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「皆さん、本当に助かりましたよ! お礼に少しばかり報酬を――」
「遠慮なく頂戴するわね!」
レイが、目にも止まらぬ速さでおっちゃんの硬貨の山へと手を伸ばす
「い、いえ! けっこうですよ? と、当然のことをしたまでです! あは、あははー……」
マッチポンプだったなんて……言えない。
「なんと素晴らしい方々だ! ならば、ぜひ私の知人が経営する旅館に泊まっていただきたい! お礼に――通常料金で最高級のおもてなしを受けられるように言っておきますので!」
「い、いえ! 本当に大丈夫ですよ!」
「いえいえ! ぜひ泊まっていってください!」
「本当に大丈夫ですから! 気持ちだけ受け取らせていただきますー!」
俺とおっちゃんがしばし押し問答をしていると――
「タイガくん。これ以上はおじさんにも悪いし、ここは泊まらせてもらおうよ!」
「ああ、私も同感だ。」
「ええ、私もそれがいいと思いますよ。ご厚意に甘えるのも冒険者の基礎ですよ!」
マッチポンプなのがネックだけども……
「わかりました! 泊まらせてもらいますね!」
「おお! ありがとうございます!」
……こうして俺たちは、“通常料金で最高級のおもてなし”を受けることになった。




