第23話 標的発見
森の中はとても静かだった。
凶暴な魔物が潜んでいると言う気配も今の所は無い。
しかし一行は気を緩めずにさらに奥へと足を踏み入れる。
アリス「情報にあった通り、別の場所に移動したんでしょうか?」
システア「まだわからない、だがいつ襲ってくるかも分からない、気は抜くな」
リック「でもあいつらが近くに居れば羽音ですぐ分かるでしょうし、そこまで気を張る必要は無いのでは?」
ミナ「っふ、甘いなリッ君!襲ってくるのが標的だけとは限らない、ここはもう町じゃないんだからどんな自体が起きても大丈夫なように備えておいて損はないんだよ!」
リック「確かに・・・そうですね、気をつけます。」
そして一行はしばらく歩いたがやはり標的の姿は確認できなかった。
そこでシステアは一つの提案をした。
ミナ「二手に別れるね~」
リック「確かに探索範囲は広がりますが」
アリス「大丈夫なんでしょうか」
システア「無論、戦力が分断される分危険も増すが、このまま全員で動いていても見つかる保障は無い、戦う以前に標的が見つからなければ意味が無いからな」
リック「確かにそうですが・・・」
ミナ「別に私は二手に分かれることについて異論はないけど、組み合わせは?」
システア「私とミナは別行動確定だ。どっちかにベテランがついていた方が安心出来る」
リック「待ってください!忘れてませんか!?僕はアリスさんの実力を見るのも兼ねてこの依頼を受けているんですよ!?」
システア「無論、覚えている、だからどちらかが標的を発見すれば合図を出せば良い」
ミナ「合図?」
システア「花火の要領だ。後はわかるな?」
ミナ「なるほど、打ち上げるのね」
アリス「花火?」
グゥ「クゥ~ン?」
リック「簡単に言うと、空で火の玉を爆発させるんですよ」
アリス「へぇ~」
システア「発見すればお互い合流するまで何度か打ち上げる、そういうことだから、アリスは私と来い」
アリス「はい」
グゥ「ウォン!」
リック「何がそういうことなんですか!?」
システア「慣れないペアで行動するよりお互い連携が取りやすいペアで行動するのが無難だろう」
リック「でも僕は花火出せますよ!僕と行動した方が」
システア「心配要らない、私も出せる」
ミナ「さあ!リッ君!久しぶりに二人でがんばろうね!!」
そしてペアは割とすんなり決まった。
リック「(最初からこのつもりだったのか)」
リックは心の中で悪態をつくが姉の方はそんな弟の心情を察することなくとても楽しそうに話かけてくる。
ミナ「二人で行動するのも久しぶりだね~」
リック「・・・そうだね」
ミナ「昔は良く一緒にお出掛けしてたのに最近は全然行ってなかったしね~」
リック「・・・そうだね」
ミナ「たまには二人でどこかにお出掛けするのもいいかもね!」
リック「姉さんは余裕があっていいね」
ミナ「うん?」
リック「姉さんが僕位の年齢の時は、もう魔道師として注目を集めてた。若き期待の新人って言われて、その後、ギルドの受け付けも任されて」
ミナ「え?」
リック「その点、僕はどれだけがんばっても姉さんの弟だと、天才の弟だって」
ミナ「そんなこと!」
リック「いや、分かってるんだ。それで姉さんを嫌うのはお門違いだって、姉さんは何も悪くないって、でもどうしてもね・・・」
ミナ「リック・・・リックは」
ミナが何かを言おうとした時、リックはそれを制して耳を澄ました。
すると、少し離れた所から微かに羽音が聞こえてきた。
ミナ「この音は・・・」
リック「間違いなさそうだ」
その音は間違いなく標的の羽音、二人は互いに目配せすると標的に向かって走り出した。
走っている途中にミナが火の玉を作り出し、空に向かって打ち出した。
少し走ると標的もこちらに気付いたのか向こうからも近づいて来る。
互いに近づくにつれ、その羽音はうるさいくらいにまで感じるようになった。
そして、標的も視界に入る、かなりの数だ。
リック「標的確認、姉さん!気を抜かないように!」
ミナ「大丈夫、リッ君も気をつけてね?」
そのお互いの言葉を合図に、標的の魔物との戦闘が始まった。