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この異世界は、ヒーローでありふれている!  作者: やまぬこもち
第23話『リザードマンの王』
92/111

23-4

「ここか……」


 焦げた木と煙の匂いが鼻を刺した。 熱気がまだ残っている――そこには、瓦礫の山となった建物が並んでいた。

 ――そして、人影があった……


「そこにいるのは誰だ!」


 カグラからの問いかけに答えるかのように、その人影は振り向いた――


「俺は……」


 と男はふと思い出したように呟き、次の瞬間に満面の笑みで言った。


「……て、あんちゃんか!」


「もしかして……昨日のおっさん!?」


「知り合いですか?」


「そうだぜ、魔法使いの嬢ちゃん! あんちゃんとは、昨日風呂に入った仲だぜ!」


「……貴様――人ではないな?」


「ははっ! 戦士の嬢ちゃん、やるじゃねえか! だが、俺たちは“こっち側”の者でな……あんたらとやりあいたくねえ。 大人しく帰ってくれるってんなら、あんちゃんたちに危害は加えねえって約束する。」

 

「え?」


 あのおっさん……人じゃないの? 理解が追いつかないんだけど?

 だけど――


「なら、帰るな! さよな――」


「おい、タイガ! お前には冒険者としての誇りが――」


「そんなものはない!」


「「「……」」」


「なんだよ……」


「はははっ! やっぱ、あんちゃんは面白いなあ!」


 よし、ここは逃げよ――


「《女神式ショット》!」


 俺の真横を水色のレーザー光線が通り抜けた。


「ぐああっ――!」


 空気が一瞬、焦げるように弾け――おっさんが瓦礫の中へと落ちていった。


「……は?」


「何をボケっとしてるの! 早く倒すわよ!」


「く、空気を読めポンコツ女神! せっかく平和的に終わるところだったのに!」


 瓦礫の山に埋まっていたおっさんが顔を出した。


「てめえ……よくもやってくれたなあ!」


 言わんこっちゃない!


「あんちゃんたちに恨みはないが……殺す!」


 おっさんの背中で何かが裂けるような音がした。皮膚が波打ち、そこから鱗が噴き出すように光る。羽が広がり、太い尻尾が地面を叩く。顔の輪郭が歪み、人の面影はみるみるうちに消え――最後に割れた笑い声だけが残った


「俺はベルフェゴール。魔王軍幹部十二将軍――第七将軍! リザードマンの王だ! 純粋な力だけで言えば――魔王軍最強だ。」


 リザードマン……ドラゴン人間だ。ゲームの知識だが――人間よりも圧倒的に強い力を持っていて、かなりタフな種族だったはずだ。


「俺は探し物がある。お前らの相手は――コイツらだ!」


 ベルフェゴールが投げた石が人型に変化した。


「なんだ、コイツら!」


「それは魔王軍の雑兵――スモールゴーレムです! 個々は弱いので大丈夫ですよ!」


「モルティナ!」


「ここは私に任せてください! 皆さんは先に!」


「わかった! 先に行ってる!」


 この場をモルティナに任せて――俺たちはベルフェゴールを追うことにした……


「タイガくん! 気をつけて、至る所にゴーレムが!」


「アイツが行ったのは、たぶん真ん中の神社だ! 囲い込む――ルクスは北側から、あとルミネルを建物の屋上に運んでくれ!」


「任せて!」


「ルミネルは屋上からトドメに"いつもの"決めてくれ!」


「ふっふっふっ! 任せてください!」


「レイは東から!」


「東がどっちか分からないけど――やってやるわ!」


 心配だ……でも、今は信じるしかないか――


「カグラは正面、南から突っ込んでくれ!」


「了解した!」


「俺は西から行く! ――勝つぞ!」


 焼け跡を渡る熱風の中、それぞれの影が四方へ散っていった。

 まるで、戦場を駆ける運命そのもののように――。


 西側の神社へと続く道は、人とスモールゴーレムが入り混じる混沌の中だった。

 地鳴りのように響く足音、砕けた石片が宙を舞う。

 

「思ったよりいるな……温存しておきたかったけど――」


 俺の持ってるスキルから考えると――やるしかない。


 ベルトを腰にかざす、そして――


「……装着!」


 ベルトに手を添えると、魔力の回路が起動し、光のラインが走る。

 金属の装甲が展開し、蒸気が弾けた。


 スモールゴーレムの数はざっと百はいるだろう。


「――来い、オーロギア!」


 スモールゴーレムへと思いっきり剣を振りかざす。


「かたっっ!」


 反動で腕がしびれた。まるで、石像に剣を叩きつけたようだ。


「なら、これで――!」


 オーロギアの斬撃に《ブラスト》を合わせて――


「ブラストスラッシュ!」


 轟音と爆ぜる閃光。

 スモールゴーレムが粉々に砕け、灰となって舞い散る。


「……よし!」


 立ち昇る煙の向こうに、次の群れが見えた。


「これなら――いける!」


 オーロギアを握り直し、俺は戦場へと駆け出した――。

 その瞬間、背後の瓦礫が、不気味に動いた……気がした。

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