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祟り神と俺  作者: 神たん
3/21

【第一部】3話

────────────。







どれくらいの時間が経ったのだろうか。


全てが白い空間に俺はいた。


何故か意識がはっきりしている。


これは夢だと自覚もしている。


不思議な気分だ。


夢なんて何年降りだろうなんてどうでもいい事を考えてしまう。


ただ今まで見た夢とは何かが違うような気がした。


たださっきから遠くの方で変な音が聞こえる。


それが段々と近づいて来ているのが分かった。


俺は辺りは見渡すがどこまでも続くような白い空間が広がっているだけ。


さっきより音が鮮明に聞こえてきた。




「ザザ・・ザザザァ・・」


なんだかノイズのような音がする。


非常に耳障りだ。


ザザザザザザザザ・・・ザザザザァァァァ・・


どんどん音がでかくなっていく。


その音が大きくなるにつれ耳鳴りもひどくなっていった。


夢なのに意識が遠のいていくような感覚になる。


ノイズが頭の中で大音量で響き渡りもはや立っていられない程の頭痛、目眩となり

俺は目を瞑り蹲ってしまった。



ふと、突然全ての音が止んだ。



それと同時に頭痛、目眩も和らいでいった。



ゆっくりと目を開ける。



「あれ?俺目を開けたんだよな?」


先程の白い世界とは打って変わって全てが黒い闇へと変わっていた。


「なんだこれ・・ちょっと恐いぞこの夢」


もはや速く目を覚ましてくれと願うが目を覚ます事が出来ない。


「一体どうなっちまってるんだよ」


もう完全に混乱している中、突然女性の声が聞こえだした。


「やっと・・・見つ・・けた。」


俺の体はビクッ!っとなり金縛りのように動けなくなった。


金縛りは何度か体験した事はあったが、夢の中で金縛りなんて初めてだ。


声を出す事もできない。


それに、もの凄く嫌な感じがする。


でも、この感じどこかで・・・


そうこうしているうちにまたあの声が聞こえてきた。


「わらわの・・・・贄となれ・・」


「はぁ!?突然なんだこりゃ?」


頭の中で自問自答しているとそれが聞こえているかのように、


「おまえが・・贄になる・・事・・は・・・20年前に・・決まっている」


「なんだよそれ!?誰が決めたんだよ」


「フフフッ・・あと少し・・・」


「なんなんだよ・・これ・・・」


もはや脳内会話になっている。


俺はなんとも言い難いこの恐怖に足が震えていた。


「ん?なんだこの光は?」


突然闇の中から眩しい程の光が溢れてきた。

すると金縛りも解け、次の瞬間夢が覚めた。


ガバッと勢いよく目を覚ますとそこは自分の部屋では無かった。


「ここは・・・うちの神社?」


俺は神社の中にいた。

その傍らで親父と長兄が必死にお経を読み上げていた。

俺は何が起きているのか全くわからくなり親父に問いかけた。


「親父これは・・・何をやってるんだ?」


親父はひたすらお経を読み続けている。

とにかくお経を読み終えるまで待つことにした。



────────。



お経も終わりやっと親父が口は開いた。


「大丈夫か?体に異変はないか?」


「は?別に普通だけど・・」


すると長兄が


「誰かに操られてるような感覚とかないよな?」


もはや訳がわからない。という表情をしていると

親父が長兄に、


「あいつの封印は解けていないから夢に出るくらいしか

まだ力がないのかもしれん。だがこのままではまずいな」


まだ親父と長兄は話し合っている。


もう完全に話についていけない為、親父と長兄の話を

遮るように問いかけた。


「なぁ、全然今の状況が理解できないんだけど説明してもらえない?

なんで俺は今神社にいる訳?」


そう問いかけると親父が話だした。


「昨日お前が刀の話をしただろう。それが気がかりでな夜中にお前の様子を

見に行ったら・・・」


「見に行ったらなんだよ?」


「いや・・苦しんでいただけだ。」


は?と俺は思った。

苦しんでただけでお経あげるか普通。


「なんで苦しんでるだけでお経まであげんといかんの?」


親父は困った顔をしながら、観念したように言った。


「お前の苦しんでる顔が奴の顔になっていたんだよ」


「奴って誰の事だよ!?」


俺が問い詰めると親父が続けた。


「ここに封印している魔物の顔だ。」


封印?魔物?なんの事だ?

もう訳分からな過ぎて言葉が出ないでいると

長兄が語りだした。


「俺は後を継ぐ者だから親父から全て話しは聞いている。

親父!こうなった以上翔にも説明するしかないんじゃないか?」


長兄がそう言うと少しの沈黙の後親父が語りだした。


「翔よ。お前は神様だとかオカルト染みた事を信じない奴だがこれから話す事は本当の話だ。

俺の言うことを信じる事ができるか?」


俺は静かに頷いた。


「わかった。まずここに納められている刀について説明してやる。あれは、いわゆる呪いの刀だ。

江戸時代後期から代々うちの一族が封印していた宝剣。」


「宝剣!?」


俺は驚いた。宝剣とは代々その家の守り神ともされるからだ。


「お前も多少なりとも知識はあるから気付いただろうが、

宝剣とは一般的にその一族の守り神となる。

代々伝わる言い伝えによると江戸時代に、現在のN県にある村に居た

由緒ある一族に祭られていた物らしい。そこは土地に恵まれていて、

農作物等が良く育つ為皆日々の生活に困る者は少なかったという。

だが、そこに目を付けた役人が突然やってきて納め物の量を大幅に増やし、

国にはいつも通りの量を納め余りは自分の至福を肥やす為に使っていたらしい。

さらに日を重ねる毎に納め物の量は増えていき次第に納められない者もでてきた。

役人は納められなかった者に罰を与えたんだ。」






親父が俺に「何をしたと思う?」と聞いてきた。






俺が答えられずにいると親父が言った。



「殺したんだよ。しかも見せしめに村の中央で吊し首だ。

最悪なのはその後だった。死んだ者の使っていた土地を村人同士で奪わせた。

つい先日まで仲の良かった者同士で殺し合いさ。

役人はその光景を見て楽しんでいたらしい。余りの非道さに耐えかねた宝剣の一族が役人に抗議をしに行った。抗議した結果一族の一人娘を役人に渡せば納め物を減らそうと言ってきたらしい。

勿論そんな要求を飲める訳もなく再度抗議しに行くと次の日にはその一人娘の両親の無残な死体が

村に晒されていたらしい。母親は乱暴された姿で、父親は四肢が全て切り落とされた姿で。

それを目の当たりにした娘は家で恨み辛みを抱いたまま一族の宝剣を使い自ら命を絶った。」





俺はあまりの悲惨さに声を出す事が出来なかった。

そんな俺の姿を見て親父が問いかけてきた。



「まだ聞く覚悟はあるか?」


俺は強く頷いた。


なぜかこれは知っておかないとまずい気がしたからだ。


親父は再び語りだした。


「しばらくの間、娘が自決した事を村人達は知らずに過ごしていたんだ。

 娘が死んだ夜から村全体に呪いが掛かってしまった事も知らずにな・・。

 元々宝剣に宿っていた神は遠い昔から存在する位の高い神らしく、

 その神に娘が命と引き換えに呪いを掛けたことにより祟り神へと変化してしまった。

 次々と村には変死者や行方不明者が出たらしい。勿論役人、村人問わずにだ。

 困り果てた村人達が藁にもすがる思いで隣村にいる住職に助けを求めた。」



そこまで聞いて俺はハッと思った。



「その住職ってうちのご先祖様とか?」



親父は頷いた。



「そうだ。ご先祖様が村に来た時には役人は全ていなくなり、村人も1/3程に

 なっていたみたいだ。これはいかんと思ったご先祖様は呪いの根源を探した。

 そしてあの一族の家に入った瞬間、鼻を刺す異臭がした。そこで村人は初めて

 娘が自害した事を知った。娘の腹部に刺さったままの宝剣。そこから禍々しいほどの

 力を感じたご先祖様は自分一人では手におえんとの事で他の住職に助けを求めた。」


「7人の住職が集まり話あった結果、あまりに力が強大過ぎる為払う事は出来ないが、

 一時的に力を弱め封印する事はできるとの事だった。ただし、時が経過するにつれ

 封印が弱まる為20年に一度封印の儀式を行わないと復活してしまうと村人に

 説明した。結果、丸三日かけて封印の儀式を行い封印する事に成功したんだ。

 そして今後はうちの一族が管理する事で話は纏まった」

 

親父は一通り話終えると懐からタバコを取り出し火を点けた。



ここ一応神社なんだけどね。



話を聞き終えて何点か疑問が生まれた。



「ん?ちょっと待てよ・・封印されてるのになんで俺が?

 それに20年て確か夢の中でも言われた気が・・。」



すると親父が俺に突然頭を下げた。



「すまない。お前が2歳の時だ。封印の儀式を行った際に駄々をこねるお前を

 式場に連れてきてしまった。その時に奴に魅入られてしまったのだろう。

 お前はまだ幼かったし記憶にないと思っていたがその記憶が蘇った事で

 奴とお前との接点が出来てしまった。それに封印の儀式は後一ヶ月後だ。

 儀式が近づくにつれ奴の力は強くなっていく。儀式が終わるまでにお前が

 奴に取り込まれたら封印は無理だろう。」



「え?なんで俺が取り込まれると封印できないんだよ?」



もはや取り込まれる前提みたいな感じで嫌だったが、

疑問に思う事は全て聞こうと思った。



「それはな・・どんなにどら息子でもお前は我が一族の血を引いているんだ。

 その一族の血を取り込んでしまっては俺達でもどうする事もできない。

 他の神道の者に任せるにしても昔と違い力のある者はそう残ってはいないしな。

 とにかくお前はこれから儀式が終わるまで結界を張りそこに居てもらうしかない」



結界なんてできるんだと素直に驚いた。

意外にうちの親父頼りになるじゃーん。



「ただ結界ってどうやるの??」



親父は真剣な顔で俺に言った。



「まず1日3時間滝行だ。勿論全裸のちんちん丸出しでだぞ。

 それを3日間だ。」




「・・・・。」




長兄は笑いを堪えている。


「ちょ、ちょちょ、ちょちょちょっと待て!!こんな時にふざけてる場合かよ!

 それになんでフルチンで滝行しないとならんのさ」


もはや呆れてしまう。

息子の命が掛かっている時にこの親父は・・


「ふざけてはいないさ。結界に入るには心身共に清めないと無理だからな。

 オティンティンに関しては就職しない息子への罰として親父命令だ!」


もう言い返す気も失せたわ・・。

なんでもやってやろうじゃねーかよ!

まだ死にたくねーしな。



「それでいつから始めるんだ?」



「とりあえずG神社に行け。連絡しておくから。

 あそこならしっかり面倒見てくれる」



G神社かぁ・・。

怖いスキンヘッド坊さんの所かよ・・。



「それまで親父はどうすんだ?」

「俺は万が一に備えていろいろ手を打っておくさ。

 安心して行って来い。」



という事でG神社へと行く事となった。

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