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天涯孤独のアラフォー元事務員、騎士団の副団長に溺愛される  作者: 桐生 翠月


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6.騎士の副団長と事務職の知識

アーヤがレイヴァーグ侯爵家の別邸に滞在して、二ヶ月が過ぎた。


言葉はまだ完璧ではないが、日常会話や読書には困らなくなった。事務職として長年培ってきた「正確に情報を把握し、処理する能力」が、異世界言語の習得に役立ったようだ。

もちろん、精霊からの加護もあるのだろうが。


ライゼルは、週に二度は必ず別邸を訪れた。彼は仕事熱心な騎士団の副団長であり、多忙を極めているはずだが、アーヤの教育と世話を最優先にしているようだった。


「アーヤ殿、この国で発行されている魔導新聞です。今日の主要記事は、北方国境での魔物討伐の成果ですね」


ライゼルはそう言って、薄い紙を差し出した。新聞は活字ではなく、魔導具によって羊皮紙に自動で転写される仕組みらしい。


「この北方国境というのは、やはり魔物が多いのですか?」

「ええ。このアースガルド大陸には魔物のいる森や山脈が多く、騎士団の仕事は尽きません。特に私は、魔法を使った戦略立案も担当していますので……」


ライゼルは、ふと難しい顔をした。


「……騎士団の仕事は、命がけですよね」


アーヤが少し心配そうに言うと、ライゼルは苦笑した。


「そうですね。ですが、この国と人々を守るのが、私たちレイヴァーグ家の責務ですから。しかし正直に言うと、騎士団の文書管理は酷いものです。皆、実戦経験は豊富ですが、事務作業はからっきしで……」


「もしよろしければですが、私に何かお手伝いできることはありませんか?」


アーヤの言葉に、ライゼルは目を丸くした。


「アーヤ殿が? ですが、あなたはまだこの世界に馴染んでいないでしょうし、言葉も完全に……」


「文字を読むのは、もう慣れました。書類の整理や簡潔にまとめるのは、前の世界で長年やってきたことです。機密文書でなければ、何か少しでもお力になれるかもしれません」


ライゼルの瞳が、キラリと光った。


「そうですね…機密文書を扱うのは難しいですが……。試しに、騎士団の装備品の在庫管理表を作成していただけませんか? 紙とペン、帳簿は用意します」


その日から、アーヤの異世界での事務仕事が始まった。


騎士団の在庫管理は、手書きの台帳に、乱雑な文字で、しかも数字の繰り越しすら怪しいという酷い状態だった。アーヤは溜息を一つ吐き、まず全てのエクセル……もとい、魔力羊皮紙に記入できるフォーマットを考案した。


「これは……すごい」


数日後、ライゼルはアーヤが作成した新しい在庫管理表を見て、絶句した。


「必要な装備品が、どの倉庫に、いつ補充され、誰に貸し出されているか。一目瞭然で、しかも過去三ヶ月の消耗品の流れまで分析されている! これを維持できれば、無駄な発注が年間で金貨百枚以上は削減できます!」


「ええと、前の世界では当たり前の管理方法なのですが……。必要な箇所には色をつけ、優先順位を分かりやすくしました」


アーヤの事務能力は、魔力の存在しない地球では当たり前だったが、この世界ではチートにも等しい能力だった。騎士団員は、戦うことは得意でも、頭の中で数字を管理するのは苦手だったのだ。

ライゼルは感動したようにアーヤの手を握った。


「アーヤ殿! あなたは、戦わずして騎士団を救ってくれました! 父上に相談して、正式にあなたの肩書きを考えます。これは、あなたにしかできない、偉大な功績です!」


彼の温かい手に触れられ、アーヤは顔を赤くした。孤独だった人生で、他人にこんなにも感謝されたことはなかった。


「あ、ありがとうございます……でも、ただの事務作業ですから」


「いいえ。事務作業は、戦場における後方支援と同じくらい重要です。あなたは間違いなく、この国の縁の下の力持ちですよ」


ライゼルはそう言って、深く頭を下げた。



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