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闇の審判






 ヴェロアに伝わる昔話は数々在るが、アーレフの思い浮かべたものは、あの“塔の王女”の物語だった。



 お姫様の弟君


 赤毛の王子と黒髪の王子


 赤毛の王子は父王の


 怒りに触れて追い出され


 王に成ることはかなわずに


 さすらいの旅に赴いた


 やがて戦で城は落ち


 黒髪の王子は戦死した


 生き残りし赤毛の王子


 長い歳月を経てヴェロアに戻り


 長い歳月を経てヴェロアを再建し


 王に成ることは叶わぬが


 やがて死にゆくその時に


 姉の思いを受け取った


 



 “塔の王女”の弟達も“双子”だった。


 一説によると片方は妾腹の王子で“双子”と云うのは語弊があるとの事だが、王女が赤毛の王子を助けたくて、故意に王に反感を買わせ、追い出すように仕向けたのは事実だろう。


 “双子”が忌み嫌われる。と云うのも此処から来てるのだろう。


 この一件以来、“双子は災いの前兆”として湾曲した解釈でこの話を聞いていた者が居たとしても不思議ではない。



 シーグは生まれてすぐに城から追い出された。


 昼と夜を別つ呪われた双子の片割れとして。


 

 ―呪いでは無い―


 アーレフの脳裏にそんな言葉が過った。


 では、シーグは赤毛の王子の様に、この城を救う為に、故意に追い出されたのか。



 この数奇な運命の縺れた糸がもう少しで解ける。そう思った時、牢屋の分厚い扉が蝶番の軋む音と共に開いた。




 やっと疑いが晴れた。と、思った。投獄されてから一度たりとも開いた事の無い強固な扉が開いたのだ。


 その開いた扉の向こうには、屈強な兵士を従えた大臣ゲーリングが居た。


 

 「騎士アーレフを王妃凌辱の罪により明後日、斬首刑に処す」


 朗々と書簡を読み上げた大臣は次の瞬間、泣き崩れ、兵士達に抱えられて去って云った。 


 そして重い音をさせて扉が閉められ、アーレフは暗い牢獄の中で、それよりも更に暗い闇に突き落とされた。











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