1.5(前):召喚術者
*.5など小数点を含む話数は他者視点となります。
ワシがその羊皮紙を見つけたのは偶然、そう、偶然だった。
~約一年前~
ある商店に珍しい品が入ったと聞き、すぐさまその品をワシの名前で取らせておく。
ワシは仕事を早々に切り上げ、その商店へと向かった。
その商店へと入り店員に名を告げる、すぐに店長室へと通され店長の挨拶を受け早速商談を開始した。
取り置いて貰った商品を購入、商談も纏まり部屋から出ようと立ち上がった時だった。
「ん?それは?」
店長の机の上に置いてあったかなりの年代を感じさせる一枚の羊皮紙を指差す。
「ああ、いえ、これは・・・その、買い取った魔法書なのですが、当店の魔法師が魔法陣を作成しても発動すらせず、処分しようにも買い取った金額が金額でして・・・。」
店長がそう言い羊皮紙の説明をする。
私はその羊皮紙に何故か惹かれていた。
「見せてみなさい。」
「・・・どうぞ。」
ワシは店長から羊皮紙を受け取り広げる。
広げてみると思ったよりも損傷が激しい、魔法陣の説明と思わしき文章部分は所々欠けていたり擦れていたりでまともに読めそうにないが、魔法陣の部分は若干擦れている程度で無事だった。
ワシはその魔法陣は発動すると長年の経験から感じられた、失敗する要素が感じられない。
しかし、さっきの話によると魔法陣は発動せずに失敗したらしい。
「君の【鑑定】結果は?」
「それが・・・書かれている文字も読めず、痛んだ古い羊皮紙としか、魔法陣の部分は無事だったので買い取ったのですが、とんだ偽物を掴まされたみたいです。」
その説明で魔法陣に釘付けになっていた目を文章部分に向ける。
店長が読めないのも無理は無かった、それは遺跡で見るような相当古い文字で書かれていたのだから。
読めない文字、このワシですら理解できない魔法陣など興味が尽きなかった。
何としてでも欲しい。
「そうか、この魔法陣は・・・ダメだな、まるで意味が分からん。店長コレは貰って行っても?なに、コレに出した料金は払おう、いくらかね?」
「本当ですか!?」
店長が驚き表情とともにバッと顔を上げる。
それもそのはずだ何せわざわざ不良品と知って金を払おうというのだから。
「ああ、今回は珍しい物を売って貰ったからの、これも何かの縁じゃて。」
「ありがとうございます。それと、その・・・私が偽物を掴まされた事はどうかご内密に。」
「勿論じゃとも。」
そう言い羊皮紙の料金を執事に用意させ店長に渡す。
先に買った品を執事に持たせ、羊皮紙は自分の懐へとしまい、部屋から出る。
「本日はありがとうございました。また何か御用がありましたら、是非こちらに。」
店を出て店長の見送りを受けながらワシは馬車へと乗った。
ワシは家へと帰宅する、高鳴る鼓動を抑えながら。