18 神官、ついに教会を完成させる
俺が武術大会で優勝してクリエスタの町に戻ってから約一か月後――
教会ができたっ!
「うおおおお! 完成したのです! 教会ですっ! しかも木造じゃなくてほぼ石造りなのですっ!」
ラガシャはテンションが上がって教会の周囲をぐるぐる走り回っている。謎の邪教みたいだぞ。
教会の前にはクリエスタの町と近隣の村から大量の人が集まっている。はっきり言って、滝の手前のあたりでそんなに人が集まれる場所はないので、ずいぶん離れたところで待っている人までいる。少し申し訳ない。
建築の責任者のノーマンさんが太い腕で腕組みしている。冒険者になりませんかと言いたくなるが、不安定な冒険者なんかより大工を続けたほうが絶対にいい。
「手伝ってくれるって人が多くてね、おかげで予定より相当早くできたよ」
「ありがとうございます。この教会を拠点にして、自分も、ナタタも全力で活動していきたいと思います」
活動って抽象的な言葉だなと我ながら思うが、神が具体的な方針を示してくれないので、神官としてはこう言うしかないのだ。
とはいえ、地域密着の信仰の神にとったら、ほとんど「上がり」と言っていいんだよな。ワールドワイドでご利益があるような話も何もないし。
「今までだと、実質、滝に向かって祈るしかできなかったので、神の存在もよくわからなかったっス。今後は教会があるから、文句なしに神を祀ってるとわかるっス」
ラガシャも感無量という顔で教会を見上げている。
見た目だけだと、名のある神官という雰囲気が出ている。
「これからは剣の修行で疲れても教会のベッドでぐっすり仮眠できるっス」
「それはみんなが集まってる場では言うな」
俺たちがろくに神官の活動をやってないように思われるだろ。実際、ろくに神官らしいことをやってないけども。
そこにアントン町長がやってきた。
「今日はラガシャ様の信仰の記念すべき一日になりましたな」
「ええ。まさか、ここまでラガシャ様の信仰を復活させることができるなんて、自分も想像していませんでした。本当に、本当にありがたいことです」
「そのために、そろそろ足下を固めていったほうがいいかなと思いましてな。差し出がましいかと思いましたが、こんなものを用意しました」
町長は革の表紙のノートらしきものを出してきた。
「これは? 中は……町の皆さんの名前が並んでるようですが……」
「信者名簿です。これまで誰が信者だとかいったこともはっきり形になってなかったでしょう。それでは将来的に困るだろうと思って、信者として登録してもらって構わないという方に、近所の村も含めて名前を書いてもらいました」
「ありがとうございます! むしろ、一番神官らしい仕事をしてくださってすみません!」
本当は俺かナタタがやるべきことをやってもらってしまった。
「いえいえ。こういうの、教団側がやると押しつけがましくて、町の人間もためらってしまいますしな。町のほうからやるほうがスムーズに行く部分もあるのです」
それはそのとおりである。
「それと、倉庫もあそこでナタタさんが寝泊まりすることはなくなるのかもしれませんが、町の教会としてあのまま残しておこうかなと思っております」
「あっ、いえ……あそこは……」
「私はあそこから通勤するつもりっス」
屈託なく、ナタタが言ってくれた。
使用しなくなると思われてたのか。結構気まずいな……。
「もちろんこのまま使ってくださってけっこうですが……滝のそばに教会ができたら、ここで生活なさったほうが楽なのでは……」
「町長、よく考えてください。俺とナタタがここで暮らしてたら、神官にふさわしくないあらぬ噂が絶対に立ちますよ。そこは分けるしかないんです」
「あっ、なるほど……」
町長も理解してくれたらしい。一方、ナタタはとくにこだわりも何もないのか、きょとんとした顔をしている。こういう話題を気にしないのは助かりはする。
「というわけで、ナタタには町の教会の担当ということで今後も暮らしてもらって、俺は教会で寝起きします。これで誰も住まないのも無礼ですし……。まあ、ここに住むのは俺でもナタタでもいいので、定期的に交代してもいいんですが」
世の中にはいろんなしがらみがあるので、なかなか上手くものである。
まあ、竜神ラガシャの信仰が成長してるのは間違いないので悪いことじゃないだろう。地域密着の信仰で、教会をちゃんと建ててもらえる時点ですごい勝ち組だと思う。
そこに教会を何周かしてきたラガシャが戻ってきた。
「ユート、ナタタ、せっかくなのでこの場にいる全員で頌歌を歌うのです! すごく盛り上がるはずなのです」
(それはいいアイディアだな)
俺は集まっているみんなに頌歌を歌うことを告げた。
楽器があるわけではないので、俺が「さん、はい」と言って、歌を始めた。
『滝に住まう竜神ラガシャ様、どうか我々に力を~♪ すべてを見通す竜神ラガシャ様、どうか我々に栄光を~♪』
そんな荘厳な歌じゃないと思っていたが、この人数で歌うとなかなか感動的な空気になるな。
だが、そこに場違いな蹄の音が響いた。
馬に乗った役人風の男がこちらに近づいてくる。
「この中に神官の者はいるか?」
高圧的に役人風の男が言った。いや、これは多分役人だな。
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