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月と太陽の剣





 一瞬何か暖かいものに包まれた気がした。


 「ワハハハ!まだまだだな!シーグ!」


 この声は……?この懐かしくも力強いこの声は……?


 見ると、異形の兵士は倒れ、自分達を黒く大きな影が覆っている。


 影は振り向くとシーグに向かって微笑んだ。


 「……とうちゃん!」


 百戦錬磨の大男……大盗賊ゲバルトの勇姿がそこにはあった。


 ―危機に見舞われし時一度だけ“この世ならぬ大切な者”が加勢致す―


 あの、光輝く子供の言葉の意味が今やっと解った。 


 ゲバルトは、高貴なる魂に導かれ死者の国から戻って来たのだ。


 「とうちゃん!」


 張り詰めていた何かが弾け、父にすがろうとしたシーグだったが、その手は無情にもゲバルトの身体をすり抜けた。


 「とうちゃんの仕事はこれで終りだ。頑張れよシーグ、頑張って自分だけの宝を見付けるんだ。とうちゃんはいつでも見守っててやっからな」


 ゲバルトはそう云うと金色に輝く光の砂になり、天へ帰って行った。



 そうだ、いつまでも感傷に浸っている訳にはいかない。シーグは潤んだ目を拭うと、周りに異形の兵士が居ない事を確認し、ブロンウィンに云った。

 

 「俺、悪い奴をやっつけないと……姫さまは、危ないからここにいて」


 しかし、王女は青き瞳を激しく燃やし、かぶりをふる。

 

 「そうは行きませんわ、お姉さま!魔女を仕留めるには、銀の短剣と金の短剣が必要です」


 「短剣?」


 「銀の……月の短剣と呼ばれる物はこれです」


 ブロンウィンはさっき、魔女の額を斬りつけた、銀の短剣を見せた。


 「あっ……これは……」


 シーグは自分の腰に下げていた、鞣し革の袋から、青い宝石の金の短剣を取り出した。


 「そう!それです!それが太陽の短剣です」



 ―月の短剣は退魔の剣

 太陽の短剣は破魔の剣


 悪しきものを葬り去るには月の短剣で自由を奪い、太陽の短剣で心臓を指し貫くべし―


 何処かから声が聞こえる。あの、光輝く高貴なる魂……フラウヒルデ王女の声が。








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