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天涯孤独のアラフォー元事務員、騎士団の副団長に溺愛される  作者: 桐生 翠月


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4.アーヤの驚異的な寿命

その日の夕食後、レイヴァーグ侯爵家の当主、グレンヴァルト・レイヴァーグから、正式にアーヤの保護について話があった。グレンヴァルトはライゼルの父で、威厳がありながらも温かみのある紳士だった。


「アーヤ殿。あなたをこの家に迎え入れたのは、他でもない、あなたの『命』のためです」


グレンヴァルトはそう言って、一つの羊皮紙を取り出した。


「実は、あなたを発見した後、念のため、この世界の最古の魔術師にあなたの健康状態を診てもらいました。その結果、驚くべき事実が判明したのです」

「……何でしょうか?」


「あなたは、この世界の人間が持つ生命力の、三倍の潜在能力を持っている」


グレンヴァルトは静かに告げた。


「このアースガルド大陸の人間は、大体80歳から90歳が寿命です。ですが、あなたの肉体は、240年から270年近く生き続けることができる、と診断されたのです」


アーヤは一瞬、何かの冗談かと思ったが、グレンヴァルトの真剣な顔を見て、そうではないと悟った。


(240年……? 地球の寿命の三倍……。アラフォーで転移して、残り200年以上生きるってこと?)


地球では終活を考えていた自分の人生が、突然、途方もなく長いものになってしまった。


「……それが、なぜ侯爵家で私を保護する理由に?」


「一つ。あなたの故郷は我々の記録にない、つまり()()()()の人間ではない可能性が高い。二つ。あなたの存在は、我が国の歴史を揺るがしかねない秘密になる。そして三つ……」


グレンヴァルトは一息置いた。


「この長い寿命を以てしても、なお、あなたの体には、この世界の誰もが持っている『魔力回路』がほとんど見当たらないのです。しかし、魔力回路がないのに、なぜかあなたの周りには、森の精霊たちが常について回っている。これは、未だかつて見たことのない、特異な現象です。そして、言語が違うのにも関わらず、こうして会話ができているのも、おそらく精霊のおかげなのでしょう」


アーヤは自分の周りを見たが、精霊の姿は見えない。


「魔力回路がないのに、なぜ精霊が?」


「それは、これからゆっくり解明していきましょう。レイヴァーグ家は、古くからこの国の魔術研究と、騎士団の運営に関わってきました。私たちはあなたの秘密を守り、この世界で生きていくためのあらゆるサポートをすることを約束します。その代わり、あなたが完全にこの世界に馴染むまで、この別邸を離れないでほしい」


グレンヴァルトはそう提案した。


「これから200年以上の人生。あなたに、この世界での新しい人生を。そのための全ての知識、居場所を私たちが提供します」


アーヤの目から、自然と涙が溢れた。地球での孤独な終活の日々が、走馬灯のように蘇る。そして、目の前には、見知らぬ異世界で、自分を受け入れてくれる優しい家族がいた。

先のことを思うと不安ばかりだが、この優しい人たちを信じよう。アーヤはそう心に決めた。


「……ありがとうございます。どうか、よろしくお願いします」



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