24-3
『――任せたぞ。』
あのときのカシオの声が、まだ耳に残っていた。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
俺は剣を握り直し、燃え盛る神社へと走った――。
「すまん! 遅れた!」
「くっ――遅いぞ! 私だけで何分持ち堪えていたと思う!」
鎖鉄球から、火花が散る。
カグラの額には汗が滲み、それでも一歩も退かずにベルフェゴールの攻撃を受け止めていた。
「あんちゃん、やっと来たか――」
「悪いな、おっちゃん……あんたとはやり合いたくないんだけどな……」
「それは俺もだ――ただ、役目だ……許せ、あんちゃん。 行くぞ――」
次の瞬間――ベルフェゴールの口から、灼熱の炎が放たれた。
「危なっっ!」
地面を転がりながら回避。
直後、俺の背後にあったブロンズ像が――溶けた。
「嘘だろ……」
空気が焼ける音。
肌を焦がす熱波。
直感でわかる――当たったら、死ぬ。
炎が渦巻く中でも、ベルフェゴールの拳と火炎の猛攻は止まらない。
まるで――地獄そのものが形を取っているかのようだった。
「タイガ! 大丈夫か――」
「おっと、よそ見とはいけねえな――嬢ちゃん!」
「しまっ――」
「――カグラッ!!」
鈍い衝撃音と共に、鉄の匂いが鼻を突いた。
カグラの鎖鉄球が弾かれ、炎の壁の中へと吹き飛ばされる。
「やっと、熱くなってきたぜ……」
拳を握るベルフェゴールの腕が赤熱していた。
地を割るほどの一撃――人間相手じゃ、即死だ。
「チッ! 《ブラスト》!」
指を銃のように構えて魔力を放つ。
「……やべえな。こっちは命がけだってのに、あっちはウォーミングアップかよ。」
「うむ……一度、立て直す時間が――」
その瞬間――炎の中から、赤く光る瞳がこちらを睨んだ。
「そんじゃ、こっちも行かせてもらうぜ――あんちゃん……」
ベルフェゴールが拳を構える。
「カグラ! 何かヤバそうなのが来るぞ!?」
「わかっている! だが、あの気迫……受け止めきれない――」
「あばよ、あんちゃん――!」
ベルフェゴールの拳が前に突き出される瞬間――
「《シャドウリード》!」
「《ゴッド・ストライク》!」
鎖が闇から伸び、ベルフェゴールの四肢を拘束。
そこへ、天から光の槍が撃ち込まれる。
「ギリギリ間に合った……かな?」
「ルクス! それに、レイも!」
「タイガ、カグラ! 助けてあげたこと感謝なさい!」
「そうだな……今だけは感謝だな。」
「うむ……同感だ。」
「タイガくん! ルミネルの詠唱が終わるまで――少しでも削るよ!」
「みんな……行くぞ!」
「――楽しくなってきやがった!」
ベルフェゴールは笑った。
この戦いを楽しむかのように――




