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20-2

 平原を抜け、森を抜け、砂漠を越え――そして、湯気を立ちのぼらせる山が見えてきた。

 昨日の早朝から始まった俺たちの旅は、ようやくゴールへ辿り着こうとしていた。


「お客さん、もうすぐ着きますよ。」


 おっちゃんの声で目を覚まして、窓の外を覗く。

 そこにはスウェリアの門とは比べものにならないほど立派な門がそびえていた。


「お、おおおおー!!」


「やっとですか……思ったより長旅でしたね……」


「ふわあ……おはよー」


「あ、皆さん! おはようございます!」


「モルティナだけ元気だな……」


「ええ! カグラさん、それはもちろん――私が死んでるからですよ? 死者に睡眠なんて必要ありませんしね!」


「言われてみれば、そうだったな……」


「はい! それにしても、ルミネルさんとルクちゃんの寝顔と寝言がかわいかったですね……」


「や、やめてください! へ、変なこと……とか言ってないですよね!? え……言ってないですよね?」


「ちょ、ちょっと! モルちゃん!? そんなことは早く忘れてえええ!」


 二人は顔を真っ赤にして抗議した。


 そして……女神様はというと――


「ぐがあ……タイガ、バカね……それはピーマンじゃないわ。アボカドよ……」


「こいつ、どんな夢見てるんだよ。というか、なんでアボカド?」


 腹を出して、狭い馬車の床で大の字になって転がっていた。


「レイ様……皆さんが椅子でコクコクと寝ている中、ドンって落ちたんですよね……」


 馬車の揺れが少し遅くなった。


「お客さん! "ユノスパ・ビレッジ"に入ります! お忘れ物がないかの確認お願いします。」

 

 俺たちを乗せた馬車は、湯煙に包まれたその街の門を、ゆっくりとくぐっていった――。


 門をくぐると、スウェリアの中世ヨーロッパ風の街並みとは真逆の和風な建物が広がっていた。

 どこか懐かしいような感じがする。


「お客さん! ありがとよ、楽しんでくれな。それじゃあな!」


「こちらこそ、ありがとうございました。」


 おっちゃんと別れて、俺たちは街の大広場にいた。


「あの奥に見えるのは、火山らしいぞ。」


「てことは、あそこに源泉があるってことだな。」


 カグラとそんな話をしていると――


「タイガ! 見てください! この地面の紋様を――魔法陣でしょうか?」


「うむ……何かの古代魔法による儀式みたいなものだろうか?」


「いや、もしかしたら召喚のやつじゃない!?」


「きっと、敵対的なアンデット避けですよ!」


 と、ルミネルたちが議論している。


「いや、それは石庭って言うやつで――」


 俺の言葉を遮るように、寝起き女神が言った。


「いいえ! それは女神たる私への祝福よ!」


 全員が黙った。


「――で、さっきタイガが言いかけていたやつはなんですか?」


「ちょ、ちょっと! ルミネル!? 無視しないでええ!」


「だって、こんな怠惰を極めている人が女神なわけないじゃないですか……」


 レイは俺のほうを見て涙目で一言――


「タイガしゃん……私、そんなに威厳ない……?」


「いまさら、気づいたのか?」

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