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騎士の最期





 刑場には既に城や城下の者達が集まっていた。


 いつになく着飾った王妃と、虚ろな目を見開いたままの殆ど動くことの出来ない王は数人の兵士に守られ、王族用の席に居た。


 公開処刑はある意味“見せ物”だ。だが、今日は観衆の様子が違う。


 皆、手を胸の前で組み、祈っている。

 無論、王と王妃以外のほぼ全ての。


 この狂った茶番劇が、アーレフの首が繋がったまま終わる事を。


 しかし、そんな観衆の祈りも虚しく、大臣ゲーリングが舞台へ登り、羊皮紙に書かれた文言を朗々と読み上げた。


 「これより、騎士アーレフ・ローゼンマイヤーの斬首刑を執り行う」


 長々と大臣が罪状等を読み上げる中、シーグは針のように神経を研ぎ澄ましている。


 “その時”をたがえぬように。


 大臣の横では首斬り人が斧を研いでいる。

 頭から頭巾を被り、顔が見えない様にしているのは罪人の身内に恨まれないようになのだ。と、誰かが囁いていた。


  やがて後ろ手に縛られたてアーレフが、やはり首斬り人と同じような頭巾を被った兵士に連れられ、現れた。


 目には布で目隠しがされており、久し振りに見るその姿は憔悴しきっているように見える。


 大臣ゲーリングは、アーレフに何やら一言二言話すと、アーレフの口が開いた。 


 群衆のどよめきに掻き消されたその言葉を、大臣と兵士が聞き返した。


 「目隠しを取れと云っているのだ!」


 大臣は、抑えていた涙を溢れさせ、兵士は暫く躊躇していたが、云われた通り、目隠しの布を外した。


 アーレフの目が露になり、一瞬眩しそうな顔をしたが、その黒い瞳は闇夜の狼の様に何かを見据えていた。


 最期になるであろうこの光景を目に焼き付けているのか、騎士道にのっとり、処刑と云えども恥ずべき最期にならぬ様にとの決意なのか。


 ―マルテンは何処だ?― 


 シーグは今になってマルテンが居ない事に気付いた。

 大臣助手と云う肩書きなら、今、大臣の側に居ないのはおかしい。


 “その時”の合図はマルテンが出してくれるものと思っていたのだ。 


 心臓が早鐘のように鳴る。

 研ぎ澄まされた神経は弛緩しつつあった。


 アーレフは促されるままにひざまづき、断頭台に頭を乗せていた。 

 首斬り人が歩み寄り、斧の狙いを定め、その斧を頭上高く振り上げた。

 

 









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