13.王立魔術学院での注目
そして、季節は変わり、秋。アーヤは王立魔術学院の特別聴講生として入学することになった。
入学を間近に控え、騎士団の業務を早々に片付けたライゼルが別邸を訪れた。騎士団の重い上着を脱ぎ、アーヤの部屋に入ってくる。彼はアーヤを見つけると笑みを浮かべ、すぐに彼女を抱きしめた。
「ああ、やはりここにいると安心する。入学の準備は進んでいますか?」
「はい。リーネ様にご指導いただいて。貴族の建前と本音の違いも理解しました」
ライゼルは眩しそうにアーヤを見つめると、再び彼女を抱きしめた。
——
入学の日、アーヤはライゼルが手配してくれた、落ち着いたネイビーブルーの色合いの制服に身を包んだ。その制服は、アーヤの小柄な体型に合わせて、ライゼルが何度も寸法を確認させて作った特注品だった。
門の前で、ライゼルは名残惜しそうにアーヤの頬をそっと撫でた。
「学院では、多くの若きエリート魔術師たちが、あなたの類稀なる知識に惹かれるでしょう。……ですが、私の婚約者であることを、決して忘れないでください」
「ライゼル様、婚約者はまだ早いです……」
「遠くない未来のことです。それまでは、この学院の誰も、あなたに不必要な興味を持たせないよう、私は細心の注意を払います」
ライゼルはそう言って、騎士団の業務の一環、そして学院の警備強化を名目として、自分の部下から精鋭を選び、何名かを学院周辺に配置した。これは表向きは警備だが、実態はアーヤに近づく男子学生への無言の牽制だった。
学院には、この国の貴族の子弟や、高い魔力を持つ平民のエリートたちが集まっていた。彼らのほとんどが十代後半から二十代前半で、アラフォーのアーヤは明らかに異質だった。
「あの子、誰? 妙に落ち着いた雰囲気だけど、うちの学院に編入できるほど魔力があるようには見えないわね」
「噂なんだけど、レイヴァーグ侯爵家が連れてきた小動物だって。なんでも、古代語が読めるらしいわ。」
「小動物?見た目は確かに可愛らしいけど、あの落ち着き様は、なんだか私たちよりも大人びてるわね」
好奇の目に晒されながらも、アーヤは動じなかった。彼女の頭の中では、新しい環境に慣れるための情報整理が行われていた。
どこに教授室があり、どこに資料室があるか。誰が主要な魔力保持者か。まず情報として整理し、冷静に処理する。地球で長年培った事務員としてのプロ意識が、彼女に冷静さを与えていた。
そして、まず自分の教室へと向かった。彼女のクラスは、魔術理論、古代文献学、魔物生態学など、座学が中心の上級クラスだった。ここで、アーヤの力が真価を発揮することになる。




