第9話 アクールの水精
場所は移り教会の裏手、結構な広さがあるこの場所で頭から深くかぶっていたローブを外し、青い髪を出したシステアとリスターがお互い向かい合っていた。
リスターの手には訓練用の木刀が握られている、まさに一触即発という雰囲気だった。
リスター「あんた女だったのかよ」
システア「声を聞いたら分かるだろう」
リスター「ずっとローブ深くかぶってた上にまだ合うのは2度目なんだから気づかねえって」
システア「そうか?1度目はともかく今回はてっきりアリスのことで頭がいっぱいだったのかと思ったんだが」
リスター「な!?」
アリス「リスターってば、そんなに心配してくれてたんだね」
ティオ「う~ん、まあ心配もあるとは思うけど・・・」
アラン「若いですね~」
グゥ「ウォン!」
リスター「そ・・・そんなことより早く勝負だ!たとえ女でも手加減はしないからな!」
システア「ああ、全力で来い」
その言葉を最後に辺りの雰囲気が張り詰めた。
ティオ「リスター・・・本気だね」
アリス「うん、真剣な顔してる」
実はリスターは将来自警団に入ることを目的にしているため、よく他の団員に混じって訓練している、実際かなり強く、もう十分に1人前と呼べる位の力はあった。
だが・・・
リスター(打ち込めねえ・・・)
システアはただ立っているだけで特に何もしていないのだが、リスターはまったく動けないでいた。
しかし、その実システアはたとえリスターがどう動いても即座に対応できるように常に動作一つまで監視していたのだ。
システア「どうした、来ないのか?」
リスター「っち・・・うおおおおおおお!」
このままでは埒が明かないとシステアの挑発を受けリスターが真正面から突っ込む。
システア「正面からとはいい度胸だ!」
リスターが木刀を振り上げてシステアに切りかかる。
だがそれをシステアは造作も無く避ける。
さらに横薙ぎに木刀を振るうリスターだがシステアは後方に飛びこれも避ける。
リスターはそれを追い再び木刀を何度も振るうがまったく当たらない。
システア「分かり易過ぎるぞ?」
リスター「くっそ!」
そんな攻撃がしばらく続きリスターも息が上がってきたところ。
システアは口を開く
システア「もうやめろ、お前では私に術を使わせることも出来ない」
それを聞いたリスターは剣を振るうのをやめ、目の前のシステアを見据えて言った。
リスター「あんたが強いのは理解した。俺なんかじゃ悔しいが逆立ちしたって勝てないかもな」
システア「案外物分りが良いな、どんな時も冷静な判断が出来る奴は長生きできる」
納得したかと一瞬気を抜いたシステア、しかし次の瞬間
リスター「でも1発くらい入れねえと納得できねええええええ!!」
リスターは木刀をシステアに投げつけた。
咄嗟にそれをシステアは避ける、だが一瞬の隙を突かれたシステアの目の前にはリスターの拳が迫っていた。
そして
システア「風よ、去なせ」
システアがそう言うと、システアの周りに風の鎧が出現しリスターの拳を受け流した。
そして、体制を崩したリスターの腹に蹴りを入れる。
リスター「ぐふ!」
そのままリスターは後ろに転がった。
その瞬間、勝負は決まった。
システア「すまん!つい反射的に蹴ってしまった」
リスター「い・・・いや、大丈夫だ・・・」
そしてリスターはよろめきながら立ち上がる。
システア「まったく、あそこで突っ込んでくるとは」
リスター「1発も喰らわせずに負けるってのは悔しかったからな」
リスター「ま、結局だめだったけどな」
システア「かなり無茶だったが私に魔法を使わせたんだ。そこは誇っていい」
勝負を終えた二人からはピリピリした雰囲気は消えていた。
そして勝負を見ていたアリス達が集まってくる。
アリス「おつかれさま、リスター」
ティオ「システアさん強いんですね!びっくりしました。」
アラン「いいものを見せてもらいました、風の魔法も実にお上手で、さすがはアクールの水精、他属性の魔法も実にお上手で」
アリス「アクールの水精?」
アラン「彼女の通り名です、水の魔法にかけては天才と言われている魔道師なんですよ、ちなみにアクールは水の魔法で発展している国で、彼女の故郷でもあります。」
ティオ「アクールの出身だったんですか、だから髪が青いんですね・・・って、アラン神父・・・知ってたんですか?」
アランは白々しくわらって誤魔化した。
リスター「なんでローブをかぶってたんだ?」
システア「この町には異国の人間が少ない、あまり目立ちたくなかったんだ」
この世界では国や地域によって髪の色が変わる、この国キャナルは大地の属性が強く現れているため、
その国の人間の髪の色は茶色っぽくなる。
水の国アクールでは青、火の国フレリアでは赤、風の国ウィルデンでは緑の色の髪をした人間が多い、
ちなみにこの世界にある国はこの4国のみである。
システア「で?納得してもらえたか?」
リスター「ああ、付き合ってもらって悪かったな、戦ってわかった。確かにあんたなら信用できる、だ
けどどうしても認めたくなくてさ・・・」
気持ちはわかると、システアはリスターに告げアリスの方を向く、そして口を開く。
システア「お前はいい友達を持ったな」
アリス「はい、ありがとうございます」
システア「それで、まだ直接返事を聞いていないが、どうするんだ?」
アリス「私を・・・システアさんの弟子にしてください」
システア「よく決断したな、私が持てる全ての知識や技術をお前に教えてやる」
アリス「はい!よろしくお願いします!」
そして一悶着あったがアリスは正式にシステアに弟子入りして共に旅に出ることが決まった。
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