青年だった。
「なっ・・・。」
絶句する。
10mにも及ぶ巨大な魔方陣で召還された物がただの人だということに。
しかも黒髪、隣国の王家に連なる者しかいないとされる黒髪。
青年がこちらを見つめ、立ち上がり、手を指し向けてくる。
「(いかん!呆けている場合ではなかった!間に合うか!?)」
先制攻撃されては不味い、すかさず魔法名を叫び相手を無力化する。
「【アースホール】!【アースバインド】!」
左手で腰の皮袋を取り出し、中の水を出す。
「【ウォーターショット】!」
水の攻撃が直撃する。
「ふぅ、なんとか間に合ったか。」
ワシは警戒しながら近づき青年の意識を確認する、青年は見事に気絶していた。
「(やけにあっさりしておったな。さて、気絶させたコレをどうするか・・・ただ殺すには勿体無さ過ぎる。)」
ワシは考えを巡らせる。
「(そういえばふもとに収容施設があったな、あそこにはたしか・・・)」