第11話 道中の自主訓練
この国、キャナルの首都までおよそ馬車で2日、それまで時間はたっぷりある。
馬車は4人ほど乗れる位の大きさで床にはグゥが寝そべっている。
アリスとシステアの二人は向かい合うように座っていて、今後のことについての話をしていた。
システア「やはり最低限、自分の身を守れるくらいの実力はつけなければな」
アリス「じゃあやっぱり接近戦の訓練とかですか?」
システア「まあ、それも大事だがお前は魔道師になるんだから今は魔法を覚えた方がいいだろう」
アリス「じゃあシステアさんがレッグベアを倒したときに使った魔法が使いたいです!」
システア「ああ、言い忘れていた。お前にあれは使えない」
アリス「ええ・・・そうですか・・・あ、じゃあリスターの攻撃を受け流したあの風の魔法がいいです!」
システア「あれも無理だ」
アリス「そ・・・それじゃあファイアーボールとか・・・」
システア「言い忘れていたが、お前に風、水、火、地属性の魔法は使えない」
システアはきっぱりと言い放った。
アリスは一瞬呆然となったがすぐにシステアに理由を聞く
アリス「な・・・なんでですか!?」
システア「お前には特殊属性の魔法に適性がある、だから他の属性は使えない」
アリス「へ?」
システア「特殊属性だ。それも時、幻、空の3属性を使える可能性がある」
アリス「な!?」
システア「面白いだろ?だからお前を弟子にしたんだ」
アリス「面白いって・・・それだけのために・・・?」
システア「無論それだけじゃない、お前のその才能を開花させたいという思いも勿論ある」
アリス「むぅ・・・でも私、検査受けたんですけどなんの反応もありませんでしたよ?」
システア「刻石か、お前の場合3属性の適正を持ってたからな、元々そんな事例は今まで無かった。何らかの理由で反応が遅れたんだろう。」
アリス「で・・・でも、それが本当だとして私にどんな魔法が使えるんですか?特殊属性の魔法なんて1つも知らないんですが・・・」
システア「そこは心配するな、自分の手に負えない奴を弟子になんてしない」
そして、システアは懐から古びたノートのような物を取り出した。
アリスはそれを渡され中を見てみると、そこにはぎっしりと特殊属性の扱う主な魔法が記されていた。わかりやすく解説や、たまに絵で説明しているところもあった。
システア「私が世界中回って書き記した魔道書だ、1冊しかないからな、絶対無くすなよ?」
この世界の魔道書は、見たら命を落とすとか、呪われるとかは無く、単に魔法を使うためのコツや、呪文等を記した物であり、魔道師なら皆持っている魔法の取扱説明書のようなものだ。
腕のいい魔道師などは、自分が新しく作った魔法などを書き記したりするものもいる、そしてその魔道師が死んで、さらにそれを継ぐ弟子や家族がいないときは、魔道師ギルドがそれを預かり、よほど危険な魔法ではない限り全ての魔道師に開放するのだ。
無論、余程危険だと判断された場合はその場ですぐ焼き討ちとなる。
アリス「でも・・・これってシステアさんの大切な物では?」
システア「どうせ私には意味の無い物だ。使える奴が持っているのが1番だ」
アリス「あ、ありがとうございます!」
システア「しばらくは自力で調べて試してみろ、分からない所がある時は私に聞け。あと、危なそうな魔法は馬車の中ではやるなよ?」
それだけ言うとシステアはしばらく寝ると言って横になってしまった。
アリス「なんか・・・すごい放任主義・・・」
グゥ「クゥ~ン」
そして、数時間が経ち、辺りが少し暗くなった頃、目の前に休憩所が見えてきた。
休憩所は、その道を通る馬車や旅人のための施設で、簡単な食事や、寝床などを提供してくれる。
無論、お金は必要だが。
休憩所に入ると、二人は早速部屋を借りるために、この施設の管理人の所へと向かった。