25-2
「お客さん、出発しますよ!」
「わかりました! すぐ乗ります!」
俺たちを乗せた馬車はゆっくりと走り始めた。
遠くの空には、まだ戦いの煙が薄く漂っている。けれど――その向こうには、朝日がまぶしく輝いていた。
「帰ったら、しばらく休みたいね……」
「そうですね……だいぶ疲れました……」
「えー、ルクスさんとルミネルさんに残念なお知らせが――実は……出発前に、ミリアさんから受けたクエストがあるのですが……」
「ミリアさんって、受付嬢のか?」
カグラが問う。
「ああ、俺たちをご指名でのクエストらしい。」
「嫌よ! 受けたのはタイガでしょ!? 私は絶対にやらないわ!」
「働け女神。」
「以前、ミリアさんからの指名で受けたとき……タイガ。死んだじゃないですか……」
「ああ……デリウスのときか。今回は"メガエル"とかいうカエルの討伐クエストらしいから大丈夫だ……きっと。」
ルミネルも言うこともごもっともだが……
ルクスが手を挙げる。
「ルクス、どうしたんだ?」
「あのさ、そのメガエルなんだけど――」
ルクスの言葉は、馬車の車輪の音にかき消された。
けれど、その一瞬だけ、彼女の顔が――ほんの少し、青ざめて見えた。




