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忘れられた神、復活です  作者: 森田季節


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15/22

15 神官、武術大会決勝戦に参加する

 二度の予選の合格者はそれぞれ別ブロックに配置される。本来ならどうでもいいことなのだが、今回の場合、ナタタと違うブロックということが大きい。

 つまり、俺が自分の側のブロックで勝ち残って、なおかつナタタも向こうのブロックで勝ち残らない限り、ナタタと当たることはない。決勝以外にぶつかるケースはないわけだ。



 そこまでお互いが勝ち続けるってことは、そうそうないだろうし、大丈夫だろう。



 ――と当初、俺は思っていた。








 今、俺の目の前にはナタタが立っている。

 いつもと違って目つきだけが真剣だ。ああ、これが剣士本来のナタタの顔なんだと今更ながらに気づいた。



「先輩、ここで当たれて光栄っス。剣士と武道家、戦い方は違えど、一度全力でガチンコで当たってみたかったっスから」


「わかった。多少後悔はしてるけど、こうなったら全力でやってやるよ」



 ナタタが勝ち上がるのは疑ってなかったが、正直なところ、自分はどうせまけるだろうと思っていた。ほかの参加者と違って俺は場数が少なすぎる。ちょっとばかし、ラガシャの神官ボーナスとやらで強くなったからといって、限界があるだろうと。



 意外と勝ってしまった……。

 相手の攻撃をかわして拳をぶつけていく、それだけを考えて戦ったのに思いのほか善戦できてしまったのだ。



 会場もかなり盛り上がっていて、ブロック決勝――つまり準決勝の時点では「あれって、盗賊団を一人で壊滅させた神官じゃないか?」という声が敗退して控えのエリアで観戦してる参加者から聞こえてきた。やっぱり知られてきているな。



 そして、今、目の前に堅実に勝ち進んできたナタタが立っているというわけだ。



 なお、今、一番喜んでいるのは観客席の空きスペースで喜んでいるラガシャだ。



「二人とも、ほどほどでいいですよ~。もう、目的は果たしたのです。優勝者の賞金、準優勝の賞金、両方合わせてきっと教会を滝の横に再建することができるのです。(ちん)の教えが一気に広まる飛躍になるのです!」



 飛躍はおおげさだと思うが、家がなかった奴が家を手に入れられるって喜ばしいことには違いないな。



「二人とも~、戦闘はどうでもいいので、竜神ラガシャの神官であることをたくさんアピールするのです! 信者を獲得する絶好の機会なのです!」



 結局、宣伝かい。

 とは思うが、信者がいなくてやさぐれてたんだし、これは協力してやるか。



「会場の皆さん、竜神ラガシャ様を信仰していただけるとありがたいでーす。クリエスタっていう町の近くで細々とやってるんで、立ち寄った際はよろしくお願いします」


「二人目の神官になったナタタっス~。よろしくっス~」



 二人であいさつ(?)らしきことをやると、観客席から「行くぞ~!」と反応がいくつかあった。ある意味、同門の対決だからこれぐらいはいいだろ。



「もうちょっと宣伝してほしくはあるのですが、くどいとかえって嫌がられるし、これぐらいがいい気もするのです。OKなのです」



 神からの許可は得られた。



 にしても、武術大会でも負けずに勝ち進めるって、いくらなんでも強くなりすぎてるだろ。高名な神官も、高位の神官も世界中にいるが、それで急に強くなったなんて話も聞かない。ラガシャの神官になったことで何がこんなに変わるんだ?



 審判がドラを叩いた。

 さて、試合開始だ。



「では、後輩として先に仕掛けることにするっス!」



 木の剣を持ったナタタが向かってくる。

 ナタタの流派が何かは知らないが、構えも攻め方もそんなに特殊ということはない。



 だが、だからこそ、ずっと山籠もりして腕を磨いてきただけのことはある。

 商売として剣士をやってますという奴は冒険者として無数に見てきたが、そいつらの剣の動きとまったく違うのだ。



「喰らうっス!」



 ナタタの木の剣が振り下ろされる。これを横にかわそうとすると、切り返しで剣で叩きつけられる。それは手合わせを何度かやって俺も学習している。



「喰らってられるかよ!」



 だから、一回、背後に大きく跳ぶ!

 まさしく撤退だが、次の相手の行動までの時間稼ぎができる。



 決勝だからか、それだけで会場から歓声が沸いた。



「あのユートって奴のジャンプ力、どうなってんだ!」」「どういう筋肉してるんだよ!」



 あっ、そういや跳びすぎてるかもしれない。

 言うまでもなく、ジャンプ力を伸ばす練習なんて治癒師の時にやってないから、これは神官になった影響だ。肉体全体が強化されている。



 ほんとに、ラガシャってどういう神なんだ? なんで神官になった途端、強くなるんだ?



 ちらっと客席のラガシャを見たが、「なんででしょう?」と首をかしげていた。だよな。まあ、わかってたら、自分を信仰して第一の神官になったら力が得られるとかラガシャは絶対言ってたよな。



「回避だけじゃ勝てないっスよ!」



 ナタタは平気で突っ込んでくる。長く剣士をやってるナタタのほうが戦い方にも慣れている。俺は後衛で回復担当の意識が染みついているので、こういうのに弱い。



 でも、ずっと守りに入っててもラガシャの宣伝効果も弱いし――



 今度は俺のほうから突っ込んでいく。

 ずっと拳で勝ち上がってきたし、たまには足で。



「おっ、キックで来るっスか」



 ナタタが剣を構える。

 いいや、足だけど、キックじゃない。



 俺は左足を大きく上げて、一気に振り下ろす。

 いわゆるかかと落としだな。



 ダンッ!

 ナタタの肩に少し当たった。ちょっとはダメージになったか。



「うおおおお! 攻め返した!」「やっぱ神官じゃねえな! 無茶苦茶に足が上がってたぞ」「なんであんなに勢い乗せたまま、かかと落としできるんだよ!」



 観客の評価は上々だ。その評価はありがたくちょうだいしよう。

 たしかになんでこんなに足が上がるんだろうな。



 冒険者で治癒師をやってた頃と比べても体が軽い。



「以前の自分だったら対応しきれなかったっス。私の体もちょっと軽やかになってる気がするんスよね。私もラガシャ様の力を受けてるかもっス」



 真偽は不明だが、俺がラガシャの神官をやるボーナスがあるならナタタも同様の力を得ることはいくらでもありえるよな。

 ただ、客席のラガシャはやっぱり「?」という顔をしている。



 神様も無私の気持ちだから、神官を強化できる、強くしてやろうと思ってると上手くいかない――そう好意的に解釈しよう。



「行くっスよ!」



 ナタタがまた剣を振り下ろす。

 俺は両手で剣を受けようとする――が、失敗して、こっちも肩を強打した。



「いてえっ!」



 すぐに距離をとる。まあ、頭を殴られなかっただけマシか。脳震盪が起きたら立っていられなくてその時点で試合終了だ。



「剣を持ってる奴との戦いはまだ改良の余地アリだな」


「何度も剣をつかまれたら困るっスからね。だから、横薙ぎナシの威力全振りの脳天目掛けての振り下ろしのみっス!」



 剣士が剣をつかまれてその剣を投げ捨てられでもしたら、絶体絶命だからな。普通はそんなこと、なかなかありえないだろうが、今回は武術大会用の木の剣だ。切れ味がない分、剣を奪われるリスクはいつもより高い。



 ナタタはまだまだ動けるらしい。冒険者はさんざん見てきたが、調子がいい時のマークスやランカなんかよりずっと移動範囲もリーチも広い。



 一方で俺は……。

 息が上がってきた。



「くそっ……。クソ高い塔の階段を上がり切った時みたいだな……」



 体力まで神官になって無制限になるわけじゃないらしい。おそらく呼吸法も剣士のナタタと違っていいかげんなんだろう。



 だったら――自分から攻めるか。

 体力が切れて負けるよりは善戦して負けたほうがマシだ。


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