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天涯孤独のアラフォー元事務員、騎士団の副団長に溺愛される  作者: 桐生 翠月


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18/30

18.王家公認と社交界へ

アーヤの率直で、愛に満ちた言葉に、国王は玉座で深く頷いた。彼女が国への貢献ではなく、愛する者を守るという極めて人間的で普遍的な動機で動いていることを理解した。


「……そなたの言葉、信じよう。そなたの目的は、この国を愛する者たちと変わらない。そして、そなたの存在は、この国の未来にとって希望となる。よって、王家はそなたを王家公認の研究員として遇する勅命を下す。そなたの身分と安全は、国王たる私が保障しよう」


国王は、その威厳に満ちた瞳で二人を見つめ、決断を下した。その声は謁見の間に響き渡り、重々しい空気を揺らした。


「アーヤ。そなたに、王立魔術学院の精霊科学研究室の特任教授の地位を与える。そなたの能力と古代語の知識をもって、我が国に失われた精霊術と長寿の秘密を解明せよ」


アーヤは胸に手を当て、深く頭を下げた。この勅命により、アーヤの地位は侯爵家の客人、そして王立魔術学院の特別聴講生から、王家公認の王立魔術学院の特任教授へと格上げされた。


そして、国王はライゼルを見た。その視線には、深い信頼と期待が込められていた。


「ライゼル・レイヴァーグよ。そなたは、精霊術の鍵を握るアーヤを守り、支える騎士として、騎士団の副団長と兼任で、その責務を負え。彼女の安全、彼女の幸福は、そなたの騎士としての、そしてレイヴァーグ家の人間としての、重要な使命となることを心に刻め」


「はっ! 謹んでお受けいたします!この命と騎士の誇りにかけて、アーヤ殿をお守りすることを誓います!」


ライゼルは、力強い声で応え、深く膝をついた。

その声は謁見の間に力強く響き、アーヤの存在は、公の場で認められることとなり、侯爵家が計画していた社交界デビューは、単なる貴族の慣例ではなく、王家公認の天才研究員の御披露目という、揺るぎない大義名分を得ることとなった。


デビューの場は、国王夫妻が主催する年に一度の新緑の舞踏会に決まった。


王家公認の研究員という肩書きを得てから、アーヤの社交界デビューとなる新緑の舞踏会に向けて、別邸は嵐のような忙しさとなった。


特にライゼルのこだわりは、周囲が呆れるほどだった。


「アーヤ。そのドレスの背中、少し開きすぎてはいませんか? 私の目の届かない角度から、不届きな輩にその肌を見られるのは耐え難い」


仕立て屋が持ってきた最新の流行のドレスを前に、ライゼルは眉をひそめていた。


「ライゼル様、これは夜会の正装としてはごく一般的なデザインだとリーネさんもおっしゃっていましたよ?」


アーヤが苦笑しながらなだめるが、ライゼルは譲らない。


「だめです。あなたの美しさを知るのは、私だけでいい。……それから、この宝飾品も変えましょう。王家から下賜されたものも素晴らしいが、やはり私からの贈り物を身につけてほしい」


ライゼルが用意したのは、彼自身の瞳の色をそのまま写し取ったような、深く澄んだサファイアの首飾りだった。先に贈られた銀細工のペンダントと重ねても違和感のない、繊細かつ重厚なデザインだ。


「これを。……あなたは私の誇りであり、誰にも渡したくない宝だ。会場では一歩も私の傍を離れないでください」


ライゼルはアーヤの細い首に首飾りを飾ると、そのうなじに熱い指先を這わせ、独占欲を隠そうともせずに囁いた。


——


舞踏会の夜。王宮の大広間は、数多の貴族たちの熱気と、豪華なシャンデリアの光に包まれていた。


「レイヴァーグ侯爵家次男、ライゼル・レイヴァーグ殿。ならびに、王立魔術学院特任教授、アーヤ・ハシモト殿、入堂!」


侍従長の朗々とした声と共に、二人が広間に足を踏み入れた瞬間、喧騒が止んだ。


ライゼルは威風堂々とした正装に身を包み、その隣には、彼の手によって美しく飾り立てられたアーヤがいた。小柄で可憐な外見ながら、内側から滲み出る落ち着きが、彼女に不思議な気品を与えていた。


ライゼルはアーヤの腰を引き寄せ、広間にいる全ての人々に聞こえるように、力強く告げた。


「皆様にご紹介します。彼女は、王立魔術学院の特任教授にして、王家公認の研究員、アーヤ・ハシモトです。彼女は我がレイヴァーグ侯爵家の大切な客人で、私の婚約者候補でもあります」


そこまでは公的な紹介だったが、ライゼルの声は一段と低く、周囲を威圧する響きを帯びた。


「そして——彼女に不躾な好奇心で近づく者、あるいは、その研究を邪魔立てすることは、王家、そして侯爵家への非礼なる行いと見做し、騎士団副団長たる私、ライゼル・レイヴァーグが、その責任を持って厳正に対処いたします」


あまりにも堂々とした、そして威圧を孕んだ宣言に、会場は水を打ったように静まり返った。


「……ライゼル様、少しやりすぎです」

アーヤが小声で(たしな)めると、ライゼルは満足げに、彼女の耳元で甘く囁いた。


「これくらいしておかないと、あなたの才能と可愛らしさに群がる男たちを追い払えませんから」


しかし、この完璧なまでのお披露目は、ある一人の令嬢の自尊心を激しく逆撫でしていた。


会場の壁際、華やかな扇で口元を隠しながら、燃えるような嫉妬の眼差しをアーヤに向ける令嬢がいた。王都の社交界で氷の薔薇と称される、エルミーヌ侯爵令嬢である。


「……あんな得体の知れない小娘が、ライゼル様の隣ですって? 冗談じゃないわ……」



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