11.副団長からの贈り物
騎士団本部での一件から数日後、ライゼルは再び別邸を訪れた。いつものように、騎士服ではなく、少しカジュアルな服を着ていた。
「アーヤ殿、あなたのおかげで、騎士団の規律が保たれました。これは、騎士団長からの報奨金とは別に、私からの個人的な感謝の気持ちです」
ライゼルはそう言って、小さな木箱をアーヤに手渡した。
中には、繊細な銀細工のペンダントが入っていた。ペンダントトップには、小さな二匹の精霊が、互いに寄り添い合うようにデザインされている。
「これは……綺麗……」
「このデザインは、この侯爵家に伝わる古代の紋章から取りました。二匹の精霊は、知恵と加護を意味します。あなたにぴったりだと思って」
アーヤは感動して、顔を上げた。ライゼルは、優しい眼差しでアーヤを見つめていた。
「アーヤ殿。あなたは私にとって、大切な人です。その気持ちは、さらに強くなりました」
ライゼルは、ペンダントをそっと手に取ると、アーヤのうなじへと視線を移し、その華奢な首筋に手を回した。静かに留め具を合わせる彼の指先が、僅かに触れる。
「そして、かけがえのない人です。騎士団の仕事で忙しい私に、優しさをくれるだけでなく、私の弱さを補ってくれる唯一の存在だ」
アーヤの心臓は、激しく脈打っていた。
首筋は熱く、触れる彼の指先にアーヤの熱を伝えた。
「ライゼル様……」
「アーヤ殿。私は……あなたを愛しています」
ライゼルは、その言葉を口にするのを躊躇うように、しかし、真っ直ぐな瞳でアーヤを見つめた。
「年齢も、生まれも、全てが違う。あなたは、私よりも長生きするでしょう。それでも、私はこの命尽きるまで、あなたのそばにいることを望んでいます」
アラフォーのアーヤにとって、異世界で出会った年下の騎士からの告白は、あまりにも唐突で、そして重いものだった。
しかし、彼女の心は、ライゼルが初めて手を握ってくれた日から、ずっと彼に惹かれていた。孤独だった人生に、光をくれたのは、この優しい騎士だった。
「ライゼル様……私も、ライゼル様が大切です。私も、あなたを愛しています」
アーヤは、溢れる涙を堪えながら、ライゼルの胸に飛び込んだ。
「ありがとう、アーヤ殿……」
ライゼルは、力強く、しかし壊れ物を扱うかのように優しくアーヤを抱きしめた。
この瞬間、二人は、国境も年齢も寿命の壁も超えて、異世界の月明かりの下で、恋人となった。




