19-3
「な、なんなんだああ! この――クソゲーは!」
「いやー、タイガ弱いですね!」
「ルミネル、本当のこと言うのは、やめてあげなさいよ!」
今日の野営での夕飯を作る担当は俺だったはずだ。よし、この二人は飯抜きにしてやろう!
「それにしても、なんなんだよ。このゲーム」
「トランプだぞ?」
「それは知ってるけどさ……」
明らかに――俺の知ってるトランプではない。
ババ抜きなはずなのに……なぜか、カードごとに役職が割り振られているし……ジョーカーを出すと勝てるし……おかしすぎるだろ。
「お客さん、ちょっと。」
運転手のおっちゃんが手招きした。
「どうしたんですか?」
「ほら、あれを見てくださいな。そこそこ珍しいのが見えますよ!」
おっちゃんの指さす先には、黒い鳥が飛んでいた。
「あれは?」
「あれは――"ワリガラス"と言われるモンスターだな。」
カグラが答えた。
「ガラス……? カラスじゃなくて?」
「そのカラスとだかは、よくわからないが……あの鳥は、ガラスに集まってくるらしいぞ。」
へえ……だから、ガラスなのかもな――ん?
「……あいつらこっちに迫ってきてないか?」
「いやあ、お客さん。縁起でもないこと言わないでくださいよ。それに、ここを通る馬車は、ガラスの物は乗せませんから。」
「そうですか! なら、安心ですね!」
そんな話をしている横で、ルミネルは“綺麗なものは綺麗にしておかないと気持ちよくなれない”とか訳の分からないことを言いながら、杖を磨いていた。
そして、もう一度外を見ると――ん?
「やっぱり、こっちに来てませんか?」
「いやあ……そんなわけないでしょー! わっはっはっ! にいちゃん、心配しすぎなんだよ!」
このメンツですよ? 心配しない方が無理です。
「なあ……誰か――ガラスの物持ってるやついるよな?」
「僕はそんな感じのものは特に何も持ってきてないな……」
「なるほど……ルクスは違うと。カグラも違いそうだし――ルミネルの杖についてる結晶みたいなのは?」
「これは魔鉱石ですよ! ガラスではありません!」
「ルミネルも違うか……モルティナは?」
モルティナは自身の持ち物を漁り始めた。
「ガラスっぽいものは特には……」
残るは――レイだ。
「レイは何か持ってたりし――ましたか。」
レイは大事そうに水晶玉を磨いていた。
「それって――ガラスだよ、な?」
「何言ってんのよ! これは、行商人から買った神器よ!」
「行商人が神器をぽんぽん売っててたまるか!」
「お、お客さん! こっちに飛んできてまっせ!」
でしょうね!
「わ、私の水晶玉はガラスじゃないわよ!?」
「お、お前かああああああ!」
こんな時はどうする!? そうだ――
「ルミネル!」
「ふっふっふっ! 言われなくても分かっています! 全てを蹂躙すればいいのですね!」
「全ては蹂躙すんな!」
「ならば、ここは私の魔法であの鳥を焼き鳥にしてしんぜよう!」
「よくわからないけど、頼んだ! あいつらを一箇所にまとめないとな……カグラ、頼んだ。」
「なるほどな、そういうことか。」
カグラはレイへと近づく。
「ん? どうしたの?」
「その水晶玉借りるぞ。」
「ふえ?」
「借りるぞ。」
「ちょ、ちょっと待って! それは神器よ!?」
「じゃあ、それにはどんな能力があるのだ……?」
「……」
この女神やっぱりポンコツだ……
「レイ、水晶玉とかなら、また買ってやるから! 今はアイツらを!」
「もー、仕方ないわねー……やっぱりみんな――私の手助けがないと何もできないみたいね!」
「「「「……」」」」
「みんなして黙ってどうしたの?」
「よーしっ! お前らー!」
全員の視線が俺に集まる――
「――やるぞ!」




