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天涯孤独のアラフォー元事務員、騎士団の副団長に溺愛される  作者: 桐生 翠月


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9.古代語の謎と精霊の図書館

別邸に来て三ヶ月が経つ頃には、アーヤの言語能力は目覚ましい進歩を遂げていた。


ライゼルが連れてきた家庭教師も舌を巻くほどで、アーヤは既に侯爵家の人間が使う格式高い言葉遣いだけでなく、庶民が使う俗語まで理解できるようになっていた。


これは、ひとえに彼女が密かに使っている精霊の図書館(ライブラリ)の恩恵だった。


ある日、グレンヴァルト侯爵が、アーヤの元を訪れた。彼は、魔術研究室から持ち出した分厚い古文書を広げた。


「アーヤ殿。これは、この国に伝わる最古の魔術書の一つですが、記されているのは既に失われた古代語です。現在の魔術師でも、これを完全に読み解ける者はほとんどいません。……試しに、見ていただけませんか」


アーヤは古文書を覗き込んだ。そこに記されている文字は、一見するとただの複雑な図形に見えた。


(古代語……精霊の図書館)


アーヤが強く願うと、周囲の空気に微かな光の粒が舞い、再び頭の中で精霊の声が響いた。


『古代語の知識、開示します』

刹那、古文書の内容が、アーヤの頭の中でアースガルド語と日本語の概念で完全に翻訳された。


「……この古文書は、『神々の加護と、その代理人たる精霊を使役するための契約の儀式』について書かれていますね。」


アーヤは、サラサラと古文書の内容を正確に読み上げた。


グレンヴァルトは、手に持っていた老眼鏡を落としそうになり、目を見開いた。


「な、なんと……! この文章の意味を、あなたが? しかも、その訳は、古文書専門の魔術師が何十年もかけて解釈した内容と、ほぼ一致している!」


アーヤは内心ドキリとしたが、表情には出さなかった。


「ええと……、たまたま、家庭教師の方が残していった文献に、この古代語の基礎が載っていたような気がして……」


グレンヴァルトは興奮を抑えきれない様子だった。


「いや、そんなはずはない。この古代語は、王族と、許可された一部の貴族しか保管を許されない秘匿された知識だ! アーヤ殿、あなたは本当に、我々が理解し得ない何かを秘めている」


グレンヴァルトは、アーヤの持つ魔力回路の欠如と精霊に好かれる特異性、そして驚異的な言語習得速度の全てが、この古代語の解読能力に繋がっていると確信した。


「アーヤ殿。あなたには、ぜひ王立魔術学院に進んでいただきたい。あなたのその特異な才能は、この世界で埋もれさせてはいけない」


アーヤは戸惑ったが、グレンヴァルトの熱意に押され、覚悟を決めた。


「わかりました。もし、私のような者がお役に立てるなら……。学院への入学、お受けいたします」



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