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コタツよりも――

『とあるとこの、とある少年たちのなんでもない日常


               コタツよりも――』





 ガッガッガッガッガッガッガッ――!


 けたたましい音量がテレビから発され、画面に映るゾンビ共を蹴散らしていく。

 先ほどの音は銃声だ。紅いコートを着た銀髪の男が両手の銃を撃ち放したのだ。

 もっともそいつを操ってるのは、コタツに入ってぬくぬくとしている俺のわけだが。

 無論、コタツの上にはミカンと万全のセッティングだ。

 わらわらと出てくるゾンビ共を撃ち倒し、または背中に背負ってる大剣で斬り倒していく。

 轟と唸る斬撃はゾンビを一刀両断し、二丁の銃からの銃撃はゾンビの頭を身体を吹き飛ばす。

 ゾンビ共に攻撃する度に震えるコントローラー。

 この振動がまた俺を快感に導いて、攻撃の手を止められない。

 俺はゾンビ共の死骸を踏み散らしながら、コントローラーを動かしていく。



            *



 ザンッ!


 最後のゾンビ共を斬り倒して、一息を入れる。

 さっきから尿意を我慢していたからトイレに行くことにする。

 コタツから出ると冷たい空気が身を蝕んでいく。

 さっさと行って帰ってくるとしよう。寒さにはどうも慣れん。

 トイレに行く途中、先ほどのゲームを思う。

 もし、あんな映画やゲームの中でしかいない存在が実在していたのなら。

 もし、実在していたのならゲームの主人公のように狩る存在もいるのか。

 だったら自分も触れてみたいな、と思う。

 ほら。あんな世界があったら誰だって触れてみたいだろ? え、死ぬかもしれない?

 そんなの気にしてたら折角のゲームみたいな世界に生きていけないぜ。

 もっとも俺もあんな奴らと戦う気はしない。サポート役につければ十分さ。

 前線で戦うのはあいつらで、後方から援護攻撃するみたいな感じでいい。


 と、思いながらもあんな世界は存在するはずがなくて。

 あったら今の情報社会で隠しきれるとは思わないね。

 吸血鬼が出て、一家の血を吸ったとしても恐らくニュースに流れるだろうしね。

 と、トイレトイレ。早く済ましてコタツに帰ろう。

 あの女神のような温もりを与えくださるコタツの元に。

 まぁ、女神の温もりなんて感じたことないからどうなのか知らないが。

 


            *



 トイレを済まし、コタツ様の元に帰ろうとしたらチャイムが鳴った。

 ピンポーン、とごくあり溢れた音。

 出ないわけにもいかず、玄関に向かう。あー、上着でも着ればよかったがもういいや。


 「はいはーい。今、開けますから~」


 身震いしながら家の中よりもさらに寒い外への扉を開ける。

 うわっ! さ、さみぃ。やっぱり上着は必要であったか。

 ええい。もう後の祭りだ。早く来訪者の用件でも済ましてコタツに帰ればいいだけだ。


 意を決した俺は扉を大きく開き、顔を上げる。

 するとそこにいたのはなんと――藁を身につけ、やたらとデカイ赤い鬼の仮面を被り、包丁を持った人(?)がいた。

 要するに秋田名物『なまはげ』――悪い子はいねぇが~、と言いながら子供の成長を祈る儀式だったか。よく覚えておらん。

 それより目の前の物体をどうにかしないとな。世界広しと言えど、こんな馬鹿げたことするのは只一人。


 「なにやってんだ伊織。遂に痴呆症が限界に達したか」


 自分の幼馴染であり、恋人に呆れた声で応える。

 するとなまはげは仮面を取り、その下にはむぅとふっくれ顔の伊織がいた。


 「なんでバレたんかな~。完璧な変装だったはずなのに~」


 いや、そんな馬鹿げた思考を持つのはお前しかおらんよ。少なくともこの辺じゃあな。

 とりあえず、用件だけ聞く。


 「で、なにしにきたんだ」

 「あ、今日は親がいないんでしょ。だから今日はあたしが夕御飯を作ろかなと」


 俺は感動したね。やはり持つべきものは彼女! むさ苦しい男の友情じゃないね。

 コタツ以上の温かさが篭った彼女の夕飯! それを超える温かみはあるだろうか。いや、ないね。


 俺は伊織を迎い入れ、扉を閉める。

 時間は4時――あと少しでもしたら料理でもし始めるだろうか。

 彼女にエプロン。勿論、は……じゃなくてもう最高のシチュエーションだね。


 「またゲームしてる~。そんな暇があったら彼女をデートに誘うとか思わないのー」

 「馬鹿言え。こんな寒い日に外出る奴の気が知れてる」

 「雪国育ちなのに相変わらずだねー」


 とか言いながらも伊織もコタツに入るわけで。そして、俺も入るわけで。


 「せっまーい。出てよー」

 「なにを言う! この俺に凍え死にしろというのか」


 なんて下らないことを言い合いながらもコタツ以上に暖かい彼女との時間を過ごしていくのであった。






 勿論、あの後どうなったのかは個人の予想通りだったりじゃなかったり。






               THE・END


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