20-5
綺麗な夕焼け空だ。
早朝にこの街に着き、昼前からずっと観光して――気づけば夕方になっていた。
「はあ……疲れた。」
「ああ……甘いものたくさん食べられて、僕は幸せだあ……」
「そんなに食べて、夕食大丈夫ですか?」
「ルミネル、甘いものは別腹だよ?」
「そうなんですね……それにしても、カグラたち戻ってきませんね。」
結局、カグラとモルティナは戻ってこなかった。
聞いた話によると、この街の鍛冶屋はかなり腕がいいらしく、国内の冒険者がわざわざ訪れるほどの人気らしい。
「もしかしたら、混んでるのかもな。まあ、俺たちは先に帰って、風呂にでも入って、待ってようぜ。」
「ふ、風呂!?」
ルクスがビクリと肩を震わせた。
耳の先までみるみる赤くなっていく。
「そ、そんな急に言われても……」
「どうした? 別に普通の風呂だぞ?」
「いや、その……だって、その……お、お湯に入るのって……なんか、恥ずかしいじゃん!」
「お前は猫か! てか、ルクスって屋敷で風呂入ってただろ?」
「えっと……実はいつも、身体を流すだけ……僕、お湯入るの苦手だから……」
「女神の入浴を目撃できるなんて、あんた運がいいわね!」
レイが胸を張る。
「誰も見たがってねえよ!」
「まあまあ、落ち着いてください! 温泉って確か――“魔力回復”にも効果があるんですよね?」
ルミネルがメモ帳を取り出し、目を輝かせた。
「おお、そうなのか? それならちょうどいいな。今、魔力もスッカラカンだし。」
魔力がないのは、さっき、子どもに《ブラスト》での手品を見せたら、喜ばれたので――調子に乗ってやりすぎたからなのだが……
「じゃあ決まりですね! さっそく――」
「おう、そうだな! 俺も早く湯に浸かって――疲れを吹き飛ばしたいしな!」
「あ――でも、ひとつ問題があるみたいですよ。」
受付に戻ると、宿の婆さんがゆっくりと顔を上げた。
「実は……温泉は今、“混浴”しか空いておりませんが――それでもよろしいですか?」
……。
「……すみません。もう一度言ってもらっていいですか?」
「“混浴”しか空いておりませんが……それでも、よろしいですか?」
「「「「えええええええええ!!!」」」」
俺たちの叫びが建物中に鳴り響いた。




