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「……は? 話が違うだろおお!!」
目の前には――建物サイズのゴーレム。
スモールゴーレムたちが、まるでスライムみたいにうねりながら集まり……ひとつに融合していく。
「ちょ、ちょっと待て! スモールって言ってたよな!? どこが“小”だよ!」
思わずツッコミを入れながら、俺は剣を構える。
「これでどうだ――《ブラストスラッシュ》!」
斬撃と爆風が交錯する――が、響いたのは金属を叩くような甲高い音。
ガキィィィンッ!
「か、硬すぎるだろ……!」
剣が弾かれ、腕が痺れる。
しかも、このデカブツ……全くびくともしねえ!
「これ――完全に無理ゲーじゃないですか!?」
いや、こんなこともあろうかと――俺には新たな隠し技が――
……そんなものはない!
俺の持ってるスキル?
ルクスから教わった盗賊スキルに、大道芸人から教わったブラスト。
――はい、どっちも今まったく役に立たねえっ!!
打開できるスキルがない……完全に詰みだ。
『カシオさんから箱が――』
……そうだ。あれがあった!
モルティナを通じて届いた、謎の支援物資――!
「頼むぜ、カシオ!!」
箱を開ける――
一瞬、光が漏れた。中には何か……!?
……『スカ』と書かれた紙が一枚。
「あの――クソ悪魔があああああっ!」
次の瞬間――轟音。
建物サイズの拳が、空気を裂いて降り下ろされる。
「は、はは……これ無理だ。死んだな、俺……」
――ドガァァァンッ!!!
衝撃波で地面が抉れ、視界が白く弾け飛ぶ。
終わった、そう思った瞬間――
「ハハハハハ! 非常に絶品な“驚き”の感情であったぞ――小僧。」
低く響く声。
恐る恐る目を開くと、巨大な拳が目の前で止まっていた。
その拳を――カシオが小指一本で受け止めていた。
「貴様の世界では、これを“ドッキリ”というのであろう? ならば――」
カシオが笑みを浮かべ、指を弾く。
「ドッキリ大成功だ!」
――ゴゴゴッ!
ゴーレムが轟音を立てて崩れ落ち、風圧で周囲の建物が揺れる。
「カシオ……どうやって来たんだ?」
「あの『スカ』と書いた紙に、召喚の術式を施しておいたのだ。」
「さすが悪魔……なんでもありだな。」
「ふはは、さて――ここは吾輩に任せてもらおうか。」
「でも、あと五体もデカブツが――」
「心配ご無用、なんせ吾輩は強いからな。」
カシオがニヤリと笑い、目の包帯をわずかにずらす。
包帯の隙間から覗いた片目が、金色に妖しく輝いた。
「ハハハハハ! 絶好調! 絶好調! さあ、タイガ――行け!」
「……ああ、任せた!」
カシオは背を向け、豪炎を背負いながら言った。
「任せたぞ――」
その声は、いつもより少しだけ優しかった気がした。
何を言ったのかは聞こえなかったが――きっと、俺の背中を押してくれていた。




