20-3
「ここがあのおっちゃんの知人が経営している旅館か……」
至って普通か……いや、もっとこう、金ピカとまではいかなくても、豪華な建物とかを期待してたんだけどな。
もしかして……内装が豪華とか?
「早く行きましょう! 観光の時間が減ってしまいます!」
「はいはい。急かさないでくれよ、ルミネル。」
「さてさて、最高級とはどんな感じなのか、この女神様の曇りなき眼で確かめてあげるわ!」
「曇ってしかないだろ……それじゃ、開けるぞ。」
扉を開けると――
「お、おおー……?」
あれ……内装も普通じゃ――
「ねえ、タイガ。この旅館……すごくふつ――むぐっ!」
「や、やめとけ! そんなこと言うな!」
俺は急いでレイの口を塞いだ。
すると、奥から――
「いらっしゃいませえ……お客様。」
ヨボヨボな小さいお婆さんが出てきた。
「えっと……ここの名前って"シニセ"で合ってますか?」
「ええ……ここが"シニセ"でございます。創業からおよそ……五年でございます。」
――いや、全然老舗じゃないのかよ!
「あの……この人から紹介状を貰ったんですけど……」
「……なるほど、拝見させていただきます。――承りました。それでは、五名様でよろしいでしょうか?」
みんなが頷く。
「はい。問題ないです!」
「そして、大変申し訳ないのですが……この旅館には部屋が三部屋しかございません。そのため、一部屋になるのですが……」
「……ん? ちょ、ちょっとだけ待っててください!」
俺は他のメンバーが座って待つ場所へと走った。
「――というわけで、どうする? それに、この旅館……なんか色々とヤバそうだぞ?」
「ふっふっふっ! タイガはまだまだ甘々ですね! 旅とは危険と常に隣り合わせなもの!」
「なるほど……?つまり、ルミネルは何が言いたいんだ?」
「私は構いませんよ、と言うことです。」
始めっからそう言ってください。
「えっと、他は?」
「私は寝ることはないので大丈夫ですよ。」
「さすが、死霊だな。カグラとルクスは?」
「うむ……紹介してくれた人にも悪い、泊まったほうがいいのではないだろうか?」
「そうだね……僕も同感だよ。」
「……で、問題の自称女神様は?」
「私には分かるわ! この旅館――実はすごい気がするの!」
「へえ、それはよかったな……じゃあ、決まりだな。」
……って言った俺が、後で後悔することになるなんて――このときはまだ知らなかった。




