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寒波再襲来だったから――

『とあるとこの、とある少年たちのなんでもない日常 

    

             寒波再襲来だったから――』

 

 

 

 

 すっかり3月に入ったと言っても雪国地方はまだ寒い。寒波再襲来でまたも雪景色に早変わりだ。

 でも、週末はそれなりに暖かい日が続いたな。

 伊織の家の庭でキャッチボールをしたし、それにまぁ色々とご利益があったな。

 何があったかは、前回を見てくれ。ここで言うよりも分かるから。

 

 「誰に話してるんだ? 貴弘」

 「ああ、世界の果てにいる親友にエールをだな」

 「ああ、分かった。聞いた私が馬鹿だった。すまない」

 「それ、スンゲー侮辱されてる気がするんだが?」

 「気にするな。男ならぐずぐずするな」

 

 なんか、サラリと躱されたし。もっと会話を続けようぜ。

 折角のクラスメートとの下校よ。俺一人でコントやってる気分になったよ。

 なぁ、委員長さんよ。

 

 「なにを言いたいんだ、貴弘」

 「お、どうやらようやく心を読まれないようになったか。人間は、日々進化するのだよ」

 「いや、お前の思考にもはやついてこれん」

 「なるほどー! まだまだ読まれてるわけねー! アハーッ!」

 

 はぁ、一人で盛り上げるのってかなりの重労働よ?

 テレビに出てるお笑い芸人の苦労が分かるぜ。

 人から笑いを取ったり、無理してでも場を盛り上げるのは。

 もう一種の憧れが芽生えるね。俺に今欲しいスキルだし。


 「いい加減、独白をやめたらどうだ? なんだか変人に思われるぞ」

 「そー言うお前こそ、人の心を無闇に読むな。てか、プライバシーの侵害だぞ。

  そうだ! 『行列の出来る法律』に出して有罪かどうか調べてみよう」

 「馬鹿なことを言うな。読んでいると言うか、表情に出すぎだ」

 

 って、そこまで顔に出てるのか。ああ、そうか。分かったぜ。

 必死に場を盛り上げようとギャグキャラになってるから読まれるんだ。

 じゃあ、いつものようにシリアスモードで行くか。

 さぁ、征くぞクラス委員長――シリアスの貯蔵は十分か?

 

 「ってハックション! ああ、寒ぃ。寒波再襲来でまた雪国へと戻りやがって」

 

 いや、もう少し凝ったくしゃみをするべきだったか。

 あまりにも地味すぎるな。いや、マテ。今はシリアスモードだろうが。

 

 「少し薄着すぎたか。コートを羽織るか、学ランの下にセーターでも着たほうがよかったか」

 「しかし、セーターだと教室に入ったら暑くなるだろう。暖房が利いてるし。脱ぐのが面倒じゃないか?」

 「流石だな委員長。正論を突いてくる。よし、コートにするか」

 

 自室の壁にかけられているコートを思い出しながら、とぽとぽと歩く。

 隣に並んで歩く橘はマフラーをしてるが、スカートだから足元が寒いんじゃないだろうか?

 てか、俺が寒い。やはり薄着だったようで、身体の芯から徐々に体温が失っていく。

  

 「雪……か。通りで寒くなるな。夜になれば、また大雪かな」

 「そうだな。そういう日は、コタツで丸くな――ってックッション! ああ、寒い」

 

 くぅ、本格的にヤバい。走って、身体を温めるか。

 いや、仮にも友達。か――ってヤバいヤバい。女子を置いて帰るのも紳士道を反するな。

 なんて、悩んでいると意外な助っ人宣言が聞こえてきた。

 

 「まぁ、なんだ。寒いなら私のマフラーの半分を貸してやるぞ」


 …………な、なんだって―――――!!

 あまりのウルトラ・ブレイク・ショックだったためにリアクションが遅れた。

 ああ嬉しいが、いいのか。俺には伊織と言う――変だが――彼女がいるし。

 いや、これは俺の生存にかかわるんだ。今回は仕方ない。そう、仕方ないんだ。

 

 「い、いいのか……? 殴ってりはしないだろうな?」

 「だったら誰が言うか。殴らないから早く巻け。ああ、もういい。私が巻く」

 

 顔を紅くしながら、無理矢理俺の首にマフラーを巻きつける。

 真っ赤なマフラーが俺と橘を繋ぐ。一体、どんな顔をすればいい。

 恐らく、俺の顔も真っ赤だろう。耳が熱くなってるのが分かる。

 マフラーを巻かれたことで首の血脈が温められて、体温が僅かながらも上がる。

 いや、もうバクバクと心臓がハイ・ビートを刻んでいるからもう熱いったらありゃしない。

 

 「あー、とりあえずだな。コレは、他言無言だな」

 「だな」

 

 真っ赤して、俯きながら頷く橘。

 橘の腰まで伸びた絹のような黒髪が、北風に晒されて靡く姿は綺麗だと思った。

 

 

 

 …………俺の明日はどっちだ!?

   

 

 

 

 

 

            THE・END

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