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この異世界は、ヒーローでありふれている!  作者: やまぬこもち
第22話『痛々しい妖刀使い』
86/111

22-2

「さて、まずはどこから行きますか!?」


「そうだな……源泉は昨日見たし――」


「女神たる私の偉大なる考えによれば、食べ歩きがいいと思うわ!」


「それはレイが食べたいだけではな――」


「いい? カグラ、世の中には"言っていいこと"と"ダメなこと"があるのよ?」


「今のは……言ってもいいほうでは?」


「ダメったらダメなのーーーっ!」


「やめろ、人災女神! 街中で暴れるな!」


「あああっ! タイガが……タイガがああああっ!」


「……」


 ――はあ……もう疲れた。


「一旦、食べ歩き……てことで大丈夫ですか?」


「あ、ああ……私は賛成だが……」


「僕も賛成だけど……」


「私は賛成よ! モルティナとタイガはもちろん賛成よね!」


「そ、そうですね……私も賛成です。」


「……俺もそれでいいよ。」



――ユノスパストーンロード


「ここが商店街みたいなものみたいですね!」


 ユノスパストーンロードは、山へと続く石階段に沿って出店が立ち並んでいた。

 湯けむりの漂う街道には、温泉まんじゅうの甘い香りと、焼き団子の香ばしい音が混ざり合っている。


「この階段って、五百段あるみたいだよ!」


「まじで……? 登る気なくなってきたかもしれない……」


「そんなことよりも食べ歩きよ! 食べ歩きしましょ!」


「はいはい、女神様。」

 

 ――そんな、のんびりとした昼の観光が始まった。


 さてさて、俺はお土産屋でも見るかな――


「……?」


 俺は"とある商品"の前でふと立ち止まった。

 これって――木刀か?


『この街の創設者ヤスダ・アキラが考案した、ここでしか手に入らない逸品です!』……だと?

 いやいやいや、それ日本では修学旅行のお土産の定番だろ! ここでも見るとは!


 ――ヤスダ・アキラ。

 こいつか、“ネガイカナエール”なんてチートオブチートな特典を貰っておきながら、温泉街を作った奴は! あんたが魔王討伐してくれてれば、俺たちは今こんな苦労してないんだぞ!


「タイガ……その剣かっこいいですね! やはり、タイガもこのような物に惹かれる年頃ですか!」


「いや、ちが――」


「いいですとも! ええ、いいですとも! 恥ずかしがる必要なんてありませんよ?」


「いや、本当に違うって!」


「反抗期ですか! 仕方ありませんねー! 私は、この剣を買おうかと思います!」


「やめとけ。俺の故郷にも似てるのがあったけど――買ったら絶対に後悔する。」


 経験者は語るってやつだ。

 小学校の修学旅行で買って――置き場がないことに気づき、盛大に後悔したあの日のことを、今でも忘れない。


「タイガ、このジャラジャラしている物を鎖鉄球の持ち手につけようかと思うのだが……」


 うん。それも中学生が修学旅行でよく買う――よくわからないドラゴンのキーホルダー!

 本当に――どうなってるんだ……この街は。


「それもやめとけ――絶対後悔する。」


「そ、そうなのか? ならば、やめておこう。」


「そうだ……それでいい。」


 さて、他にも色々と気になる店があるし……そろそろ――


「タイガ、タイガ! この階段の先にね! 私のことを祀ってる神社があるらしいの!」


 聞き間違いだな。あいつのことを祀るやつがいるなんてありえな――いや、一人だけいたな……


「アキラああああああっ! お前かあああっ!」


「アキラって、誰ですか?」


「誰だ、そいつは。」


「え……誰?」


 ルミネル、ルクス、カグラの三人が口々に言った。


「――いや、知らない人だぞ。」


 三人とも呆然とした顔で俺を見つめる。


「な、なんだよ。」


「いえ、別に……」


「さあ、四人とも! 早く私の聖地に行くわよ!」


「あのお……私はどうしたら……?」


「もちろん、モルティナに拒否権はないわよ!」


 この女神……やっぱり最低だ。

 それに――レイがノリノリなときは……なんか嫌な予感がする。

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