第20話 宿屋の女の子
ギルドを後にしたアリス達は宿に向かって日が傾いた道を歩いていた。
横で歩いているアリスは腑に落ちないという顔をしていたのでシステアが話し始めた。
システア「なんでピクニックなんて言ったか気になってるのか?」
アリス「はい、あんなに楽しそうだったのにちょっとひどいと思います・・・」
グゥ「クゥ~ン?」
システア「あいつ、面倒事はあんまりしない主義だからな、ああでも言わないと来ないかもしれなかったからだ」
アリス「なんでミナさんを誘ったんですか?私はガルシアさんを呼ぶと思ったんですけど」
システア「今回はリックの事でミナに来てもらう必要があった」
アリス「リックの?」
システア「リックが私に弟子入り志願していただろう?」
アリス「はい・・・」
システア「でもな、リックは私の弟子には向いてないんだ」
アリス「?」
システア「あいつが主力に使う属性は火、対して私は水だ。私は一通りの属性魔法が使えるが、リックの主力の火の魔法に関しては、私より得意な使い手が近くにいる、それなら、その人間に教えを請う方がリックのためになるはずだろう?」
アリス「でもリックと同じ属性が得意の魔道師って・・・ミナさん?」
システア「そうだ、リックの姉、ミナは火の魔法に関しては私も天才だと思っている」
アリス「そうは見えなかったですけど・・・って、システアさんはもしかしてリックをミナさんの弟子にするつもりなんですか?」
システア「もうずっと前からそのつもりだった。師にするなら自分に合った人間の方がいいだろう、だがリックの奴、どうしてもミナには教わりたくないようでな、ミナの方はリックが言ってくればすぐ弟子に出来るよう準備はしているんだが・・・ミナはリックの意思を尊重しているから自分からは弟子にしてやるとは言わないだろうし」
アリス「なんでそんなに嫌がるんですか?兄弟なら気兼ねなく教えてもらえそうな物なのに・・・」
システア「その辺りはリックにしかわからないだろう、とにかく、リックもミナと同様火の魔法に関して光るものを持っている、だから私も出来ればミナに任せたいんだ。」
アリス「意外とリックのこと心配していたんですね?」
システア「あの二人を見ているとイライラするだけだ」
と、話をしている内に宿に着いた。
二人は早速1階の酒場で夕食を取ることにした。
食事を待っていると、料理を持った10歳前後の女の子が、お盆に料理を載せて歩いてきた。
女の子「お、お待たせしました。リブナルのスープ、お持ちしました!」
そう言いながら、女の子はフラフラと二人分のスープを持って近づいてくる、何となく嫌な予感がしたアリスは手伝おうと思ったが、その瞬間。
女の子「あ!」
やはりと言うべきか、つまずいてお盆が空を舞い、そのお盆に乗っていた皿がアリスの方へ飛んできた。
その時、アリスはとても冷静に心の中で突っ込んだ。
アリス(やっぱりそうなるんだよね・・・)
などと考えた時、横から風が吹いたかと思ったら向かってくるスープと皿を誰もいない通路の方に吹き飛ばした。
女の子「え・・・?」
つまずいて転んだ女の子は、その光景を見ると、立ち上がり驚いた顔をした。
と、同時に厨房の方からこの宿の女将、ソフィアさんが早足でやってきた。
ソフィアさんは、すぐに女の子の方に顔を向けて言った。
ソフィア「なにをやってるんだいルーシー!」
ルーシー「あ、あの、少しでもお手伝いしたくて・・・」
ソフィア「気持ちは嬉しいがあんたに仕事はまだ無理だよ、すまないね、あんた達、服は大丈夫かい?」
アリス「私は大丈夫です。」
ソフィア「すぐに新しいスープを持ってくるからね」
ルーシー「ごめんなさい・・・」
システア「気にしないでくれ、それよりその子は娘か?」
ソフィア「いや、親戚の子供だよ、ここで少しの間だけ預かることになったんだよ」
システア「そうか、こんにちは、システアだ。よろしく」
アリス「私はアリス、よろしくね?」
ルーシー「ル、ルーシーです、よろしくお願いします・・・」
挨拶を済ました所でソフィアが再びルーシーに言った。
ソフィア「ほら、早く奥に戻りなさい、床の掃除はしておくから」
ルーシー「はい・・・」
そう言うとルーシーは少々落ち込み気味で店の奥へと戻っていった。
アリス「元気無かったですね」
システア「ああ」
ソフィア「少し言い過ぎたかね・・」
そして、アリス達は新しく運ばれてきた食事を取り、シャワーで汗を流し、明日に備えて早めに床についた。
随分と間を空けてしまいました。
読んでくれている皆さん、申し訳ありませんでした。
不定期でもしっかり更新していけるようがんばります。