24-5
俺はここで死ぬのか……?
『この世界には十二人の悪い女神がいる。』
おとぎ話だ――そう思っていた。
自分がその女神の寵愛を受けるまでは――
あんちゃん……お前のおかげでやっと救われた――
※
「……あんちゃん。お前は――まだ戦えるか?」
そう言って笑ったベルフェゴールのその顔が、少しだけ人間に見えた。
「いや……もう……」
「……あんちゃん、名前は?」
「タイガ……エンドウ・タイガだ。」
「タイガ、か……」
ベルフェゴールはゆっくりとその名を繰り返した。
どこか懐かしむように――まるで、昔にも同じ名を呼んだことがあるかのように。
「……いい名前じゃねえか。」
炎の中で、彼の笑みがわずかに崩れた。
その瞳には――一瞬、哀しみの色が宿っていた。
「タイガとは別の立場で会いたかったな……」
その言葉に、胸が締めつけられる。
敵としてしか出会えなかったことを、彼は悔やんでいるようだった。
「それにな……お前、いい仲間を持ったな。」
「……いい仲間?」
「ああ。特に――あの魔法使いの嬢ちゃんのアレは、先々代の剣聖の奥義に匹敵するレベルだったぜ。」
ベルフェゴールは、炎の中で笑った。
それはもう戦士の顔ではなく、誇り高い“人間”の笑みだった。
「最期に戦ったのが……お前たちでよかった。」
「おっさん……」
「タイガ。――最期に、いいか?」
「……ああ。」
ベルフェゴールは、穏やかな声で言った。
「――ありがとな。」
次の瞬間、彼の身体は光の粒子となって崩れていく。
その表情は、どこまでも安らかだった。
まるで、長い戦いからようやく解放されたかのように――。
「……じゃあな、ベルフェゴール――」
「勝ったのか……?」
「……なあ、カグラ。」
「なんだ?」
「少しでもあのおっさんは救われたのかな……」
「ああ……きっと、な。」
炎の跡に、ひとひらの灰が舞い上がる。
夜明け前の風がそれをさらっていった。
まるで、誰かの魂を空へと還すように――。
「自由になれたのかもな……」
「タイガ! 大丈夫ですか!?」
「ああ、バッチリだ! ナイスなラディだったぞ、ルミネル!」
「そうね! 女神からのMVPをあげてもいいわよ!」
「そんなものいらないですよ……。ルクスの時間稼ぎも良かったですよ?」
「そうかなあ……。でもね、僕一人だったら、無理だったよ。やっぱり――みんながいなくちゃね!」
朝早くから始まった街を半壊させる程の戦いは終わった。
「皆さーん! 大丈夫ですかーー?」
「モルティナか! スモールゴーレムたちは大丈夫だったか?」
「はいっ! 全部破壊してやりましたよ!」
「さすがだな……」
そして――波乱に満ちた旅行も終わろうとしていた。
【あとがき】
さあ、戦いが終わりました!
正直、もう少し細かく書きたいところとあったのですが……僕の実力ではむしろ邪魔になる、ということでカットしたシーンが多々あります。本当に申し訳ないです。
さて、次回からはまたコメディに戻ります!
では、また次回お会いできることを祈ってます!




