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忘れられた神、復活です  作者: 森田季節


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4 竜神、いろんな人間の夢に出てくる

 竜神ラガシャと話していて気づかなかったが、思ったより周囲が暗くなっていた。

 谷筋の小さな滝の前にいたからか、日暮れが少し近い気がする。光が入ってきづらい場所なのだ。



「げっ……。宿のあるところまで急がないと、山道で夜になるな……」



 冒険者の野宿そのものは珍しくないが、治癒師一人での野宿は現実的じゃない。オオカミ一匹退治できない可能性が高い。これまでも必ず宿に泊まっていた。



「ああ、それぐらいはどうにかできますです。ほら、(ちん)をごらんなさい」



 竜神ラガシャが偉そうに言った。だが、偉そうにするだけの根拠はあった。



 ぱぁぁぁっ!

 淡い黄色い光でラガシャが発光している。



「おお……神々しいな、たしかに神っぽい……」


「そうでしょう、そうでしょう。ユートが(ちん)のことを信仰した結果です。やはり小さいことでもこつこつとやっていくべきですね」


「信仰したっけ……?」


(ちん)を讃える歌を歌ったではありませんか。あれが信仰の根拠なのです」



 全然信心がない状態で歌ったけど、そこは問題ないらしい。



 それと、やはり竜神ラガシャが光っているインパクトは強い。一気に神々しく見える。

 こんなのが目の前にいきなり現れたら、無意識のうちに跪いて祈ってしまうだろう。これを子供のイタズラだと思う奴はどんなリアリストでもいないと思う。



「ところで、ユート、あなた、ずっと(ちん)にタメ口ですね」


「あっ、そういやそうだった。敬語のほうがいいなら変えるけど」


「そんなノリで敬語にされても敬意がこもってないので無意味です。まあ、あなたは竜神ラガシャの序列第一位の神官ということで特別にタメ口を許しましょう」


「ちなみにほかに神官はいるのか?」


「いないです」





 序列第一位と同時に序列最下位でもあるのか……。





 しばらくすると、発光は止まった。長くやりすぎると疲れてくるらしい。



「それで、宿がない問題は発光でどうにかなるのか?」


(ちん)に案があります。ですが、事前に説明して失敗したら恥ずかしいので言いません」



 こんなことだから、信仰が失われたんじゃないのか。



「この瞑想の滝へ至る分岐のところまで戻って、近くのクリエスタの町へ行ってください。そこで、『旅の修行僧だが竜神ラガシャの信仰を復活させたいので、しばらく逗留させてくれ』と伝えるのです」



 本当に信じていいのかわからないが、神官になったのだから信じるしかないか。








 滝への分かれ道のところまで戻って北へ少し進むと、街道沿いに小さな集落が現れた。ここがクリエスタの町か。

 ちなみにラガシャはついてこなかった。まあ、ついてこられても、あいつの姿はほかの人間には見えないだろうし、見えたら見えたで神じゃなくて子供と思われるおそれがあるし、ついてこないほうが気楽ではある。



 ただ……町なのかと問われると……限りなく村だな。



 店舗は日用品を売ってる何でも屋のような店ぐらいと、食堂は二軒のみ。ただ、そのうち一軒は「閉まってます」とプレートがかかっていて、これ、一か月前からずっと閉まってるのではという疑いがある。



 宿もボロいのが一箇所だけだろうと思ったが、なんと三軒もあった。

 そうか、街道が通ってるから、宿の需要は多いんだな。町の前後は山や森を通るから、夕方にこの町に着いたならここで一泊するしかないってことも多いだろう。



 でも、その前に一仕事だな。



 家の裏手の畑で農作業中の古老を見つけたので、声をかけた。



「すみません、この町の方ですね」


「ああ、そうですが、あんたは何者かね?」


「自分は治癒師のユートという者です。冒険者を先日辞めて旅をしていたのですが、偶然に竜神ラガシャ様を祀っていた滝に行きつきました」



 実質は辞めたというか追放されただけなのだが、ウソは言ってない。



「あの滝で自分を見つめ直す修行をしたいと思いました。しばらく宿のあるこの町に逗留いたしますのでご理解ください。日中は滝のほうに行き、暗くなったら町に戻ってくるつもりです」


「はあ……。ご自由になさってください。ワシは町長のアントンです」



 変な奴だなと思われてるだろうが、実際に変な申し出をしているのでしょうがない。



「ではラガシャ様が現れたという滝で修行をしたいと思います」


「ラガシャ様か。そういえば、子供の頃はもう少し信仰されておった気がしますな」


「今はもう信仰されてないと?」


「十年前に滝の横の教会が倒壊してしまってからは、花を供えるような人間もいなくなりましてな。まあ、時代の流れでしょうかな」



 少しラガシャがかわいそうに思った。じわじわと信者が減っていくのを目にしていたら、苦しいよな。



「それと、この町は宿が三軒ありますが、何か不幸な事件があったところがあれば教えてもらえませんか? 祈るぐらいのことはしようかと」



 もちろん方便だ。真の目的は霊のいる部屋を回避しようという魂胆である。



「不幸な事件? そんな大事件は聞いたことはないですがなあ」



 よし、その言葉が聞きたかった!



 その日は霊も何も見えない部屋で一泊した。ラガシャに連絡してなくていいのかなとも思ったが、どうやらテレパシーみたいなもので通信はできないらしい。

 まあ、俺に特殊能力が増えたのではなく、ただ霊感が強い男が神を見ちゃっただけだしな。













 目覚めたら朝だった。

 夢にラガシャが出てくるみたいなこともなかったが、これでいいのだろうか。瞑想の滝に行ったら誰もいないなんてことになってたりしないかな。不穏な話をされたわけではないが、昨日から音沙汰なしなので多少の不安はある。



 とりあえず宿屋で出された朝食を食べることにする。これを食べ終わったら、瞑想の滝に行くか。行ったところで何ができるのかわからないが、町にじっとしていても本当に何もすることがない。



 パンをかじっていると、宿屋にぞろぞろと人が入ってきた。



 街道を旅する旅行者のような服装ではないから、全員が町の人間だろう。その中には昨日話したアントン町長までいる。みんな、余裕のない顔をしている。


 少し気味悪く思った。リンチでもされるんじゃないかと怖くなる。インチキ神官とでも思われたんじゃないだろうな……。

 神官としての実績なんて何もないわけで、インチキ神官というのはあながち間違いでもないし……。



「あの……どういたしましたか……?」



 怖くなって自分から尋ねた。



「ええと、ユートさんとおっしゃいましたかな。実は夢で竜神ラガシャ様が現れまして……あなたのおかげで力を取り戻すことができた、ぜひ町ぐるみで協力をしてあげなさいと」



 町長の夢には出てたのか!



 そうか、あいつが案があると言ってたのはこれだったのか。



「ワシも夢でラガシャ様がいらっしゃいましてな」「私も、私も!」「簡単な料理でいいのであれば、うちで作ります!」



 ほかの人達の夢にも出たのか。どうやら効き目はあったらしい。



 俺の前に宿屋の主人が回り込んだ。



「実は私も夢を見まして……。ラガシャ様のために逗留される間は宿代も無料にしろと……。そのようにいたします!」


「あっ、そこまでしなくてもいいんですけど……」


「いえ、無料にさせていただきます! こんなに同時に神様が夢に出るなんて何かあるんですよ! ここで一人だけ従わないのは怖いじゃないですか!」


「た、たしかに……」



 俺が逆の立場でも宿代をとらないと思う。



「別に何部屋かは空きがあることが普通ですし、損害と言えるような損は出ませんよ。泊まっていってください。修行となると、二、三日の宿泊というわけでもないでしょう?」


「ありがとうございます!」



 ひとまず、生活ができる環境だけはできた。

本日3回更新予定です! 次回は12時10分頃、その次は20時頃に更新予定です!

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できる神様じゃないですか あと町の人も素直
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