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賢者の見解






 マルテンは、城の者に聞き出した情報を集め、ある見解に達していた。


 「“ブロンウィン王女とシーグリンデ王女の件”そして、サヴラと云う老女を殺めてからの“王と王妃の変貌”この二つはまるで別物と云う気がしてならないのです」


 日はすでに落ち、牢の扉の覗き窓のマルテンの顔も見えなくなって来た。

 だが、低く落ち着いたその声はしっかりとアーレフの耳に届いて来る。


 「別物?では国に災いを為す“悪しき者”は二人居るというのですか?」 


 “二人”と云う単位さえ正確か解らない。そもそも、このような事象を起こす者は人間では無い可能性の方が高いのだ。


 「王と王妃の件は所謂いわゆる“悪しき者”の所業であるのは確実でしょう。王に首を刎ねられた老婆の呪いと考えて。しかし……」


 マルテンが口ごもる。その言葉の続きを云って良いものなのか考えあぐねている様子だ。

 しかし、ほんの少しの沈黙の後、話を続けた。


 「そのサヴラと云う者は死んではおりません」


 「馬鹿な……!王があの老婆の首を刎ねたのを何人もの城の者が目撃していたと云う。その者達が偽りを申したと云うのですか?」 


 思わず、アーレフの口調が強くなる。マルテンの言葉が真実ならば、あの時王は誰の首を刎ねたと云うのだろう?


 「老婆サヴラの亡骸はどうしました?」


 「亡骸?」


 「人間をあやめたのなら、その亡骸を始末した者が居りましょう、誰がその役目を任されたのですか?」


 そうだ、人間を一人殺めたのだ。切り離された首は血を撒き散らしながら転がり、頭を無くした胴体はその斬り口からおびただしい量の血を滝のように流していた筈だ。


 一人や二人で始末するには大変な筈。


 しかし、城の者で誰も老婆の亡骸を片付けたと云う者は居ない。


 数人の者は『サヴラの亡骸は塵芥になり消えた』とも証言していたのをアーレフは思い出した。


 「まさか……あのまじない師は……」


 覗き窓から幽かに頷く気配がする。


 「サヴラは、死んでは居りません。否、元々生きている人間では無いのです……」

 そう、ブロンウィン王女が気にかけていた“城に災いある時に必ず現れる者の名”これは偶然ではない。


 「……何故ならば、時を超えて現れた三人のサヴラは同じ人物だからです」


 

 しかし、アーレフは今ひとつ合点がいかない。 何故マルテンはそこまで断言出来るのか。まるで数百年前の出来事を見て来たかのように、三人のサヴラが同一人物だと云いきれるのか。 


 「マルテン殿……貴殿は何者なのですか?只の修道士上がりの盗賊とは思えない」


 「同じ質問を姫様にもされました。しかし、今は明かせません」


 扉越しに、マルテンが深い溜め息をいているのが解る。  


 「それは……貴殿の正体を私に明かす事によって“悪しき者”にもその正体と存在が知られてしまうかもしれない。と云う危惧からですか?」


 「その通りです。幸い“悪しき者”は私と若の存在に気付いていないようですし……これは私の推測なのですが、奴は二人の王女に手出しが出来ないのでは?」 


 「しかし既に王女達は呪われて……」 


 アーレフはそこまで云うと、先程マルテンが云った言葉を思い出した。

 「王女達は呪われている訳ではありません。昼と夜を別つ双子。一見、やまいか呪いのように見えますが、これは……」 


 「これは?」


 「答えはこの国に伝わる昔話の中にあるでしょう」


 マルテンはそれだけ云うと、気配を消した。










 

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