12.小動物のような恋人
ライゼルとアーヤが恋人関係になってから、ライゼルは以前にも増して別邸を訪れるようになった。騎士団の業務で日付が変わる頃になることも少なくなかったが、彼にとってアーヤとの時間は、何にも代え難いものだった。
彼はアーヤの前では、多忙な騎士団の副団長という立場を忘れ、一人の優しい青年へと戻った。そして彼は度々、アーヤの見た目の若々しさに驚き、魅了された。
アーヤは、地球でいうアラフォーという年齢にもかかわらず、驚くほど若く見えた。小柄な体躯と童顔は、ライゼル曰く侯爵家に迷い込んだ小動物のようだった。
「アーヤ殿、今日もそのお茶、熱すぎませんか? やけどをしないように」
ライゼルはそう言って、アーヤが持っていたティーカップをそっと取り上げ、自分の手のひらで温度を確かめた。
「大丈夫ですよ、ライゼル様。熱い方が美味しいし、好みなんです。それに私は見た目がどうであれ、もういい年齢で——」
「だめです。あなたは、いつも、まるで小さなリスのように何かを熱心に食べているし、好みだからと、熱い飲み物を飲んでいる。のどに詰まらせないか、ヤケドしないだろうかと、見ていてヒヤヒヤするんです。私の目の届かないところで、あなたが少しでも辛い思いをするのは耐えられない」
ライゼルはそう言うと、アーヤの頭を優しく撫でた。
アーヤの見た目が若々しいのは、魔術師の診察結果にあった「人間の三倍の寿命を持つ肉体」の影響だと、皆は推測していた。生命力が溢れているため、肉体の老化が極めて遅いのだろう、と。
(アラフォーでこんなに若く見えるなんて、前の世界じゃ考えられなかったけど……チート能力に感謝ね)
アーヤは内心でそう思いつつ、ライゼルの優しさに頬を染めた。彼は、彼女を年の離れた年上の女性としてではなく、一人の愛らしい女性として見ていた。そしてアーヤの若々しさゆえの危うさに対し、過剰なまでの過保護と独占欲が見え隠れするのだった。
アーヤは、侯爵家の別邸での生活にすっかり慣れ、忙しくも穏やかな日々を過ごしていた。
自室の窓からは、侯爵家の手入れの行き届いた中庭が見える。
彼女の部屋の窓やドアには、ライゼルが警備のために防御魔法を施してあり、部屋の温度も快適に過ごせるよう調整されていた。
侯爵夫妻は、アーヤを家族の一員として温かく迎え入れ、侍女のリーネは、アーヤの今後の生活と、王立魔術学院での役割の重大さを理解しており、彼女への教育に熱心だった。
「アーヤ様。学院に入られますと、正式に侯爵家の公認のパートナーとして見られます。テーブルマナーは完璧でいらっしゃるのですが、貴族の会話は別物です。特に、ライゼル様との関係を尋ねられた際の対応を練習しましょう」
リーネはそう言って、マナーの教本を広げた。アーヤは、精霊の図書館をフル活用し、貴族の複雑なルールを瞬時に暗記し、順応していった。




