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パン食べよ

作者: だじ
掲載日:2026/02/15

 「ゴーンゴーン」他の大学よりもちょっと特別な音のチャイムがなり先生は焦ったように僕にはちんぷんかんぷんな説明を早口で終わらせ講義を終了する。周りの学生たちが一斉に気を緩め筆記用具をしまうのと同じように僕も帰り支度をする。日焼けし色褪せてきたリュックの口を開け決まった位置にノートと筆箱をしまう。講義内容がさっぱりでも最低限学ぶ姿勢を見せることが礼儀であると考えている僕はささやかな達成感に満たされる。

他の学生たちがほとんど退席していった教室から僕もリュックを背負い出ていく。少し幅が狭い階段に靴の角度を合わせながら降り、人に当たらないように慎重に扉を開け外に出る。途端、強烈な日光を浴びる。溜め込んだレポートで徹夜明けの僕を浄化してしまうには十分すぎる日差しの下から、素早く陰に逃げ込む。

さて今日の講義はこれで終わり。時間は12時40分。ちょうどお昼時である。中庭では学生たちが各々の方法で昼食をとっている。だがしかし私はこの後の行き先が決まっている。徹夜明けの僕が自らの機嫌をとるための儀式だ。

バスに気をつけつつ門をでて左に曲がる。道には他の学生がいて皆、日差しから逃げるように下を向いて歩いている。僕もその隊列になるべく自然に加わり歩いていく。いつもは引っ掛かる信号が珍しく青だったので右に曲がる。次の信号はスルーし直進。美味しそうなカレー屋さん、煙草の煙、きっついコーヒーの匂いがする喫茶店、ガソリンスタンドの前にあるちょうど右半分にだけ葉を生い茂らせた木もスルー。次は右に曲がり歩道橋を登っていく。たぶん下の道よりも歩道橋のほうがプラス二度くらい暑いんだろうなんて考えながら歩く。いかにも外国っぽいデザインのシールがめちゃくちゃに貼られた看板を通り過ぎる。流石に下ネタはやめてほしい。左折し階段を降りる。大層な名前のお酒が揃えられたうどん屋、テラス席があまりに小さすぎるイタリアンを過ぎ一旦停止。ここの交差点は自転車が突っ込んでくるため気をつけなくてはいけない。

ガラス張りのビル、大企業のビル、アイスが美味しそうなホテルをすぎ交差点前で右に曲がる。いまいちピンとこない石碑を横目に直進。そして左折をするのだがその前に気をつけることが一点。それは息を止めること。この先には追いやられて来た喫煙者たちの集まる公園がある。その前を他と同じように通ると煙でたちまち燻製にされてしまうからである。

長いこと工事中のビルの奥にあったであろう何かを妄想しつつ歩き左へ。そうすると一気に人が増える。自分が都にいることに気づく。僕は覚悟を決めこの大学生活で培った人の合間を縫って進んでいくというスキルによって直進していく。たどり着くのは中央口。交差したエスカレーターで地下二階へ。

すると一軒のパン屋さんが見えてくる。そう、こここそが第一の目的地ちょっとお高めだがお気に入りのパン屋さん。慣れた手つきでトレーとトングをとる。僕はパンの前でトングをカチカチしないタイプ。見落としがないように全てのパンに目を通した後、結局いつもと同じパンたちを三つ購入。いつか店内で食べてみたいなんて妄想しながらお金を払い、袋を受け取る。選んだパンが何かは後のお楽しみ。

後ろに数組の列ができているため僕は足早に退店する。エスカレーターで地上へ。少し歩いて再度エスカレーターで上へ登っていく。目的の階層で外れる。広間のモニュメントには目もくれず人の少ないテラス席へ。こここそ第二の目的地。芝生でふかふかの席に座る。少し僕には高いがだからこそ足をブラブラさせるのが楽しい。上空に広がる青空、小さいころによく行っていた商業施設、ついたばかりの列車から降りてくる人たちでごった返しているホーム、近くの席ではお昼休みのサラリーマンがリラックスした様子でお弁当を食べている。

僕はリュックから講義中眠らないようにチビチビと飲んでいたコーヒーを取り出す。ちょっぴり甘めな微糖のやつ。ブラックは匂いが苦手。いつもカバンに入れているアルコールのついてないウェットティッシュで手を隅々まで拭き、綺麗にしてからいただきます。お洒落な袋から一つ目のパンを取り出す。

さて期待されているであろう僕のパンチョイス。先頭バッターは優しさで包んでくれるメロンパン。あんまりぼこぼこしてない食べやすいやつ。フォルムの美しさに思わず笑みが溢れる。やっぱりメロンパンは外せない。店員さんが入れてくれた袋から少しパンをはみ出させ、大きく口を開けてかぶりつく。甘い。サックサクの食感と口に広がるバターの香り。満足感に包まれる。なおボロボロ落ちやすいところはご愛嬌である。美味しい。ずっと糖分が足りてなかった頭にも甘さが染み渡っていく。二口三口と続いていく。

あっという間にメロンパンを食べ終わった僕は落としたパンくずを袋に集め結ぶ。口内がパサパサだ。ここでコーヒー。一気に潤いを取り戻していく。

さてさて甘いパンの次に何がくるか聡明な読者諸君ならばお分かりだろう。そう。技巧派のしょっっぱいやつ、ベーコンエピ。エピの意味はわからない。でも口に出したくなる言葉、ベーコンエピ。この店のベーコンエピはマスタードが入ってないやつ。だからこそしょっぱさが際立つ。なお僕がマスタードの入ったやつも大好きであることはここで明言させていただきたい。どちらにも良さがあるというものだ。誤解を生まない保険をかけたところで袋から少しだけパンを取り出し、食す。先ほどのメロンパンと違い口を大きく開けず一口サイズで食べていけるのもベーコンエピのいいところ。うまい。固めのパン生地としょっぱめのベーコン。まさに今の僕が求めていた味。噛みごたえ十分。この硬さがクセになる。

 これもあっという間に食べ終わりコーヒーで一旦リセットして、一息ついたところでさあ、ついに最後のパンの入場だ。締めはそう、みんな大好きウインナーロール。何を隠そう僕は、このウインナーロールとは10年以上のお付き合い。幼い頃からの思い出のパンである。おっとご安心を。決して私は思い出だけでこのウインナーロールを選んだ訳ではない。食べればわかるこの魅力。なので早速食べましょう。大きくかぶりつく。噛んだ途端に溢れる肉汁。これぞ出来立ての良さ。今日の僕は運が良かったようだ。ケチャプの味もベスト。まさにこれこそウインナーロール。ふわふわのパンとパリパリのウインナーこそ最高の組み合わせ。三つ目のパンでも飽きることがない食感。まさに最後に相応しいパンだ。

最後の一口を終えコーヒーを一口。今更ながらに幼かったあの頃から大人になった私に思いを馳せつつごちそうさまでした。パンのゴミを一つにまとめ、すぐ横のゴミ箱に捨てる。コーヒーも定位置に片付けて席を立つ。ミッション完了。このご褒美がないと僕の中の僕が機嫌を損ねてしまう。さて帰るとしましょう。どれだけコーヒーを飲もうがゆったりリフレッシュしようが体の機嫌は寝ないと取れない。その証拠にさっきからずっと深夜テンションが若干抜けていない。テラスの側の階段をおり人通りの多い通路に合流し、改札を通っていく。それではみなさんさようなら。私は今から帰って寝ます。また次回をお楽しみに。


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