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異形の兵士





 

 ……その瞬間。


 アーレフと首斬り人の姿は軽い爆発音と共に立ち込めた煙幕によって掻き消された。


 観衆が驚き、騒ぎたてる中、 絹を裂くような女の悲鳴が響き渡る。


 王妃が、否、王妃に化けた“悪しき者”が、額から血を流し、そしてその横には居るはずのない人物が立っていた。


 「ブロンウィン王女!」誰かが叫んだ。


 民衆は、驚き、静まり返った。


 端正な妖精のような美しい顔が険しく王妃を見詰め手には銀の短剣を握り締めている。


 「ヴェロア王国王女の名において命ずる。この処刑、早々に取り止めよ!」


 その声は美しく高く澄み、だが強く激しく刑場の隅々まで響いた。


 「おのれ、ヴェロアの小娘め……」


 “悪しき者”魔女サヴラはブロンウィンにつかみかかろうとしたが、そのまま、倒れた。

 見ると、全く動けない筈の王が、サヴラの足元にしがみついている。


 動かぬ身体をやっとの思いで動かし、その目は、慈悲深い以前の王の輝きを取り戻していた。


 「お父様……」


 ブロンウィンには解った。父王は勇気と力を振り絞り、自分を守ってくれたのだと。


 しかし、その喜びも束の間、サヴラが何やら叫ぶと刑場のあちらこちらから黒いものが湧いて出た。


 それは人に成りきれぬ人の姿を取りはじめる。


 明らかに人間と異なるその者達は、皮膚が鱗のような物で覆われ、背骨は曲がり、手足の先には鋭い爪がついていて、剣をたずさえ、甲冑を身に付けている。


 その異形の兵士達のあまりの恐ろしさに、ほとんどの民衆が刑場から逃げ出した。


 「おのれ…ヴェロアの小娘め!我が兵士達の餌となるがいい!」


 サヴラが手を翳すと、異形の兵士達は、ブロンウィンに襲いかかった。




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